阿部真央 @ ZEPP TOKYO

阿部真央 @ ZEPP TOKYO
阿部真央 @ ZEPP TOKYO
阿部真央 @ ZEPP TOKYO
阿部真央 @ ZEPP TOKYO - pic by 緒方秀美pic by 緒方秀美
鮮やかなブルーのライトに包まれた会場に、バンドメンバーによる轟音のセッションが響き渡る。しばらくの後、阿部真央が登場。フロアから耳をつんざくような大歓声が上がる。初っぱなから、タオルを豪快に振り回しながら歌を届ける彼女によって、会場の温度がグングン上がっていくのが手に取るようにわかる。地元大分を皮切りに、全国16箇所を巡る「阿部真央らいぶ NO.2」、12箇所目のZEPP TOKYOでの公演が始まった。現在ツアーのまっただ中のため詳細なセットリストを記載することができないのだが、本当に全曲ハイライトと言ってしまっても過言のないような、喜び、悲しみ、嬉しい気持ち、切ない気持ちなど、阿部の持っている感情の全てが爆発したような、圧巻のライブだった。

本ツアー終了後には声帯の治療のため休養に入ることが発表されていて、決して万全とは言えない状態の中敢行された今日のこのライブは、序盤から最高潮の盛り上がりを見せ、阿部の甘く瑞々しい女子らしさが弾ける“I wanna see you”では大シンガロングが巻き起こり、疾走感溢れる“ふりぃ”では会場中の拳が一斉に突き上がる。アコースティックギターをかき鳴らしながら、ZEPP TOKYOを埋め尽くす満員のオーディエンスを自由自在に操っていく阿部真央の姿からは、「ツアーを絶対に最後まで走りきる」という強い気持ちがひしひしと伝わってくる。その後も幅広い音域を持つダイナミックなボーカルで、ロックシンガーとしての恐ろしいまでのポテンシャルの高さを見せつけながら、フロアの熱気を留まることなく上昇させていく。

また、彼女の内からわき起こる激情や悲哀をそのまま歌ったかのようなパーソナルで切ない楽曲群は、のどの不調をもろともせずに、今日も相変わらずの鋭さでオーディエンスに突き刺さっていた。弾き語り形式で披露された“デッドライン”や、“morning”というような孤独感漂う楽曲からは彼女のリアルな切迫感が痛いぐらい伝わってきて、どうしようもなく胸が締めつけられたし、中でも高校時代の友人の恋愛の話を基に作ったという“側にいて”という未発表曲は、阿部の切なさの極みのような楽曲だった。《側にいて》、《行かないで もう終わったのに》というような、伝えられなかった大切な言葉を歌う憂いを帯びた阿部のボーカルがやけに耳に残った。

中盤を経て、少ししんみりとした空気を拭いさるかのようにアップチューンを連射して、フロアに再び熱が戻ってくる。そして、ひたすらに前向きなキラーチューン“伝えたいこと”のプレイでもって、オーディエンスのテンションはここにきて一気に最高点に。歌のあちこちでシンガロングが起こっている。そして、終わると同時に大歓声。その後も阿部は“loving DARLING”ではハンドマイクで踊りながら、「みんなの声が聞きたい!!」とコールアンドレスポンスをしたり、「みんながこんなに歌ってくれて、踊ってくれて、歌ってて良かったと思う瞬間です!」と感謝の言葉を口にしてから“いつの日も”を歌ったり、オーディエンスと一緒に作り上げるライブの空間を愛おしむように、噛み締めるように、最後まで力強くZEPP TOKYOを揺らし続けていた。

今日のライブの名場面を上げたらそれこそ多すぎてキリが無いのだけれども、あえていくつか挙げるとするならば、まずは“ロンリー”をプレイした場面だろう。歌の所々でシンガロングが起こったこの日の“ロンリー”は、当然だけどもう二度と聴くことのできないこの会場だけの特別な“ロンリー”に仕上がっていて、この日のオーディエンスと阿部真央の交歓を通して生まれた特別な美しさがあったように思う。

また、「本当にいっぱい歌ってくれて…こうやって、みんなに会えたことを嬉しく思います!みんなとあたしを会わせてくれたきっかけになった、デビューのきっかけになった曲をやります」と言って、実の母である「えりこさん」のことを歌った“母の唄”をプレイした場面も抜群に素晴らしかった。彼女の口をついて出てくる母への愛の言葉を聴いているうちに、極々パーソナルな歌詞のはずなのになんだか自分のことのように思えてきてしまい、目の奥に熱いものがこみあげてきた。

最後に、前段でも度々述べてきた通り、彼女は現在声帯に不調を抱えており、本ツアー終了後にはその治療のために休養に入ることが決まっている。確かに、MCなどで時折声をかすれさせているのを聴く限り、彼女の声帯はあまり良い調子ではないのだろう。しかし彼女は今日のライブを通して一度も辛そうな様子は見せなかったし、歌も相変わらずの声量で迫力に満ちていた。そして何よりも、彼女は今日のライブ中にそのことについて何も言わなかったのである。本当に強い人だ。そして、圧倒的にプロフェッショナルだ。年末のCOUNTDOWN JAPAN10/11で彼女を見ることができなくなってしまったのは残念でならないが、万全な状態になって再び我々の前に姿を見せてくれる時を、いちリスナーとして楽しみに待っています。きっと、凄いことになって帰ってくるんだろうな。(前島耕)
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