スネオヘアー @ Shibuya O-EAST

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スネオヘアー @ Shibuya O-EAST
今年8月に3年ぶり7枚目のアルバムにしてセルフタイトルを冠したアルバム『スネオヘアー』をリリースし、10月から『スネオヘアー TOUR 2011「スネオツアー」』と題したライヴツアーを行ってきたスネオヘアー。本日はそのツアーファイナルとなる東京公演。2009年にベスト・アルバムをリリースしてからスネオヘアーを取り巻く環境が激変したことは今日のMCでも本人が何度も言っていたが、環境が変化する中でも変わることのない音楽に対する情熱をスネオヘアーが真っ直ぐにリスナーへぶつけてくれたことが今日のライヴで何よりも胸を熱くさせてくれた。レーベルとの契約が切れ、事務所も離れ、何もなくなったところから、自らで事務所を立ち上げ、新たな出会いの中から作品を生み出し続けていく。「続けていく」ということが本当に難しいということを身をもって知ったスネオヘアーが発信する今の音楽は、いつになく正直で開かれている。

スネオヘアー @ Shibuya O-EAST
スネオヘアー @ Shibuya O-EAST
東京での久々のワンマンライヴに集まった大勢の観客の大歓声に包まれながら、スネオヘアーは黒のパンツに白いシャツ、黒のハットを合わせたシンプルな出で立ちでステージに登場。「ひさ、久しぶり、東京!よろしくお願いします!」と第一声でいきなり噛み気味の様子にオーディエンスも思わず笑ってしまう。"期待ハズレの空模様"からスタートしたライヴは、日々の生活の中で穏やかに流れていく時間のように優しかった。その流れに合わせてか、"逆様ブリッジ"はボサノバ調にアレンジされ緩やかなリズムで聞かせてくれる。

3曲目にして「俺、もうやった感あるんだけど。達成感ある。もう飲もうよ!」とご機嫌のスネオヘアー。確かに3曲聴いただけで充実感というか満たされる感じが凄くある。スネオヘアーが自身の日常を見せていくと同時に、その日常がオーディエンス一人ひとりの日常に寄り添うような共有感を持っているからこの心地よさを生んでいるのだと思う。しかし、「今回のアルバムは飛んだり跳ねたり、スポーツな曲はあまりやらないので、じっくり、ゆるく聴いてもらえればと思います」と続けると、急にダークな曲調の"空想します"で重々しさをフロアに残していく。切なくなるような悲しみや喪失感も隠すことなく歌ってくれるのもスネオヘアーで、やはり根本は変わらない。

スネオヘアー @ Shibuya O-EAST
そして、中盤ではファイナルならではの特別演出ということで、バイオリン、ビオラ、チェロから成るストリングス隊を呼び込みストリングス・アレンジで"シャボン"を披露。伸びやかなメロディと美しいストリングスの響きが相まって壮大なサウンドスケープが描かれる。スネオヘアーの音楽からはいつもどこか悲しい原風景を感じていたけれども、今回のアルバムで人の温もりだったり、日常で感じる些細な幸せだったりがその風景によりストレートに現れるようになった。スネオが「原風景、僕にとっては雪国ですけど、一日が始まって、一日が終わる、そういうものをイメージして書いた曲です」と言って演奏した"眠りにつく頃"では寒さの中にも微かに感じられる温かみでフロアがじわりと熱くなった。

「変わらないでいるっていうことが大事なんじゃないかなと思ったりします」といつもの口調でボソッと語るスネオ。いつになく前向きな言葉を発している。再びストリングス隊を迎えてプレイされた"さらり"の《曖昧なものは曖昧なままで 大切なものはやっぱそのままで》という言葉は、変化した環境の中でも声を大にして言える彼の確固たる想いなんだと思った。

アンコールでは「普通に感じますね、ありがたいって。こうやってみなさんに集まってもらって。ツアーも3年ぶりにこうして迎えられて嬉しく思います」と素直に感謝の気持ちを伝え、スローテンポにアレンジされた"セイコウトウテイ"、「先のことを考えてもわからない。気持ちだけでも切り替えればその瞬間から幸せになれるという歌を聴いてください」と"バースデー"を歌う。一旦ゼロになったところから、畑違いの映画主演を務めることで、やっぱり音楽しかないと、音楽への情熱を改めて感じた今のスネオヘアーだからこそ、音楽を通じて繋がっていきたいという気持ちが溢れていた。

スネオヘアー @ Shibuya O-EAST
スネオヘアー @ Shibuya O-EAST
そして、鳴り止まないダブルアンコールを求める拍手に応え、なんとタキシード姿で登場したスネオヘアー。ちゃんと語ろうと思ってタキシードにしたのだそう。相変わらず脱線しまくりなトークが延々と続き、「慣れない映画の主演をやらせてもらい、音楽的な出会いがあり、個人的にも……悲しみとかいろんなものを背負ったところで感じられる気持ちを初めて知りました」と言ってスネオヘアーが紹介したのはなんと、今年の6月に入籍した人生のパートナーであるともさかりえ!ステージに出るか出ないか昨日の夜まで夫婦で悩んだというが、スネオヘアーの日常を、ありのままをリスナーに対して正直に見せることが、今の彼の表現方法なんだと感じる。スネオヘアーのタキシードに合わせて、ベアトップの白いミニドレスを纏ったともさかりえとともに"家庭に入ろう"を披露。少し照れながらも夫婦仲睦まじい歌のやりとりを幸福感全開でやりきった。

来年は10周年、そしてスネオヘアー個人としては41歳を迎える年。周りが変わってもスネオヘアーは変わらず音楽を通してメッセージを発信し続けてくれるだろうという確信を強く印象づけた一夜だった。(阿部英理子)
スネオヘアー @ Shibuya O-EAST

セットリスト
1.期待ハズレの空模様
2.笑顔の数
3.逆様ブリッジ
4.空想します
5.電話
6.微熱
7.団欒
8.シャボン
9.赤いコート
10.スカート
11.JET
12.眠りにつく頃
13.秘密
14.メールして
15.さらり
16.いいでしょ

アンコール1
1.セイコウトウテイ
2.バースデー
3.headphone music

アンコール2
1.家庭に入ろう
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