磯部正文BAND@新代田FEVER

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磯部正文BAND@新代田FEVER
一夜明けて振り返ってみても、「あ~、いい時間だったなぁ」としみじみ感慨にひたらずにはいられない。磯部正文BANDの『Deliver tour11-12』ファイナル@新代田FEVERは、イッソン自身「いいですね! さすが最終日って感じ」と早々と相好を崩すほど、幸福かつエキサイティングなひと時をフルハウスの観衆と目いっぱいに共有するものだった。

今年2月からスタートしたこのツアーは、体調不良のドラマー・恒岡 章に代わって、the band apartの“コグ兄”こと木暮栄一がサポート。そのコグ兄が威勢よくドラムを叩き鳴らして、「飛ぶユートピア」からライブは幕を開けた。“シモリョー”こと下村亮介(the chef cooks me)が先頭切ってフロアに手拍子を広げ、ステージ中央のバンマス・イッソンは、あいかわらずすこぶる明瞭で、聴き手のハートをダイレクトに震わせるようなゴシック体の歌声を響かせる。続けて、“たっくん”こと戸川琢磨(COMEBACK
MY DAUGHTERS、The Yasuno N°5 Group)のベースから「Sound in the glow」になだれ込めば熱烈なオイ・コールが勃発! 天を衝くような田渕ひさ子(bloodthirsty butchers、toddle)のギター・ソロも高らかに「Paper airplane」へと繋いで、たくましい推進力をたたえた8ビートがFEVERを丸ごと熱狂の高みへと導いていくのだった。前日イッソンは仙台でHUSKING BEEのライブがあって(そう、待望の『BAD FOOD STUFF』!)、夜走りで朝4時に帰京というハードなスケジュールにもかかわらず、疲労感はみじんも感じさせず力強いパフォーマンスを繰り出していく。場内の一体感は早くも最高潮だ。

磯部正文BAND@新代田FEVER
そんな具合だから、最初のブロックを終えた時点でイッソン、「なんか、いいですねぇ。もう終わります(笑)」と満足顔で終了宣言! もちろんライブは続行されたが、そんくらい序盤からハートフルなムードに包まれた新代田FEVERである。お得意のLOW IQイッチャンのモノマネも飛び出して(激似! なんか年々クオリティ上がってる気が・笑)、「find」「BY CHANCE」「Polyodomino」とさらに畳み掛ける磯部BAND。この夜はとにかくステージ上の雰囲気が和気藹々としていて温かく、メンバーの発する「楽しい!」がそのまま客席に伝播していくよう。イッソンを筆頭に何しろ“バンドを楽しむ”ということに長けた人たちなので、余裕すら感じさせるパフォーマンスが見ていてとても頼もしく、また心地よくもあった。

「今日の雨で桜は散ってしまいますけど、またいろんな花が咲くと思うので――」と、中盤の「花の咲く日々に」では再びオイ・コールが湧き上がり、続けて「The steady-state theory」「新利の風」とキッズ歓喜のハスキン・ナンバー2連発! 後者の間奏ではエキサイトしたたっくんがステージ前でベースをブイブイいわし、さらにステージ袖からおもむろに“どんどん”こと平林一哉が登場!(この日いちばんと言える熱狂値を記録するも、「もうちょっと何かやってほしかったよね。モノマネのひとつでもね(笑)」と手厳しいイッソンでした・笑)。MCではメンバーやお客さんにしみじみ感謝を述べる場面もあって、『Deliver』の制作とこのツアーがいかにイッソンにとって険しくも実り多いものだったかが伺いしれた。そして、「ツネさん元気ですよ、すごく。電話があって、(か弱~い声で)『ものすごく元気です…』って(笑)」と冗談混じりに盟友の快復を伝え、「いろいろありますけど、思いやっていけたらいいですね。そんな今日の歌を――」と「Today’s song」、そして「THE SUN AND THE MOON」「欠けボタンの浜」と再び魂を込めてプレイ。首筋にぶっとい血管を浮かび上がらせて歌うイッソンからは、いつもにも増して熱い何かを感じたのは筆者だけではないはず。

磯部正文BAND@新代田FEVER
磯部正文BAND@新代田FEVER
アンコールでは、ひとり再登場したイッソンが「じゃあ、メンバーに登場して……」と言いかけたところで場内に響き渡るバースデー・ソング! ケーキを持ったシモリョーを先頭にメンバーがオンステージし、翌日(4月15日)に四十路を迎えるイッソンをサプライズでお祝い。「もう初老なんで(笑)。しょろうしくお願いします!」と堂に入ったオヤジギャグも交えながら、「あぁ、びっくりした。泣きそうになっちゃった(笑)」と喜びを抑えきれないイッソン。そして、「ひさ子ちゃんも、みんなも一緒にデリバー・ソングを歌おう!」と呼びかけて「琴鳥のeye」「摩訶不思議テーゼ」と場内の隅々に雄大なサウンド・スケープを広げて、「これからも各地で歌い続けていくと思いますので、よろしくお願いします」と噛みしめるように語ってアンコールはフィニッシュ。さらにトリプル・アンコールでは、「楽しいばっかりが人生じゃないと思いますけど、できるだけ感謝しあえるようにね、よろしくお願いします」と気持ちを届けて、伝家の宝刀=「WALK」投下! 瞬く間に沸点を超えたフロアにはクラウド・サーフも巻き起こり、文字通りの大フィーバーのなか『Deliver tour 11-12』は幕を閉じたのだった。このファイナルで受け取ったものを携えて、僕も明日からをウォークしていけたらと思います。“思いやっていけ”るような、そして“できるだけ感謝しあえる”ような毎日を。(奥村明裕)


セットリスト

1 飛ぶユートピア
2 Sound in the glow
3 Paper airplane
4 Do we know?
5 find

6 BY CHANCE
7 polyodomino
8 花の咲く日々に
9 The steady-state theory
10 新利の風
11 Today's song

12 THE SUN AND THE MOON
13 欠けボタンの浜
14 近未来

15 符思議なチャイム

16 A bird's eye-view

enc
17 後に跡
18 琴鳥のeye
19 摩訶不思議テーゼ

enc2
20 WALK
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