神聖かまってちゃん @ 恵比寿リキッドルーム

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神聖かまってちゃん @ 恵比寿リキッドルーム
「恵比寿に来てヱビスビールでも飲みにきたのかよ! ヱビスビールでも飲みながら楽しめばいいじゃない! 僕もヱビスビール飲みたい! ビール飲めないけど」と矢継ぎ早に畳み掛けてから、味噌汁の入ったコップを口元に運ぶの子。そんな調子で始まったこの日のライブは、神聖かまってちゃん初の全国ツアーとなる、全8本のフリーライブ・ツアーの5本目、恵比寿リキッドルーム公演。ツアー2本目の、4月23日に行われた渋谷クアトロ公演の兵庫さんのレポ(http://ro69.jp/live/detail/50397)でも書かれているように、今のかまってちゃんは、というか今のの子は、恐らく過去最高に「オーディエンスに音楽を届ける」モードに入っている。その理由が、この日普段より多い全23曲を演奏し、オーディエンスを大熱狂させた神聖かまってちゃんを見て、少しわかったような気がした。

開演時間の19時ぴったりになって出てきたマネージャー・劔樹人が、ライブ中の簡単な諸注意をすませた後に、お馴染みのSEにのってメンバーが登場。少ししゃべった後にの子が「いい1日にしましょう! 他人任せ! お前達任せ!」とフロアを煽り、オーディエンスが「ウォーー!」となったところで曲に突入!…するかと思いきや、monoがこれ以上ない(ぐらい悪い)タイミングで「そんなこと言うなよ!」と流れをぶったぎって、ぐたっとした空気を引きずったまま1曲目“いくつになったら”へ。その後もメンバーとオーディエンスが一緒になってmonoの滑舌の悪さを何回もいじったり、マヤ文明における2012年の地球滅亡の話から「まやぎん」というちばぎんの新たな呼び名が生まれたり、それにキレたちばぎんにすかさずmonoが「キレ芸は俺だ」とキレたりと、1曲ごとにMC(しゃべり)を挟みながらも、ちょっと脱線したところでの子が次の曲にいこうとするので、いつもの倍ぐらいの速度でライブは進行。ライブ初披露の7曲目“22才の夏休み”まで一気に駆け抜ける。あまりにライブがサクサク進むので、「今日はなかなか良い感じなんじゃないですか?」と、普段は無軌道に暴走するメンバーに対してのストッパーの役目を果たすちばぎんも、安堵半分、戸惑い半分の様子である。

神聖かまってちゃん @ 恵比寿リキッドルーム
神聖かまってちゃん @ 恵比寿リキッドルーム
神聖かまってちゃん @ 恵比寿リキッドルーム
普段はみさこが言う「チャラララチャララ」というイントロ・コールをmonoが担当した(滑舌の関係で「ギャラララ」って聞こえました)特別バージョンの“ベイビーレイニーデイリー”を経て、の子の「ニャーニャーニャーニャー」というリフレインから披露された“ねこラジ”を過ぎる頃には、開始から比較的落ち着いた状態でライブに臨んでいたの子のテンションが徐々にヒートアップ。「俺は今、ティナ(『ファイナルファンタジーⅥ』のキャラクター)で言うトランス状態なんだよ!」と叫び、瞳孔全開で“ぺんてる”“Os-宇宙人”を歌い上げる。そして続く“ゆーれいみマン”の終盤でオーディエンスによる「ですよね!」コールがガチっと決まり、ここで完全にスイッチが入ったの子が激しくギターをかき鳴らし、フロアの狂騒のボルテージをググッと上昇させる。この勢いのまま一気に最高潮まで上り詰めていくかと思いきや、ここでmonoがステージを去り、トイレへ。いつもならこういう時、の子がイライラしたり、ぐだぐだしゃべり始めたりでライブの流れが停滞することが多かったのだが、この日はちょっと違った。の子が一刻も早く次の曲をやりたいという様子で、みさこのしゃべりを「あいついなくてもいいよー」と遮って、“笛吹き花ちゃん”を始めたのである。ここからの彼らのギアの上がりようには目を見張るものがあり、の子が痙攣しているかのように体を小刻み震わせながらギターを弾き倒したラスト直前の“聖天脱力”まで超絶テンションで突破していき、最後はの子が「もう1曲何かやろ」と言って“いかれたNEET”をプレイして、怒濤のライブ本編は終了。ちなみにここまでかかった時間は約2時間10分で、なんと1曲あたりの時間がMCを含めておよそ6分半強。いつもは6分ぐらい平気で話してたり、途中でしょっちゅうライブが中断したりする神聖かまってちゃんとしては、これ、信じられないぐらいハイペースなのである。

アンコールでは、“ちりとり”“ロックンロールは鳴り止まないっ”の2大アンセムでフロアをぶち上げてから、「終わらねえ所まで行くんだよ! 行くぞ! 行くぞー! アメリカに行きたいかー!」というの子のコールから“夕方のピアノ”をプレイ。の子がギターを放り投げ、ふらついた足取りで「死ねー!!」の大合唱を巻き起こしていく様は何度見ても異様で、異常で、圧巻である。そしてラストは“学校に行きたくない”を投下して、の子がフロアに飛び込み、もみくちゃになったところでライブは大団円を迎えた。

神聖かまってちゃん @ 恵比寿リキッドルーム
時にはメンバーのMCを遮ってまで、の子がより多くの曲をオーディエンスに届けようとするようになったその理由。それは、の子が自分の、死にたくなったり、消えたくなったりする気持ちを昇華させるために作った「生きるための歌」が、たくさんの人に受け入れられているという事実を、この1年間の活動を通して信じることができるようになったからなのだろう。きっと、の子の歌に自分を重ね、必死で生きている我々が彼に救われているように、の子も自分を求め、必要としてくれているオーディエンスの姿を見て、「生きててもいいんだよ」と、救われている部分があるんだと思う。かつては部屋の中だけだった自分の居場所が、今はこうして全国のあちこちに見つけられるようになって、嬉しくてたまらないんだと思う。終演後、他のメンバーがはけていった後も一人ステージに残り、「ありがとうございました!ありがとうございました!」と叫びながら、顔をくしゃくしゃにしながら何度も何度もお辞儀を繰り返していたの子の姿は、なんかちょっと泣けた。(前島耕)

[セットリスト]
1. いくつになったら
2. 白いたまご
3. 天使じゃ地上じゃちっそく死
4. 怒鳴るゆめ
5. 映画
6. レッツゴー武道館っ!☆
7. 22才の夏休み
8. ベイビーレイニーデイリー
9. さわやかな朝
10. ねこラジ
11. ぺんてる
12. Os-宇宙人
13. ゆーれいみマン
14. 笛吹き花ちゃん
15. コタツから眺める世界地図
16. 夜空の虫とどこまでも
17. 黒いたまご
18. 聖天脱力
19. いかれたNEET

アンコール
1. ちりとり
2. ロックンロールは鳴り止まないっ
3. 夕方のピアノ
4. 学校に行きたくない
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