The Birthday @ 渋谷クラブクアトロ

The Birthday @ 渋谷クラブクアトロ
The Birthday @ 渋谷クラブクアトロ
最高のロックンロールだった。音楽の意味が根底から問い直されている今の日本の状況すら瞬時にリセットする勢いで、あふれ返らんばかりに渋谷クラブクアトロに詰めかけたオーディエンスを丸ごとロックンロールの彼方へぶっ飛ばして生命力を吹き込んでいく堂々のアクト。“ROKA”でライブがスタートした瞬間からWアンコールの“ローリン”の最後の残響が消えるまでの間、身体と心に焼けつくような熾烈なその歌と音を、フロアの誰もが貪るように求め、踊り、跳ね、叫ぶ……The Birthdayの存在証明であり野性の証明でもあるロックンロールの熱量が、クラブクアトロのハコのサイズを遥かに凌駕する勢いで巨大に渦巻いていた。

昨年春に心斎橋/名古屋/広島/渋谷の各地のクラブクアトロをサーキットした『Quattro×Quattro Tour '11』の大好評を受け、今年再び『Quattro×Quattro Tour '12』のタイトルのもとに、4月14日:広島を皮切りに名古屋/渋谷/梅田のクアトロを回ってきたThe Birthday。その3本目となるこの日、18日・渋谷クラブクアトロ公演。「残すところ、このツアーもあと2本となりまして。クアトロがもうちょっと多ければ……」とキュウちゃんことクハラカズユキが真面目な顔で笑いをとっていた以外はほぼMCらしいMCもないまま楽曲を畳み掛けてかっ飛ばしていくのはいつも通りのThe Birthdayだが、この日はその楽曲とサウンドの印象が明らかに違った。ちょうど1週間前にリリースされたばかりのニュー・シングル『ROKA』や6月13日発売のシングル『さよなら最終兵器』の新曲群を盛り込んでいた以外は、“ホロスコープ”“Buddy”“SとR”“SATURDAY NIGHT KILLER KISS”など昨年のアルバム『I'M JUST A DOG』を主軸に据えた内容だったにもかかわらず、だ。「ギタリスト=フジイケンジの加入によって格段に表現のキャパシティと強靭さを増した『I'M JUST A DOG』を完全に次の表現へのスタートラインにしている」どころではなく、チバ/フジイ/ヒライ/クハラの「今」の疾走感でもってさらにロックンロールの遥か先めがけて突き進んでいる……とでも表現すれば、この日の4人が見せたスリルとダイナミズムに少しは近いかもしれない。

The Birthday @ 渋谷クラブクアトロ
The Birthday @ 渋谷クラブクアトロ
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The Birthday @ 渋谷クラブクアトロ
何よりフジイの、昨年と比べて格段にアグレッシブさを増した野性的なプレイ・スタイルに驚いた。図太く鳴り響くリフの1つ1つも、オーディエンスを挑発せんばかりに煽りながら超絶ギター・ソロ・フレーズをぶん回すその佇まいも、すべてが新次元。新たなThe Birthdayギタリストとしてシュアに「ロックンロールを弾く」のではなく、明らかにフジイ自身がロックンロールそのものだった。そして、その野性がキュウちゃんとヒライハルキのリズムに作用してその獰猛で自由なヴァイブを最大限にブーストして、ヴォーカリストとして/フロントマンとしてのチバを無限に開放させていく。特に、ギタリストのフレーズや演奏と作用し合うという面において誰よりもヴィヴィッドなセンサーの持ち主でもあるチバにとって、この変化は実に大きい。リリース間もない“ROKA”がすでに最強アンセムとしての爆発力を獲得していたのも、“ホロスコープ”の鋭利なリフが同時に衝撃波のようなインパクトをもって響いていたのも、多幸感のカタマリのような“Buddy”で巻き起こした「パーティーがまた始まる!」のクアトロ一同大絶唱も、すべてはそんなThe Birthdayの極限進化ぶりをまざまざと見せつけるものだ。それこそ“マディ・キャット・ブルース”のようなミドル・テンポのセンチメンタルな楽曲や、“ビート”のハード・ブルース的サウンドの1つ1つに至るまでが、鮮烈なクライマックスの場面となって僕らの胸を揺り動かしてくる。

