New Acoustic Camp 2011 Pre. @渋谷 DUO MUSIC EXCHANGE

昨年秋、山梨県道志村のキャンプ場で2日間に渡って繰り広げられたイベント『New Acoustic Camp』が、今年も同所・ほぼ同じ日程で10/15~16に開催される。その早割先行チケット発売日となる6/10に、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND(以下OAU)のライブが行われるプレ・イベントが行われた。更に、OAUと並んでNAC2年連続出場決定のPermanents(田中和将&高野勲 from GRAPEVINE)も急遽参加し、金曜日の渋谷の夜にレイドバックした、ときに熱く燃え上がる時間を作り上げてくれたのであった。その模様を以下、レポートしていきたい。

まずはPermanentsのショウで幕を切って落としたこのイベント、エピフォン・カジノを抱えた田中が「普段はGRAPEVINEというバンドをやっているんですが、モジャモジャ2人で抜け出してきました。以後お見知り置きを」と軽く挨拶して、バイン最新作『真昼のストレンジランド』からのナンバー“真昼の子供たち”をプレイし始めた。広がりながらゆったりと迫り来る味わい深いギター・サウンドに歌が泳ぐ。田中は急遽参加が決まったステージでのアウェイ感を気にしているようだったが、一瞬にしてその世界観にオーディエンスを巻き込んでしまうところはさすがだ。「『New Acoustic Camp』なのにいきなりエレキ弾きやがって」と自らツッコみ、“Colors”からはアコギにスイッチ。前に出るでもないが効果的にサウンドの奥行きと余韻をもたらしてゆく高野の鍵盤も素晴らしい。「今年も皆さん来てくださいね。非常にY.R.I.ですから。ユ・ル・イ」と缶ビールを届けてもらう田中。“遠くの君へ”、や“それを魔法と呼ぶのなら”では熱く昂るボーカルも聴かせて、あっという間に終わってしまった全6曲だったけれど、後にはOAUのMARTINも絶賛していた見事なステージだった。バインのシングル表題曲とか全然やってないのに、まったくこの歌の掌握力は凄い。

ライブの間には、昨年のNACのダイジェスト映像もたっぷりと届けられる。そしてこの日は今秋の本開催に向けての出演者第1弾発表も行われていたので、ここに記しておきたい。OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDとPermanentsは前述のとおり。加えてCOMEBACK MY DAUGHTERS(acoustic set)、SION with Bun Matsuda、曽我部恵一、怒髪天(acoustic set)、畠山美由紀、Predawnの8組だ。怒髪天の写真と名前がスクリーンに映し出された瞬間、場内にどよめきが走ったのが可笑しかった。いや、確かにオーガニックでレイドバックした雰囲気の中では一見異色かも知れないけれど、カッコいいんだって。アコースティックな怒髪天は。今後さらに出演者の追加発表が行われてゆくそうなので、ぜひ継続的にオフィシャルHPのチェックを。

そしてステージにはOAUが登場。悲しげなバイオリンの旋律とMAKOTOの弓弾きベースがもつれ合うように届けられるインストから、MARTINがバイオリンをアコギにスイッチして「ウェルカム」と一言。彼がリード・ボーカルを務める最新ミニ・アルバム『夢の跡』からの1曲“Coffee Stain”が披露される。スティールパン含め、リズムというよりも色彩が溢れるようなパーカッションを加えてゆくKAKUEIのプレイが素晴らしい。強い郷愁を誘うメロディの“Gross Time~街の灯”でステージ上手から日本詞の歌を届けてくるのは、もちろんTOSHI-LOWだ。KAKUEIはここではノスタルジックな笛の裏メロを添えてゆく。ここからは一転、トリプル・ギターのジャングリーな絡み合いを熱いフォーク・テイストで聴かせる“Black and Blue Morning”に繋いで、会場内の温度をググッと引き上げてみせるのだった。

TOSHI-LOW:「『New Acoustic Camp』ね。やるんだけど。MARTINとか本当はインドアだからね。」
MARTIN:「去年、普通にジーンズとTシャツでいたら、朝寒くて。みんなちゃんと山の服着てて、カッコ良くて。」
TOSHI-LOW:「忘れもしない、2005年のフジロックにBRAHMANで出ることになって、MARTINが観たいって言うから呼んだんだけど、Tシャツとハーフパンツとビーサンで来て。周知の通りどしゃ降りだよね。ライブ観ないで、ステージに辿り着く前の橋の下でずっと震えてたっていう。山、ナメてるんだよ。」
MARTIN:「服、持ってないんです。今度はちゃんと買って行くよ!」

そんな絶妙の掛け合いの後には、“New Tale”から爆走モードを続行。ファンキーに弾け回るパーカッション、アイリッシュ・トラッド風の熱いメロディを奏でるバイオリン、テックス・メックス風のエネルギッシュなロール感、KOHKIの華麗なアルペジオと、OAUの無国籍にして濃密な音楽的エッセンスを次々に注ぎ込んでステージを進めてゆくのであった。「何、話そうかな。今朝、代々木公園を走ってたら、ギャル男の集団が撮影してて、それをホームレスの人たちが取り囲んで見てて、なんかこう、ダメな方のミクスチャー感にグワッと上がって(笑)。そんで帰って『朝ズバッ!』観てたら、南三陸のおばちゃんが、まだ水道が駄目だから川で洗濯してるんだけど、海を汚さないようにって洗剤つかわないんだよね。あれだけ多くのものを奪っていった海にさあ。なんか改めて、地球に優しくっていうことを考えさせられました」とTOSHI-LOWが語り、場内には拍手が巻き起こる。

「じゃあ初めてやる曲なんで、お手柔らかに」とTOSHI-LOWは“Pilgrimage”を歌い始めた。RONZIの強力な裏打ちビートで転がる、作品で聴くよりも遥かに大きなエネルギーに満ちた圧巻のパフォーマンスだ。そして新作の表題曲“夢の跡”へと繋ぎ、クライマックスを描き出してゆく。3.11以後、思いがけずまた新しい意味が与えられてしまった深いテーマの歌だが、OAUが新作でこういう率直な「歌」へと向かうアプローチを見せてくれたことは、今を生きる人々にとって大きな価値があると思う。アンコールは、KAKUEIとRONZI、そしてボンゴを抱えたTOSHI-LOWの3人によるパーカッション・ジャムの熱演に始まり、ララバイのように穏やかで優しく届けられる“otherwhere”まで、フル・セットの、実にドラマティックでサービス精神にも満ち溢れたステージを展開してくれたのであった。(小池宏和)
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