マキシマム ザ ホルモン @ SHIBUYA-AX

マキシマム ザ ホルモン @ SHIBUYA-AX
マキシマム ザ ホルモン @ SHIBUYA-AX
2011年3月23日にリリースされたシングル『グレイテスト・ザ・ヒッツ2011~2011』に封入されていた「謎の応募券」で抽選に参加でき(あとその前のシングル、2008年の『爪爪爪』封入の券でもOK)、当選すると無料で招待される特別企画ライヴがこれ、『MASTER?OF?TERRITORY?~俺たちにマスはある!~』。つまり、1年ごしの企画だったわけです。昨日、自分のブログにも書きましたが、以下のような設定やルールが設けられていました。

・客席フロアがすべてマス目に区切ってあって、番号が振ってあって、「全指定マス席(テリトリー)」になっている。上の写真のとおりです。ね。異様でしょ。
参加者は、トイレ以外はその自分のマスから出てはいけません、その中で楽しんでください、というルール。普段のワンマンではギュウギュウで思う存分身体が動かせない、フェスの時の後ろの方みたいに広いスペースで思いっきり楽しみたい、という気持ちに応えるべく、ひとりあたり1㎡のマスが割り当てられました。
なお、当選した人は当日18:30までに受付をすませる、それまでに来ない方は権利放棄と見なされ、それによって空いたテリトリーは補欠(後述します)に振り分けられる、というシステム。あと、当選者全員に本人の写真と番号入りのパスを発行、それを首から下げて参加、というシステムにもなっていました。ダフ屋対策でもあると思いますが、この写真と番号を活用する企画でもありました(これも後述)。

・モッシュ・ダイブOKの「カオスエリア」あり。フロア中央の、フェンスで区切られた一画がそうでした。つまり、そこ以外はモッシュ・ダイブ禁止なわけです。というか、やりようがないんですが。人が密集してないので、どこも。

・親子で参加できる「おかあさんといっしょ」エリアあり。2Fのイス席がそれでした。普段一緒にホルモンのライヴに参加できない、小さい子供のいるお母さん用のエリア、ではあるんだけど、「母子であればよい」ので、たとえば中年の息子と年老いた母親、という組み合わせでもOK、というルールでした。私、2Fに上がらなかったので、そういう人、いたかどうかわかりませんが。

・ガヤ・ピープル限定エリアあり。カオスエリアの左右がそれ。ひな壇芸人のようにステージに向かって声援やツッコミやヤジをワーワー投げかけたい人のためのエリアです。ってことは、ワーワー「言わなきゃいけない」ってことなわけで、ライヴが始まったあと、MCの時についワーワー言うのを忘れて、ステージ上のメンバーから責められたりしてました、みなさん。ちなみに、ここのエリアは1マス3名が基本。

・1マス内に2名で参加できる「ペアエリア」あり。カップル同士とか、友達同士とか。フロア後方でした。他のマスは白で描いてあったけど、そこだけピンクでした。

・見えそで見えない補欠エリアあり。抽選にぎりぎり漏れた補欠のみなさん、PA卓の裏側のところで参加できます。と、公式サイトには書いてありましたが、行ってみたら、PA卓の裏に加え、その左右のスペースもそうなってました。PA卓の裏の部分は、すずらんテープ(ビニール)が貼られ、左右の部分は障子が立てられている。要は、ステージが見えないよう、目隠しがされている、ということ。

・以上のテリトリーの中のごく一部に、ホルモンからの「辱め強制指令」が仕掛けられている。かぶりもの(白鳥・ダイコン・バナナの着ぐるみ、水素の詰まった電飾付き銀色バルーン8コが付いたヘッドギア)を身につけるとか、アクティブスイング(エクササイズマシン。こういうやつです→http://item.rakuten.co.jp/mckey/4703ktte-4/)が席にあって延々それをやりながらライヴ観るとか、そういうことです。


