Plastic Tree @ ZEPP TOKYO

Plastic Tree @ ZEPP TOKYO
Plastic Tree @ ZEPP TOKYO
Plastic Tree @ ZEPP TOKYO
Plastic Tree @ ZEPP TOKYO
さまざまな紆余曲折を経て、ついにこの日がやってきた。Plastic Treeのライブハウスツアー『アンモナイト(小)』のファイナル公演。震災の影響で延期になった公演がいくつか残されているものの、4月6日リリースのニュー・アルバム『アンモナイト』を巡る旅は、とりあえず今夜で大きな区切りを迎える。思えば、ここに至るまでの道のりは予想以上に長かった。有村竜太朗(Vo/G)の緊急入院、昨年末のライブ公演中止、レコーディングの中断――と、さまざまな困難を伴う旅となったからだ。だからこそ、『アンモナイト』がバンドにとってエポックメイキングなものになったことも事実。全国の小さなハコをくまなくまわったツアーを経て、彼らはいかに『アンモナイト』を総括し、今後の活動につなげるのか。その行方が知りたくて、今夜Zepp
Tokyoに集った満場のオーディエンスの間には、開演前から期待と不安が入り混じる不思議な緊張感が立ち込めていた。

18:03。ゆるやかな暗転とともにSEが鳴り響き、ステージ後方の半円形のビジョンにアルバムのアートワークが映し出される。そしてメンバーがゆっくりと登場し、1曲目“Thirteenth Friday”へ。アルバムでもオープニングを飾っているシューゲイザー直系のサイケデリックな轟音が、フロアを陶酔の世界へと導いていく。囁くように吐き出される有村の歌声、ナカヤマアキラ(G)が掻き鳴らす清冽なギターリフ、長谷川正(B)と佐藤ケンケン(Dr)による抑揚のあるビートの溶け合うような一体感が絶妙だ。一方“ムーンライト----”では、エレクトロなサウンドに乗せてステージ上ににょきにょきと生えた無数のスティック・ライトが点滅し、近未来的でインダストリアルなムードを演出。シンプル&ソリッドな爆裂ナンバー“メルト”では、ギターを置いてハンドマイクにもちかえた有村が衣装をなびかせて優雅に舞い、ヘッドバンキングの波がフロアを覆いつくした。

この時点ですさまじい熱気が立ち込めているものの、本領発揮はここから。「やあやあ」「やあやあやあ」というお約束の掛け合いに続いて、アキラのギターが唸りを上げる“不純物”へ突入する。フロアを包むハンドクラップ。しかし今夜の聴きどころは、なんと言っても新作『アンモナイト』の楽曲群だった。冷めたドライブ感が心地いい“アイラヴュー・ソー”、深海に潜むような幻惑的なムードが描かれた“雪月花”、シンプルで解放的な王道ロック・チューン“バンビ”――。そのどれもがディープな世界観をもちながら、外へ外へと開かれていることに驚かされる。「踊る準備はできてますか?」として放たれた“デュエット”に至っては、キャッチーなメロディ、ダンサブルなビート、そしてダイナミックな爆発力をもったアウトロが、かつてないほど生々しく響いていた。

なお、今夜のライブはニコニコ動画で生配信されているということで、配信中の映像がビジョンに映し出される一幕も。「みんなで88(ニコ動用語でパチパチ:拍手を意味します)してください」「みんなどこから見てるのー?」とPC前の視聴者に問いかけては、瞬時に返ってくるコメントに無邪気にはしゃぐ有村の姿がなんとも微笑ましい。さらに中盤には、「アンモナイト(大)」と題した全国ツアーを今秋行うこと、そのファイナルを両国国技館で行うことも発表。フロアは大歓声に包まれた。

そしてライブは終盤へ。“みらいいろ”のつんのめったビートと透明なギター・サウンドが流星のごとく駆け抜ける。この曲が物語るように、Plastic Treeの楽曲は鋭利でダークな疾走感をもちながら、決して攻撃的ではないし、ネガティブでもない。どうしようもない孤独や閉塞感をうたいながら、その裏側には未来に手をかける壮大なイマジネーションが渦巻いている。まるで巨大な暗闇がとめどなく広がりつづける宇宙空間のような神秘性と包容力とでも言おうか。それが、絶望の淵に落ちてしまいそうになるリスナーに大きな安らぎと希望を与えていることは確かだ。満場のオイ・コールに包まれた“メランコリック”も、カオティックなサウンドがループする“リプレイ”も、やさしくあたたかく響いていたのはそのためだろう。そしてなんと言ってもすばらしかったのが、本編ラストの“さびしんぼう”“ブルーバック”。光輝く柔らかなサウンド・スケープは、確かな決意に満ちた彼らの未来を穏やかに描き出しているようで、とても感慨深かったのだ。

アンコールではメンバーそれぞれが今回のツアーの手ごたえを口にして、“spooky”“エンジェルダスト”などをプレイ。有村の入院により中止となっていた『年末公演 ~ゆくプラ くるプラ~』の振替公演の開催や、ファイナルを初の両国国技館(10月8日)で迎える秋のツアー『アンモナイト(大)』も発表され、有村は「今後もたくさんライブやります。ただいまー!」という言葉を残してステージを去った。(齋藤美穂)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする