サニーデイ・サービス@九段会館

サニーデイ・サービス@九段会館
サニーデイ・サービス@九段会館 - pics by 坂本 正郁pics by 坂本 正郁
9月3日恵比寿リキッドルームからスタートし(ライブレポートはここ→http://ro69.jp/live/detail/39965)、1ヵ月に3~4本のペースでゆっくりと続いてきた、再結成以降初めての、10年ぶりのニュー・アルバム『本日は晴天なり』のリリース・ツアーの最終日。5月にドラムの丸山晴茂が病気でリタイアするまでは、3人だけ、サポートなしでライブをやっていたが、このツアーの直前、彼が復帰した8月19日HMV渋谷の「おつかれサマーフェス」あたりから、曽我部・田中・丸山に加え、サポートでギター新井仁・キーボード高野勲、という、かつての黄金メンバーになりました。で、このツアーも、その5人で回りました。
先にセットリスト、書いておきます。

1 東京
2 恋におちたら
3 恋人たち
4 somewhere in my heart
5 あじさい
6 恋はいつも
7 サイン・オン
8 旅の手帖
9 忘れてしまおう
10 真っ赤な太陽
11 青春狂走曲
12 PINK MOON
13 ここで逢いましょう
14 星を見たかい?
15 時計をとめて夜待てば
16 24時のブルース
17 夢見るようなくちびるに
18 白い恋人
19 NOW
20 若者たち
21 胸いっぱい
22 ふたつのハート
23 サマー・ソルジャー

アンコール
24 月光荘

アンコール2
25 コーヒーと恋愛

でした。初日の恵比寿リキッドルームと、ほぼ同じ。違うのは、えーと、当日メモったのと見比べると、リキッドの時は前半に「虹の午後に」もやったり、「夢見るようなくちびるに」が「星を見たかい?」の次にきていたり、1回目のアンコールが2曲で、「恋人の部屋」と「スロウライダー」だったり、ぐらいかな。
そろそろROSE RECORDSのサイトに、アップされていると思うので、気になった方は見比べてみてください。
ここです。→ http://d.hatena.ne.jp/sunny_day_service/

リキッドの時もそうだったけど、今回もしゃべりの時間はほぼなし。淡々と、立て続けに曲をプレイしていくステージ。前半~中盤で曽我部がしゃべったのは、ニューアルバムの曲である3曲目「恋人たち」をやる前に、さらっとメンバー紹介した時のみ。それ以降、5曲目と6曲目の間、11曲目と12曲目の間、13曲目と14曲目の間、16曲目と17曲目の間に、それぞれブレイクがあったんだけど、照明の落ちた暗いステージで、黙ったままギターやベースのチューニングをするだけでした。
唯一、17曲目の「白い恋人」が終わったところでだけ、MCあり。「サニーデイ・サービスです。10年ぶりのツアーをやっておりまして、今日が最後です。丸山くんが死なずにすんで、よかったなと。田中くんの婚活は、うまくいかなくて、まだ続きのストーリーがあるようですが……」とか言って、笑いをとってました。この田中の婚活ネタ、全国各地で言ってきたみたいな雰囲気でした。本人は「婚活してません」って抵抗してましたが。
なお、田中のご両親、地元香川から観に来ていて、終演後に楽屋にいらっしゃいました。それを知った曽我部、「親の前で婚活とか言うの、やめた方がよかったかなあ」とか気にしてました。心底からは気にしてないと思いますが。

で。めちゃめちゃよいライブだった。さすがに1本目に比べるとしっとりと地に足が着いた演奏だったし、九段会館という「古きよき昭和のホール」みたいなシチュエーションもずっぱまりだったし。心配された晴茂くんの健康状態、というか体力、というか「最後まで叩き切れるの?」という問題も、まあところどころハシったりモタったりはあるものの、それは健康な頃もそうだったわけで、というか「そのハシりやモタりによって特殊なグルーヴを生むとっかえの効かない男」が、そもそも彼なわけで、そういう意味で、いい感じでした。

あと、なんか、同窓会のような懐かしさはもちろんあるんだけど、なんか、それだけじゃないような、でもやっぱり同窓会じゃないとはいえないような、だけどそれ以上の何かがあるような、そんな微妙で不思議なムードに、会場が包まれていて、それもなんか、いい感じだった。
ニューアルバムの曲をバカバカやるツアーではなくて、ご覧の通り、過去の名曲連発のベスト・アルバムみたいな選曲だ。そもそも「新しいファンにっていうよりも、昔のファンに会いたくて再結成した」みたいなことを、曽我部はジャパンのインタビューで言っていた。あと、サニーデイはそもそも自分の中の青春的な要素を出すアウトプットであって、今の現実を生きているいち生活者としてのアウトプットは、曽我部恵一バンドだ、というようなことも、言っていたと思う。
つまり、今の現実と切り離された、でも確かに自分の中に存在したし、ある意味今でも存在している何か。それをバンドとファンで確認するための再結成であり、リリースであり、ツアーだった。と言っていいはずなのに、どうもそれでは収まらない感じがあるのだ。70%くらいはそのとおりなんだけど、でも、懐かしんで終わり、だけじゃない。心地いい。気持ちいい。ノスタルジック。でも「浸っておしまい」じゃない、何か。それが何なのか、僕もあんまりうまく説明できない。なんで。当事者だからだと思う。

その感じが、客席にも表れていた。みんな手放しでこの場を楽しむ、という感じのライブではなかった、ということです。
だって、誰も立たないのだ。で、異様に静かなのだ。開演前、客電が落ちてBGMが止まり、SEもなくメンバーが出てきたのをバーッて拍手で迎えたあと、すぐに曲に入らずチューニングとかしている5人を、みんな、座ったまま、黙ったまま、観ている。曲が始まる。終わる。ダーッて拍手が沸く。また曲が始まる。シーンと静かになる。で、前述のチューニングタイムにも、「曽我部さーん」とか「田中さーん」とか声をかけたりする人は誰もおらず、シーンとしたまま、そのチューニングするさまを見守っている。
これ、最後までこのまま、誰も立たずに、静かなまま終わるのかなあ。と思って観ていたんだけど、そのまま終わりました。10曲目くらいからは、だんだん会場があったまっていって、曲が終わった時の拍手が大きくなっていったけど、それでも最後まで、基本的には静かな、落ち着いた、淡々としたまま終わったライブでした。
頭から最後まで全員座りっぱなし。っていうの、アコースティック編成じゃないサニーデイのライブとしては、全キャリアを通しても、もしかしたら初めてかもしれない。昔、日比谷野音の時も、渋谷公会堂の時も、あたりまえにみんな立ってたし。
そういう意味では、ちょっと異様っちゃあ異様だった。盛り上がらなかった、という言い方もできるかもしれない。でもその静かな感じ、僕はなんか、すごくよかったです。
みんな俺と同じような、気持ちいいしうれしいけど、どっか落ち着かない気持ちなんだなあ、とか思った。違うかもしれませんが。

曽我部、前述のMCの時、「ここでやるのは98年ぶり……違う、98年以来だ(笑)。でも、みんな(←メンバーもお客さんも、の意)、変わんないな、と思って。高野くんはね、ちょっと白髪が増えたけど。(このタイミングで、客席から小さい子供の声がしたのを受けて)子供が生まれた人とかもいるだろうし……っていうか、俺もそうだけど、でも、基本的に変わんないな、って思います」というようなことを言っていた。
なんか、それがうれしいような、でも「それでいいのか?」ってニュアンスもちょっと入っているような、そんな言い方でした。そうだなあ、と思いました。(兵庫慎司)
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