bonobos @ 日比谷野外大音楽堂

bonobos @ 日比谷野外大音楽堂
bonobos @ 日比谷野外大音楽堂
今年でバンド結成10周年を迎えたbonobosの記念ライブ「テン一○年シンフォニア」。バンドにとって2年ぶり、3度目となる日比谷野音ワンマンは、終始チアフルでピースフルなムードに包まれた、最高のアクトだった。豊かな音と、ユーモラスなパフォーマンス。さらにはミンミンという蝉の鳴き声や、そよ風に揺れる木々のざわめきすら音楽の一部に取り込んでしまう、オーガニックでオープンマインドな2時間強。今夜をひとつの区切りとして、またbonobosは、ここから先の10年を伸びやかに歩んでいく。

蔡(Vo/G)、森本(B)、辻(Dr)の3人に、ギターの木暮晋也、キーボードのHAKASE-SUN、ホーン隊の武嶋聡と川崎太一朗、コーラス&パーカッションの小池光子らサポート・メンバーを加えた8人編成で登場したbonobos。「こんにちは、bonobosです!」(蔡)という挨拶から1曲目“春の嵐”へ突入すると、大所帯で紡がれる音色豊かなアンサンブルが、客席を大きく揺らしていく。さらに目を惹いたのが、カラフルな舞台装飾とステージ衣装。ステージ天井には白、ピンク、水色、パープルなどの三角布が飾りつけられ、それと同色の布を縫いつけた真っ白な衣装をメンバー揃いで着用。蔡に至っては、テンガロンハットにエアリーな布をふんだんにあしらった、まるで鶏のトサカのような帽子を被っている。“ICON”までの冒頭のアッパー・チューン3連打では、それらの布が風にひらひらと揺れる中、軽やかな高揚感が築かれた。

その後は、沈みゆく太陽に別れを告げるようなダブサウンドをしっとりと披露。森本の分厚いビートと辻のダイナミックなドラミングの上でトランペット、サックル、フルート、コーラスなどが重層的に折り重なり、丸くふくよかなサウンドスケープを描いていく。さらにそこに、クリアで伸びやかな蔡の歌声が溶け合ったときの圧倒的なうつくしさ。喜びも哀しみも光り輝くオブラートで包み込んで一気に解き放ったような音楽は、心地よい高揚感をじわじわと持続させてくれるものだ。すべての音が渾然一体となって朝焼けのような光のシャワーを演出した“よあけまえ”、《ありがとう さよなら》という最初の言葉が放たれた途端に大きな歓声に包まれた“GOLD”は、特にすばらしかった。

昨年はソロ活動を行っていたbonobos。「せっかくなのでソロの曲もちょっとやります」(蔡)ということで、ここからは辻と蔡のソロ曲を1曲ずつプレイ。まずは辻のソロ・プロジェクトShleepsの“Flyingbirds&Me”を披露すべく、音源でもヴォーカルとして参加した小池が再びステージに迎えられる。……と、「その前に皆さんと一緒に歌いたい曲があります」と小池。そのまま「♪ハッピバースデートゥーユー」と歌い出すと、ステージ袖から大きなバースデーケーキが登場する。そう、実は8月13日は蔡の誕生日。それを祝うべく、蔡に内緒でサプライズ企画が用意されていたのだ。客席から飛び交う「オメデトー!」の声に、ひたすら照れまくる蔡。すかさず辻が蔡の顔めがけてケーキを投げる素振りを見せて、場内は大きな笑いと祝祭ムードに包まれたのだった。

そして個人的なハイライトだったのが、この後の“water”“光のブルース”“Standing There”の三連発。“water”の軽やかなホーンサウンドから“光のブルース”で一気に盛り上がり、“Standing There”でセンチメンタルなサウンドスケープが描かれた流れは、まさにbonobosの真骨頂。地球上のすべてのものを慈しみ、肯定する気概に満ちたbonobosのポジティヴな音楽は、その裏に潜む暗部をじっと見つめるシリアスな視点があってこそリアルな輝きを増すものだと思っているが、その光と闇のコントラストが3曲の中で鮮やかに描かれていて、思わず涙腺がゆるみそうになってしまった。

終盤には、9月7日にリリースを控えたニュー・シングルから2曲を披露。きらめく電子音と流星のようにスパークするバンドサウンドがせめぎ合う“星の住処”、ホーン、フルート、パーカッション、鍵盤などあらゆる楽器を総動員してシンフォニックなサウンドが放たれた“Go Symphony!”――どちらもbonobosらしい瑞々しさとハッピーなバイブスに溢れた楽曲であり、これからも己の道をブレずに突き進むバンドの強い意志を感じさせるものだった。そして本編ラストは、“天体のワルツ”。まるで胎児を守る羊水のような神秘的な包容力で場内を包み込み、2時間弱におよぶライブは感動的なクライマックスを迎えた。

アンコールでは、10分以上にわたってダビーなセッションが紡がれた“Hover Hover”、客席から盛大なハンドクラップとシンガロングを呼び起こした“THANK YOU FOR THE MUSIC”、トロピカルなサウンドが弾けた“Mighty Shine, Mighty Rhythm”とキラー・チューンを畳み掛け、光り輝くような祝祭空間を生み出した彼ら。大きな拍手に見送られてメンバーが去ったところでライブ終了かと思いきや……なんと雪ダルマみたいに膨れ上がったパステルカラーのエアリーなコスチュームをまとった蔡、森本、辻が登場! これは“Go Symphony!”のダンスPV用に作られた衣装らしく、“Go Symphony!”の音源に合わせてアクティブなダンスを披露して大団円。「バカバカしいダンスを最後に見ていただいてありがとうございます!」(蔡)と言って爽快な表情でステージを去る3人の姿に、明日へと踏み出すポジティブなパワーを全身で受け取ったような、華やかな幕切れだった。(齋藤美穂)
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