氣志團 @ NHKホール

氣志團 @ NHKホール
氣志團 @ NHKホール
結成15周年の2012年を“完璧年間行事”(読みは「パーフェクト・イヤーズ」)と位置づけられた怒濤のスケジュールで走り始めた氣志團。1月末に千葉で行われた、シングル『MY WAY』購入者限定イヴェントに続き、東京・NHKホールでのスペシャル・ワンマン『A yankee in the N.H.K 〜HERE’S THE SiX PiSTOLS』である。今後は更に3/2のZEPP TOKYOと4/26の横浜BLITZでワンマンが行われ、5月から7月いっぱいはライヴハウス・ツアーを展開、そして既にRO69のニュースでも報じられているとおり(こちら→http://ro69.jp/news/detail/64224)、9月には『氣志團万博2012 房総ロックンロール・オリンピック』が開催されることが、今回のNHKホールの公演中にアナウンスされた。

全速力で突っ走るチーム・氣志團なのだが、観ている側にとっては慌てて先へ先へと意識が急いでしまうと、大切なことを見落としてしまうかも知れない。そんなことを感じるNHKホール公演だった。今回のレポートでは、演奏曲目や曲順の詳細については触れることができないけれども、3/31(土)にフジテレビNEXTで公演の模様が放送されるそうだ。それでもさすがにスペシャル・ワンマン、NHKホールならではのアイデアが盛り込まれた演出だけで、書ききれるか心配になってしまうぐらいの濃厚さだった。

まずは開演前の客入れSE。NHK『みんなのうた』クラシックの数々が並べられ、一曲毎に客席からどよめきや笑いの声が上がる。“北風小僧の寒太郎”、“南の島のハメハメハ大王”、とりわけ“コンピューターおばあちゃん”の古びないサウンドには、今更ながらびっくりした。プロデュースは坂本龍一、ドラムス演奏は高橋幸宏。

そしていよいよ客電が落ちると、氣志團が登場。演奏曲目はほとんど明かせないのだけれど、ザックリ言えば代表曲・GIG定番曲の息もつかせぬような連打だった。翔やんは最初のMCで「結成15周年のアニヴァーサリー・イヤーです。みんなに、おめでとうって言って貰えるのは嬉しいんだけど、むしろ俺たちからありがとうって言いたいんで、2012年もブリバリにぶっ飛ばしてくんでヨロシク! みんなの前でカッコつけたくて、オシャレしてきたぜ。高く飛ぼうとしてビリビリって音がしたけど、いま俺の体で何が起きてるのか知りたくありません!」と語っていた。せっかく、黒地にメンバーのイメージ・カラーが半分あしらわれた、マント状のおもしろい衣装なのに。

男女それぞれ10名ずつほどのダンサーがステージ狭しと踊り回り、はたまた光と微熱DANJIがやいやいと絡むお馴染みの演出もある。楽曲のイントロでバルコニーにじゃじゃ丸、ぴっころ、ぽろり(本物の着ぐるみではなく、わざとらしいぐらいチープなお面と衣装でごまかしているのも氣志團流)が立て続けにバルコニーに姿を見せ、最後にランマが登場してギターを弾き始める、みたいなスピード感のある遊び心も痛快だ。曲また曲、と詰め込みながら、要所要所に笑いと驚きの仕掛けがある。過密なスケジュールの中にあっても、一度きりのスペシャル・ワンマンを決してハズさないだけの豊富なアイデアに満ちているのである。観ている側にとっては、とても先のことなど考えている暇はない。氣志團の面々にしたって同じことだろう。

