andymori @ SHIBUYA-AX

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4月末よりスタートし、新ドラマー岡山健二が加入して初となる本格的なワンマンツアーであると同時に、ニュー・アルバム『革命』のリリース直前のタイミングでもあった『andymori ワンマン“春の楽園ツアー”』、ツアーファイナルのSHIBUYA-AX公演。チケットはもちろんソールド・アウトである。はたしてライブでは新作から何曲プレイされるのか、ということも見所となった今夜のライブは、終わってみれば約2時間でトータル39曲、『革命』収録曲もすべて披露されるという大盤振る舞いのセットだったが、それ以上に『革命』におけるandymoriの到達点とバンドの新たなダイナミズムをありありと感じさせるすさまじい夜だった。

定刻10分押しでいつものように“The End of the World”をSEにステージにゆっくりとした足取りで登場した小山田壮平(Vo/G)、藤原寛(B)、岡山健二(Dr)の3人。今夜のオープニング・ナンバーは“グロリアス軽トラ”。小山田が歌詞を《渋谷の空の下》に変えて歌い上げると、まずフロアはこの渋谷でファイナルが行われたことを大歓声とハンドクラップで盛大に祝福する。3人は間髪入れずに“ベンガルトラとウィスキー”、“FOLLOW ME”、新作から“ユートピア”と立て続けにアッパー・チューンを連打し、満場のフロアをひとり残らず熱狂の渦へと巻き込んでいく。初期衝動でひた走る揺るぎないロックンロールの嵐。藤原と岡山が繰り出す前へ前へとつんのめっていくビート、しゃかりきなギター・ストローク、その上で軽快に言葉を走らせ、メロディとともに転げまわる小山田の歌。街の情景から不条理を拾い集めながら己の苛立ちを紡ぎ、外へと吐き出していくリリックも素晴らしい。3人のバンド・アンサンブルも盤石だ。

追いつけ追い越せの勢いで必死に彼らのロックンロールを追従していくオーディエンス。“クレイジークレーマー”、“モンゴロイドブルース”、“都会を走る猫”、曲間をほとんど空けずに駆け抜けていった。あっという間に10曲を超え、“サンセットクルージング”を終えた後には少し長めのMCに入る。「小さいころ何になりたかった?」という小山田の問いかけに、藤原は「3分間だけ画家」、岡山は「お父さんが警察官だったので警察官」、そして小山田は「小二の頃からミュージシャン」。(小二!?早ええーという驚きの声も)そしてミュージックステーションに出たB'zのように……と突如“愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない”を歌い出す小山田。これがまた普通の人がカラオケで陥りがちな声まねに……なるかと最初は思っていたが、さすがはボーカリスト。「いつもはもうちょっとうまいんだけどね」と照れ隠しをしつつ尻上がりに調子を上げて、意気揚々と1コーラス歌い切ってしまうのだった。なかなか似ていました。「そういうのになるか。スーパーマンになるか!」という彼のひと言から“スーパーマンになりたい”へ。続けざまに音源2割増しの高速ビートで“僕が白人だったら”、“僕がハクビシンだったら”を投下し、フロアのボルテージをさらに天井知らずに上げていく。

そして、このあたりを境に7月にリリースされる3rdアルバム『革命』の収録曲が多く披露されていった。“Peace”、“ボディーランゲージ”、“Weapons of mass destruction”、“無までの30分”、“Sunrise&Sunset”、そして“楽園”。それらのいくつかは昨年から披露されていたが、もうとにかく小山田の歌のキレっぷりは本当にすさまじいものがあった。溢れる衝動を疾走するサウンドと言葉にぶつけていたバンド初期を飛び越え、前作の“1984”、“16”、“オレンジトレイン”といった楽曲に通じる、衝動をぐっと内に閉じ込めたような圧倒的な歌の力。ロック・シンガーではなく、ロックンローラーが歌う、そんな歌だ。ステージ上の小山田は、自分の内に潜む狂気を必死に押さえ込むように身体を斜めに傾けながら、声をからして歌っている。そしてサウンドもそのあまりにも大きな歌を支えるだけの、歌をより遠くへ届けるだけの深さ、タフさを持ち合わせ、ストレートな広がりを見せている。日常の不条理を引き剥がすようなバンド・アンサンブルと世界の美しさを描き出すような小山田の歌の力が結実していった瞬間だった。

本編ラストに向かっては、パンキッシュに突き抜けていく“Transit in Thailand”や“すごい速さ”、フロア一面にピース・サインが舞った“CITY LIGHTS”といったファスト・ナンバーを投下していき、小山田が今回の震災を受けて書き下ろした“兄弟”も披露。曲前のMCもなく《くだらない歌を高らかに唄いたいんだ 何もない僕が君にできること》という歌の力だけでそのメッセージをオーディエンスに伝えていった。本編を締めくくるのは新作のタイトルでもある“革命”。《革命を起こすんだ 夢を見るんだと誰もが今夜祈るわけには》、《100回 1000回 10000回叫んでだって 伝わらない 届かない想いは/100日 1000日 10000日たった後で誰かの心に風を吹かせるんだ》。革命は世界をひっくり返すことではなく、そう強く思って生きていくことだ。観る者を釘付けにした圧巻のラストであった。

アンコールでは藤原が歌ったジョン・フルシアンテの“タイム・ゴーズ・バック”、岡山が歌った自作曲“永遠”、そして小山田が歌ったレディオヘッドの“クリープ”をそれぞれ披露。藤原、そして岡山が意外と輪郭のしっかりしたボーカルであったことには驚かされたが、クリープは原曲のコピーではなく、小山田は自分流にきちんと歌い方をアレンジし、楽曲をものにしており、とてもよかった。その後は、フロアの縦ノリ衝動を容赦なく加速させた“everything is my guitar”と“投げKISSをあげるよ”の2曲。さらにダブルアンコールで、まだ新作もリリースされていないこのタイミングでツアー中に作ったという新曲、“スタンド・バイ・ミー”のカバー、“Life is party”をプレイしてライブは大団円となった。

今夜の小山田の歌には、確かに衝動性を歌の力で押し広げたような凄味があったが、それは鬼気迫るということよりも、歌うことに命をささげるような、そんな普遍的な強さに満ちていた。自分がこの時代で歌う意味を確信したのかもしれない。正直このライブを観た後では、andymoriにとって三枚のアルバムとなる『革命』への渇望感、期待感はハンパじゃないものになった。リリース日は6月8日。アルバムを楽しみに待ちたいと思う。(古川純基)

セットリスト
1.グロリアス軽トラ
2.ベンガルトラとウィスキー
3.FOLLOW ME
4.ユートピア
5.クレイジークレーマー
6.モンゴロイドブルース
7.都会を走る猫
8.1984
9.青い空
10.ダンス
11.ビューティフルセレブレティー
12.ナツメグ
13.バグダッドのボディカウント
14.サンセットクルージング
15.スーパーマンになりたい
16.僕が白人だったら
17.僕がハクビシンだったら
18.Peace
19.ボディーランゲージ
20.Weapons of mass destruction
21.16
22.無までの30分
23.楽園
24. Transit in Thailand
25.CITY LIGHTS
26.すごい速さ
27.Sunrise&Sunset
28.兄弟
29.andyとrock
30.革命

ENCORE1
31.Time Goes Back
32.永遠
33.Creep
34.ハッピーエンド
35. everything is my guitar
36.投げKISSをあげるよ

ENCORE2
37.新曲
38.Stand by me
39.Life is party
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