ザ・ヴァーブス @ 渋谷C.C.Lemonホール

ザ・ヴァーブス @ 渋谷C.C.Lemonホール
ザ・ヴァーブス @ 渋谷C.C.Lemonホール
ザ・ヴァーブス @ 渋谷C.C.Lemonホール
ザ・ヴァーブス @ 渋谷C.C.Lemonホール
ザ・ヴァーブス @ 渋谷C.C.Lemonホール
ザ・ヴァーブス @ 渋谷C.C.Lemonホール
2006年には「ザ・ヴァーブス+奥田民生」名義で、奥田民生を「サポート・ギタリスト」(!)に迎えてジャパン・ツアーを回り、そのファイナル・アクトとしてCOUNTDOWN JAPAN 06/07のステージにも立ったザ・ヴァーブス。あれから4年。東京2公演/名古屋/大阪/広島/京都(追加公演)の5都市・計6公演をサーキットするザ・ヴァーブスのツアー・タイトルに、「+奥田民生」の文字はない。それはロック・ファンなら誰もがご存知の通り、民生が「参加していない」からでは当然なく、「ザ・ヴァーブスの正式メンバーになってしまった」からだ。前代未聞の1人生レコーディング・ツアー『ひとりカンタビレ』にユニコーンでの夏フェス行脚に、と例年以上に突っ走ってきた民生、さらにエンジン全開である。

ザ・ヴァーブス。エリック・クラプトンにキース・リチャーズにドン・ヘイリーにジョン・メイヤーにザ・プリテンダーズにニール・ヤングにブルース・スプリングスティーンに……といった大物ミュージシャンとコラボ経験を持つ世界の至宝的ドラマーであり、民生とはお互いの作品に参加し合う間柄であるスティーヴ・ジョーダン。スティーヴの妻にしてボーカル・ギター=ミーガン・ヴォス。穏やかな学校の先生のような辣腕長身ベーシスト=ピノ・パラディーノ。そして新加入のロックンロール・ギタリスト=奥田民生fromジャパン。オリジナルだろうがカバー曲だろうが真っ直ぐにその核心を掴み取って、スタンダードで滋味あふれるロックンロールとして響かせてしまう唯一無二の音楽集団、正式に4人編成で生まれ変わってから初めての日本ツアーいよいよ開幕!

そのジャパン・ツアー全公演のオープニング・アクトを務めるのが、ロックンロール新世代の急先鋒4人組=OKAMOTO'S! 念のため早めに会場入り、と思って開演予定時刻=19時の15分くらい前に着席したらすぐにOKAMOTO'Sが出てきて“マダラ”を爆音でぶちかまし始めてびっくりしたが、その熱演ぶりが「びっくり」をすぐに痺れるような感激に変えてくれる。「張り切って前座をやらしてもらいますんで、よろしく!」と叫び上げながら、熱く燃え盛る歌声をホールいっぱいに放射していくオカモトショウ(Vo)。ギブソンSGのカッティングでザクザクと空気を切り裂くオカモトコウキ(G)。ハイ・ポジションにプレシジョンを構えた直立不動の姿勢で超絶フレーズをぶん回すハマ・オカモト(B)。そして、オカズのたんびにシンバルを蹴っ飛ばす勢いで左脚を高く蹴り上げながら爆裂フレーズを叩きまくるオカモトレイジ(Dr)。15分強のアクトの中にザ・フー“キッズ・アー・オールライト”カバーも“Telephone Telephone”“Run Run Run”の疾走感も盛り込み、それこそ19歳とか20歳とかの若きエナジーで曇天の渋谷の夜を真っ赤に塗り替えるような渾身のアクト!

