ONE OK ROCK@横浜アリーナ

ONE OK ROCK@横浜アリーナ - pics by 橋本塁(SOUND SHOOTER)pics by 橋本塁(SOUND SHOOTER)
圧巻。と言っても「キャリア史上最大規模となる会場を完全制圧していた」という次元の話じゃない。「彼らのロックはこれだけ大きな会場で鳴ることを最初から運命づけられていたんだ」とすんなり納得してしまいたくなるような、圧倒的な説得力とスケールに満ちた2時間半。この日会場を訪れたオーディエンスどころかロックを愛する日本中の人々の未来を背負っていくという強い使命感すら感じさせるメンバー4人の堂々たる佇まいに、バンドの破格のポテンシャルを痛感させられた素晴らしいアクトだった。ONE OK ROCKの『“残響リファレンス”TOUR』ファイナルとなる横浜アリーナ2DAYSの2日目。バンドにとって大きな節目となるこの日のライブをひとつの通過点として、ONE OK ROCKはまだまだ大きくなっていく。

開演予定時刻を5分ほど回った17時05分、場内が暗転してメンバーが登場。オープニング・チューン“LOST AND FOUND”から、焼けつくほどの熱量を湛えた轟音が吹き荒れる。いきなり揺れに揺れる横浜アリーナ。2曲目“皆無”ではオイ・コールを誘発し、オーディエンスのヴォルテージを一気に頂点まで押し上げていく。「今日がツアー最終日です。絶対に悔いのないように、そして絶対に楽しんで頂けるように、精一杯やらせていただきます。どうか最後までよろしくお願いします! 全身全霊でぶつかってきてください!」というオープニングMCの後は、“未完成交響曲”“じぶんROCK”を連打。「メチャクチャ高いジャンプを見せてくれー!」「あなたたちの気合いを見せてください!」というTaka(Vo)の果敢なアジテーションにより、バンドとオーディエンスの共闘体制がみるみる強固になっていくさまは観ていて鳥肌が立つほどだった。

ONE OK ROCK@横浜アリーナ
ONE OK ROCK@横浜アリーナ
“世間知らずの宇宙飛行士”では、レーザー光線が駆け巡る場内でTomoya(Dr)→Ryota(B)→Toru(G)が情感豊かなサウンドを次々に奏でる華やかなソロリレーが炸裂。イントロからダイナミックなドラムサウンドが轟いた“Mr.現代Speaker”では、青い炎がふつふつと燃え滾っているようなヘヴィなサウンドを披露。「次の曲は、僕らが去年はじめて出したシングルです。ここで思い切り声を出してみてください!」とスタンド席→アリーナ席→会場全体の「ウォーオーオーオーオオー」のコール&レスポンスからスタートした“アンサイズニア”では、業火の中をまっしぐらに突き進む一枚岩のアンサンブルと、低音から高音へと軽やかに推移しながら衝動を全開放するTakaのヴォーカルが、すでに臨界点ギリギリまで達してしまった場内にさらなるガソリンを注いでいく。ステージを右へ左へと動き回るTaka以外、派手なアクションはほとんど見せないバンドだが、だからこそ放たれる音そのものの凄みがハンパない。一縷の隙も感じさせない鉄壁のサウンドは、もはや貫禄すら感じさせるほどのオーラをビシビシと放っていた。

ONE OK ROCK@横浜アリーナ
「今日はお祭りなんで普段はやらない曲もやっていきたいと思います」という紹介から、歌い出しで「ギャー!」という歓声が沸いた“カゲロウ”で幕を開けた中盤。続くバラード“Wherever you are”では、濃密なエモーションを宿したTakaのヴォーカルが高らかに伸びていく。そして水中をたゆたうような長い長い映像が流れた後、ステージ後方に現れたのはヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスによる弦楽器隊。美しいストリングスの音色にToruのアコギの旋律が重なって、“エトセトラ”へ突入する。そのまま“カラス”もオケ付きでプレイ。パワーコードで押しまくるラウドなナンバーだけでなく、こういったスロウチューンでも豊かなエモーションの輪郭をくっきりと浮かび上がらせるバンドの深みをしっかりと感じさせるパートである。そして圧巻だったのは、ストリングスをバックにTakaのピアノ弾き語りで魅せた“Pierce”。ストリングスを加えることで荘厳さを増したサウンドが天上へと昇り詰めると、固唾を呑んで見守っていたオーディエンスから温かな拍手が送られた。

