22-20s@渋谷クラブクアトロ

22-20s@渋谷クラブクアトロ - pic by TEPPEIpic by TEPPEI
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オープニング・ナンバーは新作からの“Talk To Me”、その最初の一音が鳴った瞬間に「ああ、これこそが22-20sだった!」と胸が熱くなってしまった。キン!と鼓膜を突き刺すようなギター・ストローク、辺りの空気がピリッと締まるようなタイトで無駄のないグルーヴ。ブルーズを志してバンドを結成した少年達が、自分達のパッションをブルーズに託したらどうにもこうにも蒼く、固く、鋭く、ブルーズの緩さや苦みを通り越してどこまでも潔癖に轟いてしまった――そんな彼らのデビュー時の衝撃が鮮明に蘇ってくるオープニングだったのだ。

デビュー・アルバム『22-20s』から実に6年ぶり、久々の、本当に久々の新作『SHAKE,SHIVER AND MOAN』を引っ提げての初単独ツアーとなった今回、何より嬉しかったのは大人になった彼らの中にデビュー時の原点のストイシズムが今なお燃え続けているのを確認できたことだった。ブルーズという音楽スタイルを若いバンドが志す時、それは得てして「ジャムっぽい」という名の演出の放棄、「フリーフォーム」という名の玄人ウケ内輪ウケに転びがちなものになる。しかし22‐20Sのブルーズは今も昔も思いっきり醒めていて、生き急いでいて、そしてキレがある。長きに亙る沈黙の年月の中で、変節することなくそれを保ち続けることが、若い彼らにとっていかに困難なことであったかは想像に難くない。

もちろん彼らの音楽的レンジの広がり、技術的レベルアップは5年前とは比べ物にならない域に達していた。喩えるなら直線コースの加速はもちろん、昔ならコースアウトしてアンサンブルが大破していたようなヘアピンカーブも華麗なハンドルさばきで走り切るような、硬軟自在のプレイを随所で見せてくれた。特に前半戦のクライマックス・ナンバーだった新曲“Bitter Pill”などは「緊張感を湛えた緩さ」という語義矛盾からゆっくりスタートし、徐々に白熱していくという段階的な演出で、これはかつての彼らには出来なかった芸当だ。

初期の名曲“I’m The One”を披露したところで「5年間待っていてくれて本当にありがとう、戻ってこれてうれしいよ」とマーティン。そしてデビュー・シングル“Such A Fool”へ。この彼らのデビュー・シングルがリリースされたのは2003年のことだ。あれから7年、未曾有のUKギター・ロック・ブームが起こった2000年代半ばに彼らは解散し、そして完膚なきまでにブームが終わった現2010年のUKロック・シーンに再び舞い戻って来たということになる。言うなれば22‐20Sは、時代の美味しいところを享受しないで去り、享受しなかったからこそこの冬の時代に戻ってこれたのだと思う。微塵も輝きを失っていない“Such A Fool”を聴きながら改めて彼らの帰還の奇跡を噛みしめずにはいられなかった。そんな“Such A Fool”で懐古ムードに浸る間もなく、“Shake,Shiver And Moan”“Latest Heartbreak”と彼らのアップトゥデイトな名曲が立て続けに連打される。

今年のフジ出演時と比べると、予想以上に旧作からのナンバーを惜しげも無くプレイしていく総括的なセットリストだったと言っていい。フジのステージが新作『SHAKE,SHIVER AND MOAN』の文字通り試運転ライブだったとしたら、今夜のステージは『22-20s』のナンバーを技術的に『SHAKE,SHIVER AND MOAN』のレベルに引き上げ、同時に『SHAKE,SHIVER AND MOAN』のナンバーに『22‐20S』当時の青臭いパッションをも付加していく、そんな一挙両得の内容だったように思う。“Why Don’t You To For Me”のような懐かしのナンバーがリリース当時からは想像ができないほどの重層的なアレンジでギャンギャンとクライマックスを牽引し、アンコール1曲目で演った“Let It Go”のような新曲が余裕たっぷりなアルバムでの響きとは裏腹につんのめってアンセミックに弾けていく。

若くして解散→再結成を経験した稀有なバンド、22-20s。彼らの帰還は若かりし頃の自分達を微塵も否定することなく、過去を引き受けて再びここに立つ、そんな覚悟とプライドを感じさせるものとなったのだ。(粉川しの)
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