そんな調子で前半の楽曲を畳み掛けた後、微熱DANJIが任される寸劇というかコント・タイムへ。そのあと、特攻服姿の翔やんによる「また紅白が遠のきました……」から始まったMCタイム。バカなことやって、みんなに笑ってもらいたいんだ。15年、同じことしかやってません。正直に言えばちょっとテングになったときとかもあるけど、すぐ気付いた。これ言うとほんとに嫌われちゃうもん。みんなと魚民とか行って話したい、みたいな、例によって例の如くのパターンだけど、おもしろい。今回は「あ! これ、グダグダ長くなるパターンだ!」と自分で言っていたが、結局長かった。ここでニュー・アルバム『日本人』のリリースと、『氣志團万博2012 房総ロックンロール・オリンピック』のアナウンスが入って、キッシーズは狂喜乱舞。『氣志團万博』については、「かっこいいロック・バンドを、みんな千葉に連れてくからさ」と語っていた。今回の公演で最前5列、お土産つきの「先輩席」には「よろしくお願いします。お世話になります」と頭を下げ、他の「後輩席」に対しては、「友達、10人でも20人でも連れて来いよ!」ときっちり差をつけて対応する。

そして再び楽曲へ。「今ピック落としたけど、足もと全然見えてないから」と言いながらアコギの弾き語りに向かった翔やんに、5人が加わる。本編後半も、矢継ぎ早のタイトな演奏+ホールの音響の良さで、鉄壁の盛り上がりだった。寸劇やMCが無くなってしまったら寂しいけれど、今や「演奏だけでは物足りないからいろいろやる」感じではない。ニセモノだから、と相変わらず翔やんは言う。でもそうだろうか。今の氣志團を観た人が、本当にそう思っているだろうか。思い返してみれば、かつて自分が夢想していた「真のヒーロー・バンドたる氣志團」に、限りなく近い光景が生み出されている。演奏して欲しい楽曲も多いから、そちらに集中している時間帯には弛みがまったくない。“スタンディング・ニッポン”や、来るアルバム『日本人』に収録されるのだろう、象徴的な歌詞の新曲も披露されていた。

アンコールに応えて鳴り響くのは“BE MY BABY”だ。そうか、オープニングには使われていなかったっけ。で、翔やんと光の間に、リフトに乗って浮上して来るのは……布袋寅泰その人!! まじかー! 翔やんと光の動きに合わせて、右へ左へとステップを踏みながら男前なギターを掻き毟る姿が泣ける。ちなみに氣志團全員、あの布袋を象徴する幾何学模様がプリントされた長ラン姿である(でも、本人に「ちょっと違う……」とツッコまれていた)。そう言えば、吉川晃司とは昨年の対バン・シリーズで2回目の共演を果たしていたのだった。「本物に限りなく近づいたニセモノです!」と翔やん。だから、そういうことなのである。

2/1に50歳の誕生日を迎えた布袋に、幾何学模様ケーキ&バースデー・ソング大合唱でご機嫌を取る氣志團。この後も、「こういうとき、俺たちの、スミマセンもう少しお願いします、は相当ずうずうしいぜ!?」と夢の共演が続いた。《とにかくもう、本当に今日は、帰りたくなーい♪》と翔やんである。布袋は、メンバー一人一人とハグして大団円。布袋とトミーのハイ・タッチは、さすがにめちゃくちゃ高くて見栄えがした。本当のエンディングはまたもや『おかあさんといっしょ』のパロディだったのだけど、布袋登場のインパクトが強すぎて正直忘れていたよ、その流れ。

自他共に認めるニセモノとしてシーンに登場した氣志團は、それゆえの無数のパロディが話題を呼んだし、かつては重要だった。でも、15年のキャリアを重ねて、名曲がたくさん生まれて演奏もすばらしくなると、ニセモノ感がだんだんどうでもよくなってきた。光や微熱DANJIやダンサーの動きに気を取られていると翔やんの挙動を見落としてしまうのと同じように、パロディのすべてに食らいつく必要はないし、今の氣志團のパフォーマンスはもっと懐が深い。それこそあのロゴ・マークの由来は知らなくても楽しめるし、いいからとりあえず「すみませんでしたー!」って言っとけみたいな軽いノリで良かった。細かい部分ではなく、ひとつのGIGとしてとても素敵な時間だったのだ。2012年の氣志團は、誰にとっても凄いものになるはず。(小池宏和)
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