で、仕掛け、それだけではありませんでした。以下、時間軸に沿っていきます。

前説
花団のカズ(vo)と潤八(b)、巨乳まんだら帝国の教祖(vo)の3人でMC。カズは顔白塗りで白タイツ、潤八は顔白塗りで黒タイツ(オセロを表現したそうです)、教祖は普段の、あの赤いハイレグタイツみたいなのにマント、といういでたち。教祖(とテレビカメラ。その画面がホール両端のスクリーンに映ります)が客席に下り、それぞれのエリアを回りながらその説明をする。
で、カズ、18:30までに受付に来ずに権利放棄となった空きマスがいくつもあるので、抽選で補欠エリアからそっちに移ってもらうことを発表。クジ引きの要領で番号を引き、当たったみなさんが、補欠エリアに移った教祖の仕切りで、それぞれのエリアの空きマスに移動。
そして、補欠エリアに残されたみなさんに、視界を妨げるすずらんテープは、ふーふー息をかけると上に上がるのでその隙間から見てください、ということと、同じく視界を妨げる障子は、指をなめて1箇所だけ穴を空けていいですよ、ということを告げる。あっという間にボロボロに破れる障子。あっはっは。
そして次に、トラップ=「辱め強制指令」の説明。既にダイコンやバナナや白鳥や電飾バルーンヘッドギアを身につけて待機している参加者たちを、順番に紹介しつつ、いじっていく。あと、アクティブスイングのふたりには、「それやりながらライヴ観るように」と指示。さらにペアエリアには「カップルふたりで同じストッキングをかぶる」という地味なトラップもあり、それも紹介。さらにさらに、公式サイトで告知されていたトラップ=「ドクター中松のピョンピョンシューズを履いてライヴを観る」ことを強いられる人がふたりいることを発表。「みなさん、足元の番号シールをよーく見てください! その人の番号にはドクター中松のシールが貼ってあります!」(カズ)。ただ、そのシール、もんのすごく小さすぎてみんな見つけられず、ひとりは教祖が見つけてあげてました。
と、ここまでで前説、終わり。MCの3人は補欠エリアへ移動、そこでライヴを観る。というルールが、3人にも強いられていたわけです。

なげえ。ながすぎる。前説だけでこんなに書いてしまって大丈夫なのか、と不安になってきましたが、すみません、まだまだ続きます。では、ライヴ本編。

いつものSEが流れるが、バンドは出て来ず、ステージ前の振り落とし幕に、例の「小さな君の手」のPVが映し出され、フルコーラス流れる。で、終わったところで1曲目“maximum the hormone”のイントロが始まり、幕が落ちてライヴがスタート。つまり、1年前にサイトで公開したあの2曲の流れを再現した始まり方だったわけです。

1. maximum the hormone
2. 「F」

ここで1回目のMC。ナヲちゃん、「豪華すぎだろ! 金かかりすぎだろ」「これ無料イベントだよね? この日をもって、バップ(レコード会社)、傾いております!」「この(客席の)光景に、演奏中、ガチで吹きました」とコメント。

3. ぶっ生き返す!!
4. ルイジアナ・ボブ
5. 絶望ビリー

2回目のMC。ここでトラップ追加(以下、こういうの全部、スクリーンで説明しつつそれをダイスケはんが読む、という形で進行)。スクリーン上で、参加者の写真&番号がパチスロのように回り、止まった人ふたりに「倍の長さの白鳥のかぶりもの」が強制される。それかぶってヘドバンしまくると、前の人に白鳥の先端が直撃する勢いでした。

6. シミ
7. 鬱くしき人々のうた
8. What’s up,people?!

3回目のMC。トラップ追加その2。この企画、ナヲちゃんによると、日本武道館が何日も埋まるくらいの応募数だったそうですが、その中でも最も応募数が多かったのはどこか(選んで応募できる仕組みだったのです)、というと、最前列の中央ちょっと上手寄りの「7」のマスだった、ということを発表。で、その7のマスが当たった男に、ホルモンの歌を歌わせるという強制指令を下す。彼のマスにお立ち台とスタンドマイクを用意し、次の曲“恋のスウィート糞メリケン”のナヲちゃんのパート(サビですね)が、彼に振らました。お客さんをステージに上げて、メンバーと一緒に歌いましょう、みたいなのは他のバンドでも観たことがあるが、ガチでひとりで歌わせるところがホルモンならではです。その男、超てんぱりながらも、必死にがんばって歌ってました。偉い。

9. 恋のスウィート糞メリケン
10.糞ブレイキン脳ブレイキン・リリィー
11.ポリスマンベンツ

4回目のMC。トラップ追加その3は、なんと「退場!」。画面のルーレットで当たった2名が、会場から強制的に退場させられる。ただ、さすがにこれはヤラセでした。当たったふたりはMUSICA/FACTの鹿野淳とモニターPAのヒダさん、つまり関係者とスタッフ。ただ、おふたりにとってはガチだったようで、大変にあわてながら、場外に連行されて行く。と、ここでダイスケはん、「ライヴでの痴漢は絶対にダメだけど、今日だけ無礼講にする」ということを宣言。「ただし! 触っていいのはこいつらだけです!」と、ドアにスポットが当たると、そこには巨乳付き裸スーツを着用させられた、さっきの退場者2名が。そのままカオスエリアに叩きこまれ、曲が始まり、もみくちゃになるおふたりでした。

