ザ・ビートモーターズ @ 渋谷eggman

ザ・ビートモーターズ @ 渋谷eggman
ザ・ビートモーターズ @ 渋谷eggman - pics by hajime kamiiisakapics by hajime kamiiisaka
キャパ300ほどのeggman狭しと響き渡る大歓声の中、「まあ座って座って。立ち話も何なんで。えー、本日はようこそお越しいただきましてありがとうございます。前座を務めさしていただきます、奥田民生と申します」というあの声が!……という時点で、この日のアクトの尋常でなさがおわかりいただけることと思う。今まさに極限進化真っ盛りのロックンロール新鋭4人衆=ザ・ビートモーターズが「対バン希望のアーティストに向けて挑戦状をしたためる」というところから始まった対バン・ライブ・シリーズ『ノリノリバトルシリーズ~ザ・ビートモーターズからの挑戦状』。名古屋/大阪まで含めた全10公演は、detroit7(10/8:高円寺UFO CLUB)、LUNKHEAD(10/23:下北沢CLUB Que)、四星球(10/28:名古屋HUCK FINN)、GOING UNDER GROUND(11/6:下北沢BASEMENT BAR)、おとぎ話(11/24:下北沢SHELTER&11/26:大阪FANDANGO)、キノコホテル(12/9:仙台PARK SQUARE)といった先輩バンドたちの胸を借りまくる超意欲的なラインナップなのだが、その最たるものが、初日の対バン相手=事務所の大先輩でもある奥田民生である。

で、その奥田民生。「今日は決闘ということで。持ち時間30分くらいですけど……今から15分くらい飲もうかと(笑)」と言いながらキュポンと酒のボトルを開けつつ、アコギ弾き語りで歌い上げる、いわゆる「ひとり股旅」スタイルでのアクト。30分強・全6曲のセットリストはこの日集まった人だけの楽しみとさせていただくが、もう、すごい。のっけから爆笑を誘い、滋味あふれる歌声で聴く者の心をかき混ぜ、最後は夜空をも貫く熱唱で怒濤の感涙を誘う……という、音楽の魔法のカタマリとしか言いようのないドラマチックなひととき。一見酔拳の如き無防備の極みのような佇まいで、しかし強烈にオーディエンスの心と身体を震わせてしまう奥田民生という「前座」が、おそらく日本最大級に「主役」へのハードルを上げる布陣であることは観客のみならずビートモーターズ自身も当然予測していたことと思う。が、この日のアクトは会場にいた者すべての想像を遥かに越えていた。そして、その後に登場することの巨大なプレッシャーと躍動感と闘争精神……それこそがこの対バン・シリーズの狙いである、ということに改めて思い至って、思わず武者震いを禁じ得なかった。

ザ・ビートモーターズ @ 渋谷eggman
そして19:30、いよいよ主役のザ・ビートモーターズの登場! いきなり爆裂ブルース“ばらいろの世界”で会場の度肝を抜くタフでパワフルなサウンド! そして、その場の空気を分子レベルでびりびりと震わせながら聴く者のハートを片っ端から情熱発電機に変えていくような秋葉正志(Vo・G)の絶唱! そのままストーンズ直系の8ビート=“ジェット先生”、ポップ&クールな“アンドレア”でもってずかずかとロックンロールの核心へと踏み込んでいく。60〜70年代ブリティッシュ・ロックをそのまま2010年代にジャック・インしたようなロックンロールの図太いうねりはもちろんのこと、ビートモーターズの音楽の爽快さは何と言ってもそのダイレクトさにある。ロック・バンドは往々にして「メンバーの強烈な個性のぶつかり合いと発散」と「バンド・アンサンブルの一体感とグルーヴ感」のジレンマを抱えているものだが、ザ・ビートモーターズの場合、エレカシ宮本のテンションと奥田民生の包容力を足しっ放しにしたような、激情もシニカルさも瞬間爆発させていくような秋葉のヴォーカルと、木村哲朗(G・Cho)の粘っこいリフやブルージーな泣きソロと、ジョニーこと柳川崇史(B・Cho)&鹿野隆広(Dr・Cho)のワイルドでダイナミックなビートとが、それぞれの存在感とカラーを競い合いながらも曲タイトルからフレーズの1つ1つに至るまでがっちり融合し、迷いなくロックンロールの極点という一点に向かってどどどどどと突き進んでいくことで、目も眩むような迫力と疾走感、一枚岩の突破力が生まれていくのである。

「バトルシリーズ始まりました!」という秋葉のコールから、今回の対バン・シリーズについて語り始める4人。挑戦したいアーティストに、直筆で挑戦状を書いて渡していったこと。奥田民生に渡しに行った時はユニコーンのレコーディングの、ちょうど“手島いさむ大百科”を作っていた時だったこと。「対バン相手によって選曲も変えていく」という言葉通り、“車でGOしたのさ”“車なのさ”とクルマ系ナンバーを重ねてきたのも、全編にわたってとりわけポップでストレートな曲を並べてきたのも、この日の対バン相手=奥田民生へのリスペクトゆえだろう。ミドル・テンポの軽快なロックンロール“ボーイフレンド”と性急な8ビート・パンク“ガールフレンド”を織り重ねてセンチメンタル過剰な衝動風景を描き出したり、“きれいな少女”で高々と噴き上がった秋葉の咆哮を軸に木村&ジョニーが強靭な極彩色ハーモニーを生み出してみせたり、快速ロックンロール“恋がしたい”の切れ味鋭い木村のコード・ストロークと秋葉のピート・タウンゼントばりの大車輪ピッキングがスリリングなデッドヒートを繰り広げたり……という衝撃的な瞬間すべてが、脇目も振らずにロックの「その先」へと驀進するビートモーターズの今を強く指し示している。「東京では初披露です」という秋葉の言葉に導かれて鳴り響いたのは、“ギター”というらしい新曲。いつになく穏やかに、豊潤なヴァイブとともに広がるギターの音色が、4人の音楽世界に新たな彩りを添えたところで……本編終了。

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アンコールでは、「ビートモーターズで唯一映像化されてる曲です!」という秋葉のコールから“9 to 5”を披露(SPARKS GO GOのDVD『SHINKIBA JUNCTION 2009 また倶知安じゃないジャン!』に収録)した後、ラストはゲスト=奥田民生“イージュー☆ライダー”のカバー! 民生のゆったりした歌い回しとは対極の、凸凹の荒れ地を爆走するような秋葉の荒々しい歌いっぷりが、ホットなフロアをさらに熱くした……ところに、なんと奥田民生が再び登場! ビートモーターズのエネルギッシュなサウンドをバックに、わざわざ秋葉の歌い回しを顔を真っ赤にして真似してみせる民生のサービス精神が、eggmanごと空へ飛び上がるような高揚感を生んだことは言うまでもない。まさにロックンロールの「これから」を切り開かんとする精鋭の、最高にエモーショナルな試みは、こうして幕を開けた。次は10月8日・高円寺UFO CLUBにてdetroit7と対決!(高橋智樹)
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[ザ・ビートモーターズ SET LIST]
01.ばらいろの世界
02.ジェット先生
03.アンドレア
04.車でGOしたのさ
05.車なのさ
06.ボーイフレンド
07.ガールフレンド
08.あのこにキッス
09.恋するふたり
10.きれいな少女
11.ちくちくちく
12.アイドル
13.恋がしたい
14.ギター(新曲)
EC1.9 to 5
EC2.イージュー☆ライダー
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