THE BAWDIES @ 日本武道館

THE BAWDIES @ 日本武道館 - all pics by 橋本 塁(SOUND SHOOTER)all pics by 橋本 塁(SOUND SHOOTER)
THE BAWDIES @ 日本武道館
THE BAWDIES @ 日本武道館
開演と同時に巨大なミラーボールがぐるぐる回り、場内を一気に煌びやかなムードに変えた“I BEG YOU”の跳躍力! “HOT DOG”で満場の武道館を激震させた狂騒感! そして「武道館の中心でなにを叫べばいいかって!? 愛しかないでしょう!」(ROY)
などと間髪入れずに煽り立てながら場内をひとつにしていく圧巻のパフォーマンス!……今や若手バンドきっての勢いでロックンロール街道を邁進するTHE BAWDIESだが、もはや「若手バンド」の枠にくくるのは失礼に思えるほど、完璧で堂々たるライブだった。3rdアルバム『LIVE THE LIFE I LOVE』ツアーの大打ち上げとなる、THE BAWDIES初の武道館公演。バンドにとって大きなターニングポイントとなるこのステージで、彼らはバンドの未来どころか日本のロックンシーンの未来すらも強靭に牽引していく存在としてのポテンシャルの高さを十二分に発揮してくれた。

「ビートルズが来日公演をやったときから、武道館は日本のロックンロール発祥の地なんですよ!」とROYが言っていたように、彼らにとって夢にまで見た場所でのライブ。それ故に客席スタンドがステージをぐるりと取り囲み、後方の客席に限りなく近づける花道が設けられるなど、武道館ならではの演出もあったけれど、基本的にはいつものライブハウスでのライブを思わせるようなステージ構成だった。装飾らしい装飾は、ドラムセットが置かれた赤いサークル状のミニステージと、その背後に立てかけられた「THE BAWDIES」の電光パネルのみ。あとは大型ビジョンも目立った照明器具もない、シンプルなステージ。しかしSE“SOUL MAN”が流れた途端にミラーボールが回りだし、“I BEG YOU”でライブをスタートさせると、天井の高い武道館の場内は一気に華やかなムードに包まれる。なにより全方位型にスコーンと抜けた場内ではバンドと客席の距離がものすごく近く感じられて、それがいちばんの演出効果になっていた。ステージを挟んだ向かいのスタンドや3階席のいちばん上の観客の顔すらハッキリと見える気がするような、親密な空気感。360度から向けられる観客のエネルギーのみで頂点へと上り詰めていくという演出に、「ロックンロールへの愛こそ最大の原動力」というシンプルな思想を掲げて力強く突き進んできたTHE BAWDIESの精神性が透けて見えて、初っ端から胸が熱くなった。

セットリストを見てもらえばわかるように、2曲目“JUST BE COOL”で早くも大揺れを生み出したアクトは、終始アガりっぱなしの怒涛の展開。ロックンロールの爆発力とソウルの濃厚なグルーヴを携えた、聴く者の身体をダイレクトに刺激するサウンドが、次々とブチかまされていく。しかし何といっても彼らのライブを痛快なものにしているのは、4人の突き抜けたキャラクターそのものだ。ステージや花道を縦横無尽に駆け抜けながらアグレッシヴにギターを掻き鳴らすJIM、力強いコーラスをこなしながらソウルフルなギターを鳴らすTAXMAN、MCではメンバーにとことんまでイジり倒されながらもダイナミックなビートを叩き出すMARCY、そして腹の底から焼けつくようなシャウトを響かせるROY。互いの個性をぶつけ合いながらも一切の緊張感やストイシズムを感じさせない、幼い頃から時間を共にしてきた彼らだからこそ築くことのできるオープンなムードが、場内の熱気を軽やかに引き上げていた。