12.kill all the 394
13.生理痛は神無月を凍らす気温。
14.ロック番狂わせ
15.WxHxUx~ワシかてホンマは売れたいんじゃい~

マキシマム ザ ホルモン @ SHIBUYA-AX
5回目のMC。またトラップ発動。今度は、補欠エリアからひとり、抽選でVIP席にご招待、題して「成金マス」。ということで、吉井くんという男が選ばれ、金の座布団(ナヲちゃん曰く5万円かかったそうです)を与えられ、ダイスケはんが指定した位置=ステージ下手の端で、正座しながらライヴを観る(上の写真は、その正座が崩れてるとこですが)。次の曲が次の曲だったもんで、正座しながらめちゃめちゃヘドバンする吉井くん、「度を越した土下座連発」みたいな形になっていて、大変に笑えました。あと、「ステージで正座」という点において、昔、大川興業にいた、みんなが芸やってる間もずっと端っこで正座しているだけのメンバーを思い出しました、私。
で、「恋のおまじない」特別バージョン、「麺カタこってりー!」の代わりに「俺たちに・マスはある・マスラオコミッショナー!」をやってから、その最後の曲へ。

16.恋のメガラバ

これで本編終了。ただし吉井くんはそのまま正座。アンコールを求める声が自然と「吉井! 吉井!」というコールになり、彼にスポットが当たり、調子にのってお客さんをあおり始める吉井くん。と、「緊急ホルモン警報です」というアナウンスがあり、アクティブスイング・ピョンピョンシューズ・電飾バルーン付きヘッドギアが、ホール内から撤去される(ただし、白鳥やダイコンやバナナはそのまま)。
で、ホルモン、登場。ここから全席開放します、1Fの人も2Fの人も前に来ていいです、ただし逆にカオスエリアをセーフティエリアにするので、危ないのがイヤなお子さん連れとかはそこに入ってください、と告げる。補欠も解放。花団のふたりと教祖、なぜかお客さんの男たちに騎馬戦の要領で担がれてフロア前方まで移動。
で、アンコール、2曲。

EN1.my girl
EN2.握れっっ!!

そして、本当に全編終了。メンバーが去り、いつものように“ロッキンポ殺し”が流れ、みんなで踊り狂ってシメとなりました。


以上、ほんとに長くて申し訳ございませんでした。が、ごめんなさい、あとちょっとだけ。

というような、めちゃめちゃおもしろくて楽しいライヴだったし、「あははは!」とか「くだらねー!」とか言って喜ぶのがスジだろうとは思うけど、それだけではなかった。笑ったし楽しんだけど、それ以上にすごく感動した、僕は。なんでか、というのを書き始めると、ここまで書いたのの3倍くらいいってしまいそうなのでがまんしますが、簡単に言うと、ふたつ。
ひとつめ。こういう企画だらけのライヴ、ロックが好きで、お笑い番組やマンガやゲームやAMラジオの深夜放送が好きな中学男であれば、亮君以外にも考えつく奴、いるかもしれないと思うが、それをこうして本当に実現できるのは亮君だけだ、ということ。つまり、それを実現できるだけの人気とかセールスとか熱狂的支持とかがないと無理だし、逆に言うとそうなってもやっぱり「こういうことをやりたい己」のままである、それを貫いている、ということに、まず、すげえ感動した、僕は。
で、もうひとつは、その、亮君が、ホルモンがどうしてもやりたいこういうライヴは、「ライヴって普通こういうもの」というセオリーや既成概念を壊す新しい提案やトライアルになっている、ということ。ホルモンのこういう企画ライヴっていつもそうだけど、今回ほどそれがラジカルに表れたことはなかったのではないか。ここまで「お客に何かを強いる」「ルールだらけで規制だらけ」なライヴ、いくら無料とはいえ、普通ありえない。にもかかわらず、この日のAXの空気は、これまで僕が観たどのホルモンのライヴよりもフリーキーだったし、自由に満ちていた。ステージの上の人がステージの下の人に、命令したり強制したりしながら行っているライヴなのに、本当に、ステージの上も下もないライヴだった。よくミュージシャン、言うじゃないですか。「ライヴはみんなで作るものでステージの上も下も関係ない、区別ない」とか。あれ、「そうか、なるほど」と思う時も、「そうかなあ?」と思う時もあるけど、このホルモンのライヴほど、本当に「上も下もない」と感じたこと、ありませんでした。という意味で、すっごい感動したのでした。
これについては、まだ書き足りないので、またいつか、どっかでなんか書きたいと思います。(兵庫慎司)
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