そして。フジイ加入後の重要な見せ場となっている“Red Eye”。ギターを置き、ジャジーなビートの中でワイルドにハンドマイクで歌いブルース・ハープ・ソロを奏でるチバと、音階の垣根をなぎ倒すようなミステリアスなフレーズを駆使したフジイのギター・ソロとのバトル! ヘヴィでシリアスなアンサンブルの奥底から赤黒いロックンロールを引きずり出して聴き手を圧倒し突き動かすかつてのThe Birthdayサウンドの印象とはまるで異なり、4人のバンド・サウンドが持つ肉体性と反射神経と運動能力によってオーディエンスを巻き込み、その渦のど真ん中から轟々とロックンロールを噴き上げるような感覚。つまり、今の4人の音には明らかに、鳴った瞬間に誰もが自分の魂と感情を重ね合わせることのできる包容力と強度が備わっている、ということだ。“I'm just a dog”“春雷”から“なぜか今日は”で終盤へ向けて一気にギアを上げながら、「やー、楽しいもんね!」と叫び上げるチバ。最高だ。

The Birthday @ 渋谷クラブクアトロ
The Birthday @ 渋谷クラブクアトロ
パワフルなコード・ストローク轟く爆裂8ビートの“泥棒サンタ天国”(『さよなら最終兵器』カップリング)。赤く燃え盛る夕景をロックンロールで塗り潰すような“YUYAKE”(『ROKA』カップリング)のビートの目も眩むような加速力! 《電話探した あの娘に聞かなくちゃ 俺さ 今どこ?》のイントロを高らかに歌い上げるオーディエンスに「俺たちは今、渋谷クアトロだあああっ!」の絶叫で応えて、“涙がこぼれそう”のメロディをひときわ激しく歌い放つチバ。どこまでも無骨でタフなロックンロールの手応えと生と喜びに満ちたアクトは、真っ白にスパークするような“READY STEADY GO”の祝祭感を残して本編終了。鳴り止まないアンコールの声と手拍子。ほどなくステージに再度現れた4人が演奏したのは“さよなら最終兵器”。ドライブ感満載のビート&ドラマチックなくらいに悲しく躍動するメロディに乗せて、《生身だけで生きていれば それが全て 代わりは無い》というフレーズと《さよなら最終兵器》のリフレインが踊る、全方位的に最強の名曲だ。“BABY YOU CAN”でフロアをでっかいシンガロングに導いた後、チバの「ありがとう!」の声を残して4人は退場。さらにアンコールを求める拍手が巻き起こる!

そして……まずキュウちゃん1人がオン・ステージしてビートを刻み始め、そこにフジイ、ヒライ、チバが加わる。この日の正真正銘最後の曲は“ローリン”! Tシャツ姿&ハンドマイクのチバが「カモン、トーキョー・ボーイ!」とあの迫力満点の声でフロアを煽り倒し、コール&レスポンスをキメては「OK! So beautiful!」と満足げに叫ぶ場面を目の当たりにして、ずっと沸点越えだったオーディエンスの熱気はあっさりと最高潮に達して、クアトロをあり得ないくらいの勢いで揺らしていく。ロックンロールはどこまでもパワフルになれる……ということを、この日のThe Birthdayの音が何より雄弁に物語っていた。むせ返るほどの会場の熱気を裂いて響いた「サンキュー! またね!」というチバのコールの余韻が、いつまでも胸に残った。僕らはThe Birthdayと同じ時代を生きている――ということを心から誇りに思えた2時間だった。(高橋智樹)


[SET LIST]

01.ROKA
02.ホロスコープ
03.Buddy
04.SとR
05.マディ・キャット・ブルース
06.SATURDAY NIGHT KILLER KISS
07.PARTY PEOPLE
08.ビート
09.LOVERS
10.あの娘のスーツケース
11.Red Eye
12.I’m just a dog
13.春雷
14.なぜか今日は
15.OUTLAW II
16.泥棒サンタ天国
17.YUYAKE
18.涙がこぼれそう
19.READY STEADY GO

Encore 1
20.さよなら最終兵器
21.BABY YOU CAN

Encore 2
22.ローリン
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