ユニコーン@千葉森のホール21

『UNICORN TOUR 2011 “ユニコーンがやって来る ZZZ…”』の、追加公演アリーナ・ツアーまで合わせて全42本、の中の28本目、千葉県松戸市森のホール21・2デイズの1日目。私、1本目の5月26日三郷市民会館を観ましたが(高橋智樹によるライブレポはこちら http://ro69.jp/live/detail/51822 )、もう、まったく違うことになっていました。曲目や、曲順や、内容や、構成や演出が、ではない。そのへんは基本的にそのまんま、違ったの1曲だけだったけど、さすが28本目だけあって、要は、「できあがっていた」わけです。それも、もう、すばらしく。
まあ、ユニコーンに限らず、こういう大規模なホール・ツアーをやる(というか「できる」)バンドというのは、1本目からライブが完成している、ということは、普通、まず、ない。何本かやっていくうちに、だんだん仕上がっていくものであって、だから1本目はNHKホールとか渋谷公会堂とかでスタートせず、三郷市民会館とか戸田市民会館とか横須賀芸術劇場とかから始める、ということになっているケースが多いわけですね。
っていうと、三郷や戸田や横須賀に失礼な気がしますが、あともうひとつ理由がある。そもそも、なんで三郷や戸田や横須賀からスタートするかというと、そのホールを2日押さえて、1日目はゲネプロ(照明とか演出までまるっきり本番どおりに行う通しリハーサル)をやって、2日目がツアーの1本目で、そこからスタート、ということをしているわけですね。NHKホールや渋谷公会堂を、ゲネプロのために押さえるというのは、お金とかの面で大変、というか、普通そんなことやんない。でも、東京から遠い地方でゲネプロと初日をやる、というのは、何かと不便。ということで、三郷や戸田や横須賀になるわけですが。って、別に誰かから教えてもらったわけじゃなくて、私が勝手にそう推測しているだけですが、すっかり話がそれたので、戻します。

というように、ただでさえ1本目は大変な上に、ユニコーンのような、「出てきて演奏して歌う」だけではない、ネタも仕掛けも演出もやたらめったらありまくるバンドの場合、ステージでやることがもういっぱいあって、それをちゃんとプラン通り全部やり通す、そして演奏や歌もやりとおす(あたりまえだけど)というので、最初の1,2本はもう、いっぱいいっぱいなわけです。事実、私、三郷で観た時、始まって、何曲かやって、1回目のMCのあたりですでに「これ、ステージの最後まで気力と体力、もつのかなあ」と、不安になりました。もちましたが、その不安、アンコールが終わる頃には、「これ、ツアーの最後までもつのかなあ」というものに変わっていました。
という不安が、この松戸1日目は、ほんと、なかった。アンコールまで合わせて、2時間40分以上2時間50分未満だったんだけど、その尺が本当にあっという間。それぞれの演出も、ネタも、役割も、すべてがまったく危うさのない、実に頼もしい完成度になっていて、かといって「こなしてる」みたいな感じに陥ってもいない。新鮮で真剣、でも余裕も感じる。素直に楽しく、おもしろく、そしてすばらしかった。
演奏と歌もそう。復活以降の曲たちも、解散以前の曲たちも、もう著しいクオリティ・アップがはたされている。ネタバレになるので曲名は書けないが、ユニコーンの場合、昔の曲をやる時も、シングルになった代表曲を連発するのではなく、アルバムの中の曲も普通にやる。このツアーもそうである。そのさまを観ていて思ったんだけど、考えたらそもそもユニコーンって、「シングル曲」と「それ以外の曲」のヒエラルキーがないバンドですね。バンド内やスタッフ内においてもないと思うし、ファンの間でも、シングル曲が人気あって、それ以外はあんまりなじんでいない、という傾向、ないと思う。ほかのバンドと比べると、異常なくらい、そうだと思う。だからなんだと言われると困るが、めずらしいなあ、という話です。もうツアーを観てセットリストを知っているみなさん、ためしに、シングル何曲あったか、数えてみてください。ね。めずらしいバンドでしょ。

そうだ。今回、レーベルから「『シャンブル』以降の曲名は書いてもいいです」という許可をもらっていたんだった。三郷の時はRO69くらいだったけど、その後いろんなメディアが取材やレポートにきていて、曲目一切書いてはいかん、というのでは報道的に何かとさしつかえる、みたいなことになったのではないか、と推測します。でも、全部書くのもなんなので、一部だけ。
えーと、『シャンブル』からは、まず、当然、“WAO!”はやりました。“HELLO”もやりました。『Z』からは、“裸の太陽”と“デジタルスープ”は当然、あと“Z LIFE”とか“さらばビッチ”とか、“ライジングボール”とか。これくらいにしときます。
にしても、どの曲も、置き位置がすばらしかった。何曲目にやるか、ってことです。どのタイミングで、何の次に(もしくは何の前に)、どのような演出と共にプレイされるか、というのが、本当にその曲が、その演奏が、それを歌っている人が一番輝くポイントに、もういちいちなっていた。さすがだなあ、と思いました。
あ、過去の曲たち、どのあたりをやったのか、については、今後も戒厳令です。私も、初日を観たあとに、「今から観るみなさん、ネットとかtwitterとかでうっかり知っちゃわないように細心の注意を払ってください」と、自分のブログで呼びかけましたが、この日もやはり、その思いを強くしました。
超満員ソールドアウトの会場内にいたお客さん、1:私のようにこのツアーを複数回観ている人/2:観るの初めてだけど、どんな曲やるかとかどんな演出があるかとかは知っている人/3:本当に何も知らずにまっさらで来ている人、の3タイプがいましたが、終始、最も楽しそうで、最も幸せそうだったのは、圧倒的に3のみなさんでした。泣いている人までいた。こっちまで、なんか幸せな気分になりました。


あと、この日のMCネタ、ふたつです。

・ご当地・松戸ネタ。とある曲をやっている途中で、OTにしゃべりを振られた阿部、「えー、俺の高校がありまして」。OT、曲中にもかかわらず「マジで? えっ、そうなの? 」と、何度もきき返す。阿部「南柏に住んでた」。山形出身だけど、高校からはこっちで、寮に入っていたそうです。で、いくつかローカルな地名を口にするが、お客さんの反応、今いち。次のMCの時、OT、「それでは、小学校時代を松戸ですごしたEBIさんです」と大嘘ぶっこいて振り、EBI、それにのっかってしゃべろうとするも、阿部「ちょっと待て。さっきしゃべってわかったけど、お客さん、このへんの人、いない!」と断言。「このへん人、手を挙げてー」と挙げさせ、「すっくなー!」と、メンバー一同びっくり。確かに少なかったです。まあ、松戸に限らず、東京近郊都市でのライブって、そういうもんですが。

・これも曲名は伏せますが、ある曲の途中で、阿部B、お客さんをいじりました。ひとり選んで、ステージ前まで呼んで、なんやかんやとからんだんだけど、このお客さんがすごかった。ユニコーンファンの平均年齢くらいの女性。阿部Bが何かやるたびに、もう、絶妙なボケで返すのだ。唖然としつつ、つっこむ阿部B、するとまたボケる彼女、というやりとりが、何度も続く。ステージの上も下も、もう、大笑いでした。
で、それが終わって、彼女が自席に戻ったところで、OTがひとこと。
「あいつ、素人じゃないぞ」
客席、また大笑い。阿部B、「プロはこうやって仕込みを使うんですよ!」と、負け惜しみを言っていました。(兵庫慎司)
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