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    ACIDMAN @ 幕張メッセ

    ACIDMAN @ 幕張メッセ - ACIDMANACIDMAN
    圧巻のライブだった。全国15公演……6月のZepp Tokyo公演で幕を開け、ここ幕張メッセでファイナルを迎えるという大きな規模で行なわれた、ACIDMANのツアー『LIFE』。そのラストを飾るに相応しい、壮大なロックの風景。18:37に客電が落ちて、“LIFE(the beginning)”のSEが流れ始め、セッションを経ていきなり“REMIND”のエモーション大噴火サウンドが降り注いでから終演まで2時間半、幕張メッセを支配していたのはこの上なくソリッドに研ぎ澄まされたロック・ミュージックそのものだった。

    たとえば、映像と一体になった“ストロマトライト”での、アンダーワールドとジミー・イート・ワールドが間違って同じステージで演奏してるみたいなハイパーなサウンドの衝撃。たとえば“街の輪郭”の、ジャジーな音の営みが大きな流れに姿を変えてそのまま銀河へ流れ出していくようなスケール感。たとえば、アコースティック編成(大木:アコギ、サトマ:ベース、一悟:カホン)でシンプルに演奏された“リピート”“赤橙”の、音のDNA単位で組み込まれたような響きの豊かさ。それらすべてが、ACIDMANというバンドのポテンシャルの高さを証明していた。

    とはいえ。脳細胞の1つ1つがバキーンと覚醒していくような緊迫感に満ちた“彩-SAI-(前編)”“彩-SAI-(後編)”のストイックな流れの後に、一悟(Dr)の「ツアーの各地でTシャツのセンスをバカにされた話」や、「アンケートで『真剣にドラムを叩いている姿が面白いです』って書かれてたけど、俺はただACIDMANの音楽を真剣に届けようとしてるだけなんです! 俺の真剣を受け止めてくれるかー!」といった苦笑もののMCが、バンドが鳴らしている音楽のシビアさとパースが合ってたかどうかはやや疑問が残るところではある。

    何より、大木のコンディションが万全でなかった。数日前から続いた大木の喉の不調は、1曲進むごとにはっきりとわかるようになっていった。終盤の必殺の流れであるはずの“金色のカペラ”“world symphony”は思うように声が出ていなくて、思わずアンコールで「悔しいです」とこぼしてオーディエンスが凍りつく場面もあったほどだ。

    しかし、そんな大木を気遣うような「俺は楽しかったです」という一悟のMCが、張り詰めた空気をほぐしてアンコールの“シンプルストーリー”“アイソトープ”“YOUR SONG”の熱狂へとフロアを繋いでいった。真摯に音楽に向き合うからこそ幾度となく解散の危機を迎え、それでも3人で乗り越えてきたACIDMAN。いい音楽共同体だな、ではなく、いいバンドだな、と改めて思った。

    「あと何曲作れるか、あと何枚アルバムを作れるか、あと何回ライブができるか……そんなことを考えて作ったアルバムです」と、アルバム『LIFE』について語った大木。ラスト2曲“UNFOLD”“TO THE WORLD\'S END”の、自己の内面が焼けつくほど見つめた果てに生み出されたとしか思えない凄絶なサウンドスケープでもって、自分たちの音楽のスケール感をいかんなくアピールしたアクトであったにもかかわらず、「またリベンジさせてください」と大木は言った。さらに広大なロックの世界を見せてくれるに違いない、彼らは――そんな期待を後に残した一夜だった。(高橋智樹)

    SE LIFE(the beginning)
    1.REMIND
    2.ストロマトライト
    3.swayed
    4.Ride the wave
    5.River
    6.式日
    7.スロウレイン
    8.街の輪郭
    9.リピート
    10.赤橙
    11.WALK
    12.room NO.138(inst)
    13.彩-SAI-(前編)
    14.彩-SAI-(後編)
    15.オールドサンセット
    16.FREE STAR
    17.金色のカペラ
    18.world symphony
    19.ある証明
    20.UNFOLD
    21.TO THE WORLD’S END

    アンコール
    EC.1.シンプルストーリー
    EC.2.アイソトープ
    EC.3.Your Song
    SE LIFE(the ending)
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