デフ・レパード @ 東京国際フォーラム ホールA

デフ・レパード @ 東京国際フォーラム ホールA
デフ・レパード @ 東京国際フォーラム ホールA
まず、最初にお断りしておきます。私がここにこうして80年代のメタル・ブームの頃に栄華を極めたバンドの、来日公演のレビューを書くたびに、ネットなどで、「こいつバカ」とか「転びメタル氏ね」とか「だからロキノン嫌い」とか、真剣に怒っている方がいらっしゃいますが、そういう方は、以下、ぜひ、読まないでいただければ、と思います。
これは「バカだなあこいつ」とか「あっさいなあ」とか、蔑みながら楽しむための読み物です。80年代、メタル小僧だった田舎の中坊が、ロッキング・オンに毒されてパンクとかUKギター・ロックに改宗してしまい、でも歳を食ってから、かつて追っかけたメタル系バンドが来日すると、三つ子の魂なんとやらでついフラフラと観に行っては、思わず興奮してなんか書くんだけど、なんせメタルに関してブランクありすぎるもんだから、書くことがいつもとんちんかん。という、そのさまを見て笑うためのテキストです。ゆえに、蔑まれるのはウェルカムですが、読んで真剣に怒るのは、まずいと評判のラーメン屋に入って「まずいじゃないか!」って憤っているようなものです。そのまずさを笑える方のみ、店内へどうぞ、ということです。そういう店なんだから。タダだからって、なんでも読めばいいってもんじゃありません。

ではいきます。デフ・レパード、3年ぶりの来日公演の東京編、国際フォーラムホールA・2デイズの1日目。そう、さっき「80年代のメタル・ブームの頃に栄華を極めた~」と書きましたが、デフ・レパードの場合、ちょっと違います。そういう、かつて栄華を極めたメタル系のバンドの場合、今や、来日時以外は活動していなかったり、していたとしてもアジア・ツアーとかだけで英米では存在しないがごとき実情になっていたりすることもままありますが、このバンドはそうではない。休止とかせずに、ずっとコンスタントに活動しているし。で、そりゃまあ80年代中期~末期の頃の、とんでもない売れ方には及ばないものの、出せばちゃんとチャートに入ったりしてるし、アメリカでもそれなりの規模のツアーやってるし。
というわけで、1曲目は、今年出た最新シングルからスタート。ただし、それ以降は、往年の代表曲を連発。という、すばらしいセットリストでした。こんな感じです。

1.UNDEFEATED(LONG VERSION)
2.LET’S GET ROCKED
3.ANIMAL
4.C’MON C’MON
5.WOMEN
6.FOOLIN’
7.MAKE LOVE LIKE A MAN
8.TOO LATE FOR LOVE
9.SLANG
10.LOVE BITES
11.ROCKET(EXTENDED VERSION)
-bass solo-
12.GODS OF WAR
13.TWO STEPS BEHIND
14.BRINGIN’ ON THE HEARTBREAK
15.SWITCH 625
16.HYSTERIA
17.ARMAGEDON IT(FULL VERSION)
18.PHOTOGRAPH
19.POUR SOME SUGAR ON ME
20.ROCK OF AGES
アンコール
21.WHEN LOVE&HATE COLLIDE
22.ROCK! ROCK!

ジョー・エリオット(vo)がちょっとだけふっくらしたこと以外は、メンバー5人とも、経年劣化のとても少ないヴィジュアルを保っているのが、まず偉い。前述の通り、往年のヒット曲中心。6曲目の前に、ジョー、「では、ここで1983年に戻って」みたいなMC。あ、なんで「みたいな」なのかというと、私、大学の時、本来2回生までで終わる英語を2年連続落として再々履修で4回生までやったくらいダメーな学力なので、「みたいなことじゃないかなあ……」という推測込みのヒアリングなのです、ということです。
で、しっとりとしたトーンの10曲目では、ヴィヴィアン・キャンベルが泣きのギター・ソロをキメる。1991年に亡くなったスティーヴ・クラークの後に入ったためか、世間的な評価としては自分の方が上なのに、もうひとりのギター=フィル・コリンを立てていて、メインは彼、自分はそのような要所要所での見せ場以外ではサブに徹する、というスタンスのプレイでした。実は重要なポイントは自分が弾いていたりするんだけど、派手なところはフィルに任せる、というか。やはり、オリジナル・メンバーを尊重している、ということか。
って書いて思い出した。違う。フィル・コリン(ズはつきません)も、オリジナル・メンバーじゃなかった。ブレイク直前に加入したんだった。その前はガール(こっちもズはつきません)という、美少年アイドル・ハードロック・バンドにいたのでした。当時、ミュージック・ライフ誌がやたら推していたバンドです。美形なので。
というか、デフ・レパード、UKのバンドだけど本国ではなかなかパッとしなくて、1981年の3rdアルバム『Pyromania』でアメリカで大ブレイクして以降、逆輸入的にUKでも成功して、そのタイミングで日本でも知られるようになったんだけど、私の最初の認識、「元ガールの美形ギターが入ったバンド」でした。で、「あんなアイドル・バンドにいたくせに、演奏、大丈夫なのかしら」とか思ってました。大丈夫も何も、元々優れたギタリストだったんですが。失礼しました。ラウドネスの高崎晃と故・樋口宗孝のデビューが、アイドル・バンドだったようなものですね。レイジーね。ヴォーカルは影山ヒロノブね。このたとえ、ちょっとどうかと思いますね。
話を戻すと、そのフィル・コリン、もちろんこの日も絶好調、弾きまくり。あと、昔はそんなことなかったんだけど、最初から最後まで上半身裸、いつの間にか定番になってるみたいですね。年齢に明らかにそぐわない、ムキムキな筋肉でした。たぶん、鍛えまくっているんだと思います。だから、見せたいんだと思います。それから、ほんとしょっちゅうギター取り替えてて、何本使ったか数え切れないくらいだったけど、往年の愛用モデル、Ibanezのデストロイヤー(という名前のエクスプローラー型のギター)は、一度も出てきませんでした。どうでもいいですか。どうでもいいですね。80年代当時、フィル、Ibanezのモニターやってて、楽器雑誌によく広告が載っていたのでした。

