リトル・バーリー @ 恵比寿リキッドルーム

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リトル・バーリー @ 恵比寿リキッドルーム
昨年12月に代官山UNITで一夜限りのスペシャル・ギグを敢行したリトル・バーリーが、わずか4ヶ月のショートタームで再来日を果たした。これ自体がすごくレアな事態なわけだが、来日キャンセルが相次ぐ昨今の状況を踏まえて考えてみれば、さらにいかに凄いことかがおわかりいただけるんじゃないかと思う。来日前から日本のファンに向けた応援メッセージを発し続けていた彼らだけに、今回のツアーに対する意気込みも半端じゃなかったんじゃないだろうか。事実、この日の彼らは過去の幾多の来日と比較してもベストと言い切れるパフォーマンスを見せてくれた。

ベストのパフォーマンスと言っても、彼らが演ることの「質」自体には変化はない。むしろ、変わらぬ質=ロックンロールの究極の原則論をいかに守り、磨きあげ、そして昇華していくか自体がリトル・バーリーというバンドの動機であって、奇をてらった突拍子もない演出は今回も皆無だった。そして、最新作『キング・オブ・ザ・ウェーヴス』からの楽曲を中心とした今回のセットリストは、『キング・オブ・ザ・ウェーヴス』というアルバムが彼らにとってロックンロールの理想に最も近づいた作品であることを改めて証明する内容だったと思う。前回来日のUNIT公演がロックンロールの土台を今一度掘り起こし、固め直したロウ・キーなショウだったとしたら、今回の来日は堅固な土台の上でロックンロールの原則論の「正解」がフルパワーでブン回される万能感に痺れる体験だったのだ。
リトル・バーリー @ 恵比寿リキッドルーム
リトル・バーリー @ 恵比寿リキッドルーム
王道のエイトビートにセミアコギターのビンテージな音色が絡まり合う60Sなロックンロール、サイケデリックなコーラスとド迫力のファンクを掛け合わせたスペクタクル・ナンバー、ポール・ウェラーやオアシスのギャラガー兄弟に溺愛されているのもうなずけるR&Bやモッズ・ビート、そしてレッド・ツェッペリンみたいなグルーヴ・ナンバー、アルペジオとシンガロングのシンプルなメロディで聞かせるナンバーと、リトル・バーリーが『キング・オブ・ザ・ウェーヴス』で編み出したロックンロールの極みは実に多種多様だ。その多種多様がショウの流れの中でいくつかのセクションを作り、それぞれのセクションの中できっちりピーク・ポイントを作っていく。それを、わずか3人のプレイヤーでやりきってしまうのがリトル・バーリーというバンドである。

あと、これはリトル・バーリーのステージを観るたびに感じることなのだが、今のUKロック・シーンにおいてここまでキャラとスキルとカリスマの立ったギター・プレイヤーはバーリーくらいしかいないんじゃないか。「バーリー印」と称すべきギター・リフといい、律儀に各ナンバーに挿入されるギター・ソロといい、バンドの「一要素」としてどんどんそのロイヤリティが低くなりつつある昨今のUKギター・バンドにとってのギターの地位が、このバンド内においては今なお確実に最上位に置かれている。ロックンロールの原則論に則ればそれが「正解」なのだという、確信とプライドのようなものすら感じる花形としてのギター。しかも『キング・オブ・ザ・ウェーヴス』以降の彼らはバーリーのギターに引っ張られるようにバンド自体のキャラとスキルとカリスマも増強されてきているので、ほんと完璧なのである。
リトル・バーリー @ 恵比寿リキッドルーム
特に素晴らしかったのはジャムっぽい導入でラフにスタートしながら、とんでもないヘヴィ・グルーヴへと一気に駆け上っていくテンションの高低差のスリルに満ちていた後半のセクションだろうか。「次の曲は今日ここに集まってくれたファンの皆に、そして日本の皆に捧げます」とバーリーが言って始まった“Love You”はちょっと感涙ものだった。ステージ上の彼らの気迫とそれを受け取るフロアの私達の気迫がイコールで繋がれた瞬間で、演奏が終わってしばらく経っても割れんばかりの拍手と歓声が鳴りやむことはなかった。(粉川しの)
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