Theピーズ@渋谷クラブクアトロ

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Theピーズ@渋谷クラブクアトロ - pics by たたみpics by たたみ
その道程は山越え谷越え、立ち止まってはまたフラフラと歩き出し、ときにぶっ飛びながら辿り着いたTheピーズの結成25周年イヤー。『祝4半世紀♡春ラッシュ 2012!』と銘打たれた全国ツアーは、先に決まっていたツアー日程を挟み込むように1/28と3/24の新宿紅布での公演が追加され、今回レポートするのはツアー2本目となる渋谷クラブクアトロである。フロアは見事な盛況ぶり。例によってオフィシャル・ブログでは終演後にセット・リストが公開されており、今後のツアー日程でも演奏曲や曲順は入れ替えられるはずだが、極力ネタバレを避けたいという方は、以下の閲覧にご注意を。

オープニングSEに乗って3人が登場するとはる(大木温之)の掛け声が響き、音源リリースとしては最新のものになっているシングル曲“真空管”が披露される。さっそく身を乗り出してギターを弾くアビさん(安孫子義一)である。今回のステージではプレイにおいても、アビさんの熱くファンな心意気が目に見えて発揮される場面が多く、それがセット・リストと相まってライヴ全体のムードを形成していったように思えた。アビさんの抜けの良い、大振りなリフにじんわりと諦観のブルースを滲ませる“底なし”を経たところで、はるの挨拶だ。

「とりあえず25周年イヤーってことでね、いろいろ感慨深い。まだ半年あるんだけど、まあ今日はみなさん、それぞれ適当にやってください。なんとなーく楽しんだら、全体が盛り上がってるみたいになるから」。この辺りの脱力MCぶりはさすがはるというところだったのだが、O.P.KINGからのレパートリーにして痛烈なナンバー“ミサイル畑で雇われて”の後には早くも“シニタイヤツハシネ -born to die”の投下。掌や拳を掲げて沸き上がる場内である。「暑い暑い! 照明落としてください!」と騒いでいるが、暑いのは必ずしも照明のせいばかりではないだろう。

はるの喉も調子を上げ、シンちゃん(佐藤シンイチロウ)の叩き出す高速ビートで“無力”を転がし、はたまた芯の強いグルーヴでパブ・ロック風にアンサンブルを届ける“三度目のキネマ”を披露する。エモーショナルな歌をじっくりと練り上げる“使いのこし”も挟み込まれるが、今回のピーズはアップテンポなナンバーの熱量とタイトさがとりわけ印象的だ。息を切らしながら、今度はアビさんのMCタイムである。

「夢を見ました。はると一緒に電車に乗ってて、25周年だっつって話してるんだけど、(窓に映る)髪が年齢不相応にフサフサなんだ。ジャニーズみたいに。フサフサなんだけど、46歳とのミスマッチが、ね。だから俺は、毛髪の最後の一本が抜け落ちても、アンプの前に立ち続けるぜ」。はると2人して頭髪事情MCも多かった(なのに“ハゲ出し”はやらなかった)が、30代後半の筆者もいよいよ他人事ではなく身に染みる話だ。そしてこの後には、まだリリースも未定という新曲“幸せなボクら”がプレイされた。アビさんのギター・サウンドが大らかに広がる、真に25周年を引き受けた上でのピーズ、といった印象のロック・ナンバーになっていた。

ピーズの、生きていることだけを浮き彫りにしながら凄味を増してゆくロックの存在感は、いつまで経っても特別なものだ。ブルースは、軽やかに語られ(鳴らされ)るほど重く響き、うっすらと滲むほど濃く染み入ることがある。「暦の上では今日から春ですよ、みなさん!」とはるが告げ、ジャンプ一発からプレイに突入するアビさん。《春よ来い》のリフレインが高らかに歌われる“立春ポピー”だ。この曲をフィニッシュするとき、アビさんのモニターに掛けた足が、ズルッと滑って笑いが巻き起こってしまった。

はる:「一週ごとに(“ポピー”の)歌詞考えてんのに、今ので全部持ってかれた。俺、せっかくピックも投げたのに」

アビさん:「ピック投げたの!? 取りにいけよ!」

はる:「節分はどうでした皆さん。マメいじりとかしたんすか? 最近は恵方巻だってね」

アビさん:「(はるは)ダメだよ。海老とか入ってるから」

はる:「じゃあ、羨ましくねえや」

アビさん:「何が入ってるか分からないで食って、5分後に全部吐くからね。皆さんも、水産加工物、魚介類は与えないでくださいね」

そんな調子でウダウダとやりあいながらも、楽曲の緊迫感と熱は衰えることがない。孤独の詩情とエモーショナルな曲調が冴え渡る“月面の主”に続いては、爆走ロックンロール“いちゃつく2人”。乾いた悲しみがパラパラと溢れる“霧の中”でのアビさんのギター・プレイも最高だが、またもや“全速力で遠回し”でヒート・アップする。「この(4曲の)ブロック、キタねえ」と、はる自身も後悔混じりな飛ばし方だったが、その割には疲労よりも楽しさの方が勝っているような表情が伺える。

この後の本編最終ブロック→アンコールの流れは、筆者もこの時点ではまだセット・リストに目を通していなかったのでびっくりしてしまうぐらいの、一層エネルギッシュな燃焼ぶりを見せてくれた。ルーズなロックンロールが熱を帯びる“生きのばし”。そして“とどめをハデにくれ”にのたうち回ってからの、“焼めし”のダーティな爆発力。アンコールの“Yeah”では跳ね回りながらコーラスを加えていたオーディエンスに「いやー楽しかった! どうもありがとう」とはるはご満悦だったが、「内緒でもう一曲」と繰り広げられたダブルアンコールの“脳ミソ”では最後の最後にクラウド・サーフィンが続出した。まったく、右肩上がりなライヴ内容にも程がある。

さて、既に公式ホームページで告知されているとおり、Theピーズ、6/23に結成25周年の日比谷野音ワンマン決定である。「ほんとは30周年ぐらいまで頑張ろうって思ってたんだけど、お客さんも若くないんだから、って言われて。なんでメモリアルに梅雨どきかねえ」とはるは話していた。過去2回はいずれも雨……。いやでも、今回の様子からするとまったく年甲斐もない、すごいライヴになりそうだ。シンちゃんも正式加入から10周年(ということは、このラインナップでの復活からも10年)。ちなみにシンちゃん、『祝4半世紀♡春ラッシュ 2012!』ツアーの後、3月末よりthe pillowsのツアーに入り、そちらのファイナルから中1週間で野音です。なんというかその、超おつかれさまです。(小池宏和)

set list
01:真空管
02:底なし
03:ミサイル畑で雇われて
04:シニタイヤツハシネ -born to die
05:脱線
06:無力
07:三度目のキネマ
08:使いのこし
09:ラブホ
10:幸せなボクら
11今度はオレらの番さ
12::映画(ゴム焼き)
13:立春ポピー
14:月面の主
15:いちゃつく2人
16:霧の中
17:全速力で遠回し
18:道草くん
19:生きのばし
20:かまわない
21:とどめをハデにくれ
22:焼めし
23:どこへも帰らない
EN1-1:ドロ舟
EN1-2:Yeah
EN2:脳ミソ
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