中盤では、「武道館に立たせてもらうならMARCYがこれだけは絶対にやらせてくれと言ってたことがあります」(ROY)という振りから、ドラムセットが乗った円形のミニステージをMARCYがひとりで手押しして(笑)、後方の客席に向いて“I’M IN LOVE WITH YOU”をプレイ。「せっかくの武道館公演でMARCYばかり目立って。俺にもやらせてくれ!」(TAXMAN)としてビートルズのナンバー“I’M DOWN”をTAXMANヴォーカルで披露。さらに「俺にだってやらせてくれ!! インディーで最初に作った曲です」(ROY)という宣誓から“SHAKE IT BABY”に雪崩れ込む。そして「おいおい。なに皆でお懐かしモードになっちゃってんのよ!? アンタらが乗ってんのはタイムマシーンですか? アンタらは過去じゃなくて先に行くんでしょ!? だったら乗り込むのは、この赤いロケットじゃないんですか!?」(ROY)と“RED ROCKET SHIP”へ! その後も「哀しいことがあったら全力で泣けばいいんですよ。全部オレらが受け止めます」として“SAD SONG”を届けたり、「今ので後ろを向くのは終わり。こっからはお祭り全開でいきましょうか! 花火もあればお神輿だってなんでもアりだ! おっと、出店を忘れちまったな!」として“HOT DOG”をかましたりと、間髪入れずに放たれるROYのアジテーショナルなMCが場内のボルテージを上げていく。そして“B.P.B”“IT’S TOO LATE”“YOU GOTTA DANCE”と一気に駆け抜けた後は、“A NEW DAY IS COMIN’”で本編フィニッシュ! 「ありがとうございました!」と一礼する4人に、客席から割れんばかりの拍手が送られた。

アンコールでは、今年中止になったTHE SONICSとの対バンツアーを来年3月に行うことを発表! ゆるやかな横揺れを生み出した“BECAUSE”、再びピースフルに弾けた“KEEP YOU HAPPY”を経て、大ラスに鳴らされたのは“SHAKE YOUR HIPS”。すべての客電が明るく点灯した場内は、見わたす限り笑顔で腰を揺らす人、人、人! さらに最後はメンバー→アリーナ→スタンドへとウェーブをつないで最後に皆で「わっしょい!」と叫ぶ「360度ウェーブわっしょい!」でシメて、2時間半に及ぶアクトは大団円を迎えた。

「もう最高です!」――今夜のライブで、ROYは何度もこう叫んでいた。確かに万感の思いで迎えた今夜のライブは、そのシチュエーションだけで最高なものであるのは間違いない。しかし、この日のライブを真の意味で最高なものにしていたのは、やはりTHE BAWDIESの強靭な精神性だと思う。「オレたちが最高のパーティーができるのは、何でも全力でやってきたから」や「ロックンロールは笑顔で踊ればそれでいい。それがすべて」などのワードを何度も放っていたROY。彼らの音楽は1950年代から60年代のロックンロールやR&Bをまんま継承した音楽であり、音楽的な新しさは正直皆無に近いけど、それを120%の確信をもって全力で解き放つスタンスが、THE BAWDIESのライブをこんなにもキラキラとしたものにしているのだろう。「自分たちにしかできないこと」や「オリジナリティ」を追求するのは二の次。自分が心の底からワクワクできる音楽を力いっぱい奏でることが何よりも大事。一見すると単純明快で誰しもが思いつきそうな思想だけど、それを極めて高い純度で実行できるバンドは今の時代にそうそういないし、それこそがTHE BAWDIESの圧倒的なオリジナリティになっているんだと思う。
とにかく、THE BAWDIESにはこの勢いでまだまだ突き進んで欲しいし、それを多くのリスナーが求めている。そう力強く確信したくなるような、最高の一夜だった。(齋藤美穂)

セットリスト
1.I BEG YOU
2.JUST BE COOL
3.SHOW ME UP
4.LOVE YOU NEED YOU
5.KEEP ON ROCKIN’
6.I’M A LOVE MAN
7.WHAT A LONELY NIGHT
8.EVERYDAY’S A NEW DAY
9.ANNE
10.THANKS BILL
11.BITTER BUTTER
12.I’M IN LOVE WITH YOU
13.I’M DOWN
14.SHAKE IT BABY
15.RED ROCKET SHIP
16.EMOTION POTION
17.YEAH
18.SAD SONG
19.HOT DOG
20.B.P.B
21.IT’S TOO LATE
22.YOU GOTTA DANCE
23.A NEW DAY IS COMIN’
アンコール
24.BECAUSE
25.KEEP YOU HAPPY
26.SHAKE YOUR HIPS
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