トゥー・ドア・シネマ・クラブ@渋谷 duo music exchange

トゥー・ドア・シネマ・クラブ@渋谷 duo music exchange
トゥー・ドア・シネマ・クラブ@渋谷 duo music exchange
トゥー・ドア・シネマ・クラブ@渋谷 duo music exchange
MCでアレックスも言っていたけれど、イベント来日を挟みつつも単独のプロパー来日公演としては今回が初となったトゥー・ドア・シネマ・クラブ。渋谷duo music exchangeでの2日公演の即ソールドアウトを受けて追加公演も出たが、これまたあっという間に売り切れてしまった。正直、驚いた。彼らは実力・人気共に本国UKではずば抜けた新人バンドであるのは間違いないけれども、今回の単独公演のソールドアウトはそんな本国での状況がここ日本にもタイムラグ無しで伝わっている何よりの証拠なわけで、UKロック勢が苦しめられ続けている「日英格差」をものともせずにブレイクスルーしたトゥー・ドア・シネマ・クラブには、やっぱり快挙という言葉が一番しっくりくる。そう言えば、先日のフォールズの赤坂BLITZ公演もソールドアウトだった。トゥー・ドア・シネマ・クラブとフォールズという、昨年それぞれに傑作アルバムをリリースした両者がそれに見合った結果を日本でも出していると確信できたふたつの光景。そう、なんだか久々にUKロックに明るい日差しが差し込んだかのような一週間だったのだ。

改めてこのトゥー・ドア・シネマ・クラブについて紹介するならば、彼らは北アイルランド出身、昨年『ツーリスト・ヒストリー』でデビューを果たした3ピース・バンドである。前回来日のブリティッシュ・アンセムズでパフォーマンスを初めて観た時点では如何にもナードで文系知性派のアート・ロックをやるバンドだなぁ……という感想の域を出なかったのだが、今回の彼らは大変貌を遂げていた。『ツーリスト・ヒストリー』の成功とそれに伴うツアーでパフォーマンスの筋力が一気に鍛え上げられた部分もあるのだろう。ギュワンギュワンと場内を震わせる大ノイズと共に始まった1曲目“Cigarettes In The Theatre”の時点で既に、「キツネ・メゾン出身」というスノッブな香りはもはやお飾りでしかなくて、彼らの中でロック・バンドとしての矜持が格段に飛躍している様を目の当たりにする。

2曲目で早くもキラー・チューン“Undercover Martyn”がドロップされる。アルバム音源からは想像できないくらいアンセミックなプレイで、ドラムスの正確なアタックとくるくると表情を変えながら色鮮やかなリフを繰り出すギターが出色だ。その「新生トゥー・ドア・シネマ・クラブ」と呼んでも過言ではない彼らの熱いプレイに呼応するように、この日はオーディエンスの熱も半端なかった。マイクを向けられての大合唱も、絶え間なく渦巻くフロアのモッシュも、そしてステージ上の彼らに乞われるまでもなくコール&レスポンス(はたまた輪唱)を決める阿吽の呼吸も、むちゃくちゃアルバムを聴き込んでこの場に臨んでいないとあり得ないレベル。わずか1年の間にこんなにもロイヤルなファンに支持されるバンドへと成長していたとは!
トゥー・ドア・シネマ・クラブ@渋谷 duo music exchange
トゥー・ドア・シネマ・クラブ@渋谷 duo music exchange
この夜のパフォーマンスは、トゥー・ドア・シネマ・クラブと凡百のギター・ロック・バンドを決定的に分ける差がはっきりと示された内容だったと思う。まず何より、このバンドのギタリスト、サムは才能がありすぎる!コード弾きはほぼ封印し、忙しない単音弾きで幾重にも幾多にもキラーなリフとメロディを編み出していくその様は、昨今のUKバンドの、特にポスト・パンク・リバイバルと称されるバンド達のモノトーンな反復ギターとは全く異なる個性を感じさせるもの。喩えるならニューウェイブ色をより強くしたジョニー・マー、みたいなプレイなのだ。アレックスのハイトーンなボーカルとメロディはほぼUKクラシックと呼んでも過言ではないが、そこにサムのギターが加わることによって彼らの音楽は一気にモダナイズされていく。“Do You Want It All?”や“Something Good Can Work”で特に感じる緩急スイッチングの妙も、この二人の個性のせめぎ合いから生まれているんじゃないだろうか。

そしてもうひとつのトゥー・ドア・シネマ・クラブの美点とは、弾き出される音がとことんオープンマインドなことじゃないだろうか。屈折・内省しなくても彼らの実験精神はしぼむことがないし、ナードな自分達を自虐して開き直るという作業を経なくとも、彼らはジョイフルな音を真正面から愛し、鳴らすことができている。オーディエンスと瞬く間に繋がっていく輪の歌“This Is The Life”といい、メロディがもろスミスなのにとことん陽性な“You’re Not Stubborn”といい、彼らの音楽には喩えるならヴァンパイア・ウィークエンド等US新世代にも通じる突き抜けたポジティビティを感じるのだ。これって、英国の若手にはなかなかお目にかかれない個性だったりもする。

“What You Know”では遂にダイバーまで出現する盛り上がりの沸点を記録。そして、アンコール含めても1時間弱というショート・セットが終わった後には、汗だくのTシャツを脱ぎ捨てこの日買ったバンドTへと着替えるファンも続出した。何から何まで熱い、冬の一日だった。(粉川しの)

<セットリスト>
CIGARETTES
UNDERCOVER MARTYN
HANDS OFF MY CASH
DOU YOU WANT IT ALL
SOMETHING GOOD
HAND SHAKE
THIS IS THE LIFE
KIDS
YOU'RE NOT STUBBORN
COSTUME PARTY
WHAT YOU KNOW
EAT TAHT UP

COME BACK HOME
I CAN TALK
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