OKAMOTO'Sの出番が終わり、彼らの機材をハケた後には、ザ・ヴァーブスの機材……に加え、両袖に1つずつ1人がけソファと、ステージ中央に2人がけソファがセッティングされている。そして、その機材を取り囲むように、あたかもリビング・ルームのようなスタンド・ライトが4つ。ここは非日常のステージじゃない。誰もがリラックスできる「部屋」なんだよ。とでも言いたげなセッティングを見ただけでも、思わずニヤリとさせられる。

そして19:20頃、民生、ピノ、ミーガン、スティーヴの4人が登場! 一瞬呼吸を合わせたか?程度の間合いを挟んで、すぐに新作アルバム『トリップ』の幕開けを飾る“ワールズ・ア・メッス”の快活なビートが走り出す。小さめのバスドラから信じられないほどコシの強いキックを繰り出してC.C.Lemonホールの空気をびりびり震わせ、キック/スネア/2タム/ハイハット/1シンバルという極限までシンプルなセットでカラフル&グルーヴィーなリズムを叩き出していくスティーヴ。そのパワフルなビートを、ひとつまみのハスキーさと凛とした透明感あふれる歌声で乗りこなしていくミーガン。ほとんど椅子に座ったままとは思えないほどトリッキーで躍動しまくりのベース・ラインを繰り出すピノ。そんな鉄壁のアンサンブルに、時にブルージーだったりロックンロールだったりサイケだったりする色合いを加えていく民生のギター。スティーヴ「ドーモー!」、民生「どもね! あちぃ!」程度の軽いMCを挟みながら、“アイム・ユア・チョコレート”“ヘイ、ヘイ、ウーハッ”といった楽曲群にクラプトン“イージー・ナウ”などカバー曲もたっぷり盛り込みながらロックンロール街道をかっ飛ばしていく。ステージ背後のスクリーンに映し出される空港や街中のラフな映像も、シンプルにして世界基準なロックンロールだけを携えて旅するザ・ヴァーブスの『トリップ』な感覚をさらにかき立ててくれるものだった。

中盤、「誰かこっち来ない?」的なスティーヴの呼びかけに挙手した前列の女子客2名を、あのど真ん中の2人がけソファにご招待。ほとんどホーム・パーティーのノリでロキシー・ミュージック“ラヴ・イズ・ザ・ドラッグ”のカバーを演奏。民生、ソロを弾きながら2人ににじり寄る。もう、数十cmのところまでにじり寄って大サービス! さらに……今回の一連の公演は来日ツアーは見方によっては「ギタリスト=民生の母国・日本での凱旋(?)ライブ」でもあるのでーーという体で、Vo・ミーガンの休憩中、民生がボーカルをとって自分の曲をやるコーナーも設けられている。何をやったかは各会場でのお楽しみ、ということにさせていただくが、民生/スティーヴ/ピノという「ザ・ヴァーブス:フォーメーション2」的なトリオ編成を得て、民生のブルージーなギターがそれこそピンク・フロイド級のサイケデリック感を帯びて響いていたのには驚かされた。やはり「母国」だけあって、満席のオーディエンスの中でも民生ファン率はかなり高いらしいことが、その民生コーナーのホットなリアクションからも窺える。が、だからといってこの日の高揚感が民生ファンの熱気一色だったわけでもなく、磨き抜かれた宝石のようなロックの音の1つ1つを全身で堪能し共有する心地好いヴァイブに、会場全体が包まれていた。

『トリップ』の“ワーク・イット・アウト”、バディ・ホリーの“ハートビート”カバーで本編を締め括った4人。アンコールでは「スティーヴ・ジョーダンさん!」(民生)、「タミオ・オクダサン!」(スティーヴ)とジャパニーズ・スタイル(?)で軽やかにメンバー紹介し合った後、ニーナ・シモン“悲しき願い”にDC5“グラッド・オール・オーヴァー”とカバー2連発でじっくり大団円。音が栄養になって染み込んだようなあったかい高揚感が、会場を出た後も身体中にみなぎっていた。そして今夜は東京2本目:SHIBUYA-AX公演!(高橋智樹)
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