ねごと@赤坂BLITZ

ねごと@赤坂BLITZ
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ねごとの1stフルアルバム『ex Negoto』のレコ発ツアー「お口ポカーンフェス?! 〜ex it! 抜け殻ツアー〜」。9月1日に行われた地元=千葉LOOKでのライヴを皮切りに、主に対バン形式(東名阪はワンマン)で全国各地を回ってきた本ツアーも、いよいよここ赤坂BLITZでのファイナル公演を残すのみ。昨年12月の代官山UNITでの初ワンマンから1年弱、底知れない可能性を予感させる高純度の輝きを振りまきながら、成功への階段を3段飛ばしで駆け上ってきた彼女たちはこの大舞台で、我々にどんな夢物語を見せてくれるのか。はち切れんばかりの期待感が熱気となって充満する満場のフロアの中で、開演を待った。

定刻を回り、BGMが途切れるごとにワッと盛り上がりを見せる場内にねごとが現れたのは18時10分。すっかりお馴染みとなったフランク・ザッパのSEにのって軽やかにステージに足を踏み入れた4人は、まずは横並びになってペコリとお辞儀。この一連のオープニングにおける、「音楽好きの女の子4人組バンド」という彼女たちの「ポップ・アイコン」としての絶対的な「正解」ぶりと、そのポテンシャルの高さ(要するに、その存在だけでポピュラリティを獲得できそうなくらい、とても可愛いということです)には毎度のことながら驚かされる。しかし、そんなバンドへの表面的な評価を根こそぎ吹っ飛ばしてしまうほど凄まじいのが、彼女たちの音楽性である。それをはっきりと我々の前に提示してみせたのが、蒼山幸子(Vo/Key)の静謐なキーボード・イントロからスタートしたこの日の1曲目“インストゥルメンタル”だ。万人の心に摩擦ゼロで滑り込んでいく蒼山の透明な歌声と優しいピアノの音色で届けられる冒頭部分も素晴らしかったが、特にタイトなリズム隊と沙田瑞紀の(G/Cho)の鋭利なギターが加わり、一気にドライブがかかる中盤〜後半部の流れは圧巻。ポップとオルタナティヴがギリギリの均衡状態を保ちながら突進してくるスリリングなねごとサウンドに打ちのめされたオーディエンスは、曲が終わってもしばらく呆然としたままで、少し間を置いてフロアから割れんばかりの拍手喝采が起こっていたのがやけに印象的だった。

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そして“サイダーの海”“彗星シロップ”とアップ・ナンバーを連打して勢い良く序盤戦を駆け抜けてから、「今日をすごく楽しみにしてきました。みなさんに会えて本当に嬉しいです!」と蒼山が挨拶。続いて、メンバー紹介を兼ねてそれぞれのMCタイムへ。このMC、ドラムを叩いているときに目を瞑ってしまう癖があるため、スネアに「目を開けなさい!」と書いてもらったという最初の澤村小夜子(Dr/Cho)の話などはまだしっかりとしていたのだが、それ以降は沙田のお父さんの痛風の話だったり、蒼山の鮭弁当の話だったりと、現役女子大生の彼女たちらしく(?)、見事なまでにぐっだぐた。しかしそれでも会場は、「早く曲をやれ!」という空気ではなく、むしろその「ぐだぐだ具合」をショウの一部として楽しんでいるような、ピースフルなムードに包まれていく。このあたりは間違いなく、どんな時でもとことんマイペースを貫く4人の愛らしいキャラクターの為せる業だろう。ところがいざ演奏に突入すると、人が変わったかのようにシャープな印象に変わる彼女たち。沙田がダークで重たいギターを炸裂させて瞬く間に場内を引き締めた“うずまき”、藤咲佑(B/Cho)のグルーヴィーなベースラインと澤村のキレのあるスネアがフロアに盛大なハンドクラップを発生させた“ワンダーワールド”と、随所で「デビュー1年で赤坂BLITZを完売させる脅威の新人バンド」としての凄味を見せつけながら、会場のボルテージをじわじわと上昇させていくのであった。

「次からは、景色が変わる曲たちをやっていきたいと思います!」という蒼山のMCから始まった中盤戦。《エブリデイ/夢だけが泳いでいく/頭が悪いから123数えるのやめた》(“ビーサイド”)、《オレンジに沈む/街が傾いていく/色褪せてく世界の週末/ばいばい/さよなら》(“week…end”)と、シニカルなタッチで書かれた歌詞に深い孤独が滲む、ねごとのシリアス・サイドとも言うべき楽曲が次々と披露されていく。途中、澤村がキーボードで『スーパーマリオ』の曲を弾いて、それに合わせてオーディエンスをジャンプさせるという「お口ポカーン」な場面もあったものの(笑)、場内がしっとりと落ち着いてきたところで、「ここに来た全ての人が、今夜良い夢が見られるように歌いたいと思います」(蒼山)と、本ツアーでは最後に演奏されることが多かった“ふわりのこと”をプレイ。そして続く“七夕”からは、摩訶不思議なねごとワールド全開の終盤戦に突入。この曲から、楽曲に合わせた映像がステージ後ろのスクリーンに映し出されるという演出が加わり、クライマックスに向けてフロアの高揚感はみるみるうちに膨れ上がっていく。そんな絶好のタイミングで投下されたのは、ダイナミックなアンサンブルにのって蒼山の瑞々しい歌のメロディが躍動するキラー・チューン“カロン”! そして間髪入れずに“メルシールー”! スクリーンには雲をすり抜け颯爽と空を飛び回る白鳥(あるいはアヒル)やバクを象った星座のアニメーションが映し出され、会場はこの日最大の盛り上がりを記録した。

“メルシールー”を終えた後は、メンバーが一度ステージ袖にはけていき、映像を使って12月16日、17日に渋谷WWWで行われるツーデイズ公演「お口ポカーンフェス!? 番外編 〜サンタさんも抜け殻〜」を発表(なお、16日は女子限定、17日は男子限定)。そしてメンバーが再び出てきて、バンド初となるオーディエンスとの記念撮影を済ませてから、最後は“透き通る衝動”“ループ”を披露。グリーンのレーザービームと円環状のライトが飛び交う場内の手を大きく左右にスウィングさせて、「ありがとうございました! みなさん、良い夢を!」(蒼山)という言葉を残し、軽やかな足取りでステージを後にした。これまでは、時折ライヴでなかなか調子が出なかったこともあったねごとだが、スタートからクライマックスまで、披露された17曲全てで満点近い(時にはそれ以上の)スコアを叩き出していたこの日のライヴは、この1年間の全国ツアーやフェス出演で鍛えられた彼女たちの、現時点での集大成とも言える出来だった。そして同時に、自身を取り巻く状況の急激な変化に負けないくらいのスピードで、めきめきと演奏力/表現力をパワーアップさせていく4つの無垢な才能が紡ぐ夢のような物語は、これからもまだまだ続いていくのだということを、改めて確信することができた夜だった。(前島耕)
ねごと@赤坂BLITZ

セットリスト

1. インストゥルメンタル
2. サイダーの海
3. 彗星シロップ
4. うずまき
5. ワンダーワールド
6. ランデブー
7. ビーサイド
8. 季節
9. week…end
10. 揺れる
11. AO
12. ふわりのこと
13. 七夕
14. カロン
15. メルシールー
16. 透き通る衝動
17. ループ
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