ONE OK ROCK@横浜アリーナ
「次の曲は僕にとって本当に大切な歌です。僕はこのバンドを組んで生まれてはじめて心から大切と思える人間と出会えました。皆さんにもそういった友達がいると思います」という言葉から“C.h.a.o.s.m.y.t.h.”でさらなる大きなエモーションの花を咲かせた後は、キラー・チューン“Liar”で再びアッパーに爆発! 「Takaくんの横浜アリーナいじり倒しコーナー」として、Taka自らカメラで客席を撮影してどアップにしたお客さんをイジリまくるというお遊びを挟みつつ、クライマックスへ向けて怒涛の攻勢へ。「1、2、3、4!」のカウントから横浜アリーナ中のオーディエンスがハイ・ジャンプした“Let’s take it someday”、巨大な火柱が上がった“Rock, Scissors, Paper”、おびただしいレーザー光線が場内を占拠した“NO SCARED”、そしてステージ天井から火花が降り注いで壮絶な熱狂空間を生み出した“完全感覚Dreamer”――と、破壊力抜群のサウンドもTakaの張りのあるヴォーカルも特効も出し惜しみ一切なしの展開で未曾有のカタルシスへと上り詰めていく。オーディエンスも夢中に身体を揺らし、オイ・コールを放ってメンバーの気合いに応戦するという図だ。本編ラストは“Nobody's home”。演奏後、「心からお前らを愛しているぞー!」と告げてステージを去ったTakaをはじめとしたメンバー4人は、ものすごい圧勝感に満ちていた。

アンコールでは「今日は最後なんで、昨日もやってないメチャメチャ久しぶりな曲をやります」というMCから“努努 –ゆめゆめ-”を披露。“キミシダイ列車”では「気づけば横浜アリーナで歌ってんだよー!」という即興歌詞も飛び出して、「夢を生かすも殺すもキミ次第」という力強いメッセージを提示していく。そして「まだ帰りたくないからもう1曲やってもいいかな?」と、最後に予定になかった“内秘心書”投下! 「これからもONE OK ROCKなりのロックを貫き通して、いま腐りかけている音楽業界を正していきたいと思います! それには皆さんの力が必要です!!」という宣誓のもとに今夜最後のオイ・コールを導き出して、2時間半のアクトを全力疾走で駆け抜けた。

1万人を軽く超えるオーディエンスを完全掌握した圧巻のアクト。かと言って、キャリア史上最大のハコに挑む気負いやプレッシャーをいい意味で感じさせない、ONE OK ROCKらしいアクトだった。終盤には特効が大放出だったけど、舞台装飾や映像演出は限りなくシンプル。観客ひとりひとりとエネルギーを交換し合いながら濃密なライブを築き上げていくONE OK ROCKならではの空間もライブハウスのときと少しも変わっていなかった。だからこそ、「ここは皆が連れてきてくれた場所だから1分だって無駄にしたくありません。だから俺らの声がちゃんと届いてますか?」というTakaのシャウトに地鳴りのような歓声が沸く。怒り、哀しみ、絶望、反骨といったネガティヴな感情をすさまじい熱量で放つことでポジティヴな未来を切り拓いてきたバンドがこういうステージに到達したことは本当に喜ばしいことだし、その信念を貫き通したまま更なる大きなうねりを生み出していこうとするバンドの姿勢は、今のロック・シーン全体に大きな勇気と活力を与えるものだと思う。これからのロックシーンには、ONE OK ROCKが必要だ。そう強く思わせる説得力に満ちていたと同時に、観ているこちらの背筋もピンと伸ばしてくれるような、胸打ち震える衝撃の一夜だった。(齋藤美穂)
ONE OK ROCK@横浜アリーナ

セットリスト
1.LOST AND FOUND
2.皆無
3.未完成交響曲
4.じぶんROCK
5.Re:make
6.世間知らずの宇宙飛行士
7.Mr. 現代Speaker
8.アンサイズニア
9.カゲロウ
10.Wherever you are
11.エトセトラ
12.カラス
13.Pierce
14.C.h.a.o.s.m.y.t.h.
15.Liar
16.Let’s take it someday
17.Rock, Scissors, Paper
18.NO SCARED
19.恋ノアイボウ心ノクピド
20.完全感覚Dreamer
21.Nobody's home

アンコール
22.努努 –ゆめゆめ-
23.キミシダイ列車
24.内秘心書
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