CSS @ 新木場スタジオコースト

CSS @ 新木場スタジオコースト - pics by Ryota Moripics by Ryota Mori
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CSSジャパンツアーの最終日となる本日。開演前からスタジオコーストのあの広いフロアがしっかりと埋まり、グッズ売り場にも長蛇の列ができている。無論彼女たちが足繁く来日してくれていることも影響しているだろうが、この日本でCSS人気が継続して高まり続けている(前回の単独来日公演はコーストより小さいリキッドルームだったし)状況を改めて確認できて、素直に嬉しく思えた。それは彼女たちの日本への愛情がリスナーにちゃんと届いている証明でもあるからだ。

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ライヴは、ラヴフォックスの「トーキョーサケベー!」というMCで幕を開けた。1曲目は新作『LA LIBERACION』から“RHYTHM TO THE REBELS”。ほんの数年前のペッナペナだった演奏が嘘のように、しっかりとしたグルーヴが現出する。また、サポートなのか正メンバーなのかは定かではないが、ベースはスキンヘッドの男性が担当していた。バンドを音楽的なブレインとして牽引してきた唯一の男性メンバーであるアドリアーノが脱退したというエピソード、情報として飛び込んできたときは本当にバンドにとっての一大事だと思ったし、今日も始まるまではあのグルーヴィなベースラインがなくなってしまってライヴ演奏は一体どうなるんだろうと正直心配だった。しかし、ドラムと共に確かなリズムを刻み、また“JAGER YOGA”のようなベースラインが曲全体を引っ張る曲でも音圧の強弱をつけつつその役割を果たす彼のプレイは、決してアドリアーノに劣るものではなかった。新たな音楽を制作する局面になればまた別の問題が生じるのかもしれないが、少なくともライヴ・バンドとしては、アドリアーノの脱退によるパワー・ダウンは一切ないと言ってしまっていいと思う。そんな演奏の良さに応えるように、2曲目“OFF THE HOOK”でフロアはいきなり沸点を迎える。とにもかくにもステージ上が格好良いし可愛いし楽しいから、自然と盛り上がってしまうのだ。正確なリズムの上で3本のギター(そのうち2人は曲によってシンセサイザーとギターを使い分けていた)が掻き鳴らされ、ラヴフォックスが踊り、歌う。特別なことは何もないし超絶的な技巧が披露されるわけでもないが、見るものに「これがバンド・マジックか」と思わすバンド集団としての強さや魅力が彼女たちにはある。

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ライヴの中盤には“LET’S MAKE LOVE AND LISTEN DEATH FROM ABOVE”~“JAGER YOGA”~“HITS ME LIKE A ROCK”という1st、2nd、3rdそれぞれからのアンセムを連打する流れがあった。その間、本当に(開演前のSEでも流れていたりしたが)AC/DCやエアロスミスのような王道のロックンロール・バンドを見ているときのような興奮を感じた。頭が空になるくらいハイになっているのにその空っぽの中に全てがあるような感覚。表現衝動とアーティな感性を正面からぶつけた正しいポスト・パンク・サウンドで世界から注目を浴びた1st、過酷なツアー経験とマネージャーにバンドの収益を横領された事件で負った心の傷が音にビターなフィーリングを刻んだ2nd、そして再び真っ向から「音楽」を楽しめるようになった3rd。今回のアドリアーノ脱退を含め、10年足らずのキャリアとは思えないほどの紆余曲折を彼女たちは乗り越えてきた。だからこそCSSは、楽しいだけの音楽ではなく、喜怒哀楽全てを内包し、肯定した上で鳴らされるロックンロール・ミュージックにまで辿り着くことができたのだと思う。“HITS ME LIKE A ROCK”で、音源で参加しているボビー・ギレスピーのヴォーカル・パートを(1人も踊りを止めぬままで)観客の歌声が埋めるという感動的な光景が、今のCSSが立つロック・バンドとしての高みを表しているように思えた。
 
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ライヴが終盤に至っても、彼女たち、特にラヴフォックスは微塵も疲労の色を見せないどころか、ますます激しいダンスを見せ、声を張り上げていた。リズム感の良さと優れた声量、何よりあの健康的でありながらエロティックな声。あまり特筆されることがないように思うが、ラヴフォックスはヴォーカリストとして充分に秀でている。が、やはりそれを上回って凄まじいのが、パフォーマーとしての力量。黒髪アフロヘア(?)のカツラを被って登場したり、やたら側転しまくったり、1枚ずつ服を脱いでいったり、クラウドサーフィンをしたり、マイクコードを他のメンバーに持たせリンボーダンスをしたりと、枚挙に暇がないほどのパフォーマンスを見せてくれたのだけど、そのどれもがとにかくウケる。ひとつたりともスベらない。それはなぜか、というと、才能ももちろんあるのだろうけど、やはりフロアを、自分たちのファンを喜ばせたいという素直な思いがビンビン伝わってくるからだと思う。だから彼女が何をしても嬉しくなるし、もっと大きな歓声を届けたくなる。ミュージシャンとファンとの相思相愛、それがどれだけ幸福なことかを何度も噛み締めさせてくれたのだ、今日の彼女は。
 
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“CITY GRRRL”にて一旦本編を締めたあと、観客のアンコールに応えほとんど間を置かずに再登場した彼女たちが演奏したのは“ART BITCH”。演奏を始めてすぐにバンド・アンサンブルの熱が頂点に達する、バンドの瞬発力が素晴らしい。続いて、早くもライヴの鉄板曲となっている“I LOVE YOU”でフロアをぶち上げてから演奏されたのは、なんとラップ。いただいたセットリストにも「RAP」とだけ記されているので正式な曲というわけではないのかもしれないが、シンプルなロック・サウンドの上でハイスピードにラップを繰り広げる様がまるでビースティ・ボーイズのようで、かなり格好良かった。アンコールの最後は、“BEAUTIFUL SONG”だったのだけど、ここにきて曲中でマイク・トラブルが起こり、数分間ラヴフォックスの声がほぼ聴こえなくなってしまった。しかし、ラヴフォックスは動揺の色を微塵も見せずに歌い続け、周りのメンバーもそれが当然であるように演奏を続けていた。どこまでも強いバンドである。“CITY GRRRL”のリリックの≪胸を張るのよ女の子 あなたはこの場所を支配できるの!≫というラインが象徴的だが、彼女たちはロック史の中に点在するいわゆるライオット・ガール(政治やジェンダーといった巨大な問題に対峙する女性ミュージシャンを指す場合が多い)の文脈とはまた異なる、普通の女の子なのだと思う。しかし、「だから」と順接を使いたくなるくらい当たり前のように、無敵なのだ。普通の女の子が本気で頑張っているから、当然に無敵なのである。演奏を終え、汗だくでなお側転を連発してステージから消えていくラヴフォックスを見ながら、そんなことを考えていた。(長瀬昇)


<セットリスト>
1.RHYTHM TO THE REBELS
2.OFF THE HOOK
3.LA LIBERACION
4.MUSIC IS MY HOT CHOCO-CRO
5.RED ALERT
6.LET’S MAKE LOVE AND LISTEN DEATH FROM ABOVE
7.JAGER YOGA
8.HITS ME LIKE A ROCK
9.LEFT BEHIND
10.YOU COULD HAVE IT ALL
11.MOVE
12.ECHO OF LOVE
13.FUCK EVERYTHING
14.ALALA
15.CITY GRRRL
アンコール
1.ART BITCH
2.I LOVE YOU
~RAP~
3.BEAUTIFUL SONG
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