続き。11曲目では、最初にジョーが客席をあおってハンド・クラップを起こし、自分はステージを降り、フィル&ヴィヴィアンのインスト・ギター・バトル大会に。それが終わるとリック・サベージのベース・ソロ。にしても、ドラムのリック・アレン、交通事故からの復活当時は奇跡のように語られた「片腕のドラマー」という事実が、さすがに25年も経つと「ただ普通」みたいになってるのがすごいよなあ、でもまあそりゃそうか、そのあたりの事情もおさらいしたいけどキリがないのでご存じない方はウィキをどうぞ、とか思いながら観ていたら、そのリック・アレンがステージを下り、フィルもヴィヴィアンもジョーもアコギを手にして、4人で13曲目をプレイ。続く14曲目では、リック・サベージもステージを下り、3人の歌とアコギで、満員の客席、大シンガロングに。感動的、かなり。
そして15曲目は、またインスト。フィル&ヴィヴィアンのツイン・リードが美しい。曲終わりで、ジョーがヴィヴィアンのことを紹介。「昔ディオにいて」というとディオの曲を、「で、次がホワイトスネイク」というとホワイトスネイクのあの曲をちょっと弾き、客席をわかせる。えーと、これも説明した方がいい気もしますが、ファンはみんな知ってるしキリがないので割愛。これもウィキ見てください。ただ、ホワイトスネイクの、メンバー総とっかえして全米ブレイクしたあの曲、そうだ“STILL OF THE NIGHT”だ、実はレコーディング終わったあとにヴィヴィアンに声がかかって、だからPVに出てるしツアーにも参加したけど、そのあと脱退しちゃったから、オリジナルの音源としては、彼のプレイは残ってないんですよね、ホワイトスネイクの歴史には。「なめやがって。誰だと思ってんだ、ヴィヴィアン・キャンベルだぞ!?」と、当時、デヴィッド・カヴァーデルに腹が立ったものです。
とにかく、その2バンドのリフをチラッと鳴らしたあと、ヴィヴィアンが弾き始めたイントロが、大ヒット曲の16曲目だったわけです。当然、わき起こる大歓声。そこから先は、ご覧のとおり、もうキラ星のごとき曲たちのオンパレード。至福でした。

1.休止とか解散とか再結成とかなしで、ずっとやっている(活動がゆっくりな時期はあったけど)。
2.全盛期よりは下がったが、グランジ以降の「メタル終焉の季節」に負けなかった。つまり、消えなかった。
3.だから、まあ、日本で人気があるのは事実だけど、だからって必ずしも「ただの昔懐かしいビッグ・イン・ジャパン」ってわけじゃない。
4.そして今も、ライヴ・パフォーマンスにおいて、とてもよいコンディションを維持している。

という意味で、今のデフ・レパート、アイアン・メイデン以下、モトリー・クルー以上、みたいなポジションなのかな。と、思いました。違うか。メイデンは、当時より下がるどころか、むしろ、上がってるし。あと、モトリーの方が、デフ・レパードよりも人気あるし。
ただ、この夜のデフ・レパード、つい、そういうことを書きたくなるほどに、すばらしいライヴだった、ということです。「今、こうだったらイヤだなあ、悲しいなあ」っていう、観る前の心配ポイントを、すべて裏切ってくれました、ほんと。楽しかった。(兵庫慎司)
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