AA=@新木場スタジオコースト

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上田剛士のソロプロジェクトAA=が6月にリリースした新作『#2』をひっさげて全国10箇所のライブハウスを回る「TOUR#2」が、今日ここ新木場スタジオコーストでファイナルを迎える。サポートメンバーのスケジュールとの兼ね合いか、少し期間が空いてのツアースタートとなったものの、夏の間に全国各地のロックフェスで披露され、オーディエンスとの交感を通して磨き上げられてきた楽曲は、リリース当初よりも一段と眩い輝きを放っていたように思う。それが全身で感じ取る事ができたライブだった。

突然だがライブレポートを始める前に、この『#2』という作品について簡単に触れておきたい。というのも、既にご存知の方も多いかと思うが、アルバムのコンセプチュアルな世界観を、音楽と照明などの舞台装置を使って表現しようとするのがAA=のライブであり、その価値をより味わい深いものするためには、このアルバムに描かれた世界の背景を知っておく必要があるのである。以下は公式HPに記載された『#2』のストーリーを筆者なりに解釈したもの。参考までにどうぞ。

架空の世界、インダストリアル。そこではBPMasterと呼ばれる絶対的な存在によって、政治、経済、道徳、教育、その全てが彼にとって都合の良いように管理された社会が構築されている。そこで「疑問を持つ」という能力を奪われた市民は、それが本当は管理されているものと知らずに、かりそめの自由が与えられた世界を自らの意思で生きている。そんな中、インダストリアルの世界システムを、Bass Junkeesというウイルスを使って破壊しようとするmeVIR(自分+ウイルスの造語)というテロリストの存在が噂されるようになる。自らの絶対性を脅かす危険性があるとして、BPMasterはmeVIRを探し始めた……。

以上がおおまかなストーリーラインであり、ここでのmeVIRこそが、TAKESHI率いるAA=なのである。つまりこの『#2』は、人々の自由を制限する絶対的な支配者に対するAA=の闘争を描いたアルバムなのではないだろうか。その事実を裏付けるように、今日のセットリストも、全体の流れで一つの物語を構築する、一編の小説のような構成となっている。

ゲストであるマキシマム ザ ホルモンのアクトを終えて、これでもかというほどの熱気が充満する会場に、ベートーヴェンの交響曲第九番、歓喜の歌が流れ出し、フロアから歓声が上がる。そして、次第に混ざり出したノイズが歓喜の歌を埋め尽くしきった瞬間、『#2』に収録されている“GREED…”のPVで使用している豚のマスクを着けたTAKESHIら4人がステージに姿を現した。一筋のレーザーライトがフロアを駆け巡る中、オープニングナンバーの“prologue {2+2=4}”がフロアに響き渡り、その音の圧倒的な描写力と説得力が、我々を一瞬にしてAA=の世界に引きずり込んでいく。

続いて絶対者によって管理された世界に《でも何かが違う…》と疑問を投げかける楽曲“2010 DIGItoTALism”をプレイ。無機質な電子音と筋肉質なハードコアパンクが臨界点付近でせめぎあう重厚で深みのある轟音が、完璧なはずのインダストリアルの世界にヒビを入れていく。ライブが始まった瞬間から頂点に達していたはずのフロアのテンションは留まる事を知らず更に上昇を続け、“FREEDOM”がプレイされる頃には、会場はまるで自由を求める過激派による革命前夜の不法集会のような、カオティックな様相を呈してきた。

その後も“GREED…”、“meVIR”と、アッパーな楽曲を息つく間も無くたたみかけてフロアの狂騒に拍車をかけた後、ややレイドバック気味の“4 leaf clover”をプレイ。この、今までになくAA=がポップな方向に振り切れた開放感のある楽曲でフロアに涼やかな風が送り込まれ、開始から一心不乱に踊り続けてきたオーディエンスがようやくここでクールダウン。しかしその直後にプレイされた“BPMaster”で、務めるTAKA(BACK DROP BOMB)のエフェクトがかかったボーカルが、緊急事態を告げるサイレンのようにけたたましく鳴り響き、張りつめた緊張感が再びフロアを包み込む。

終盤になってもその勢いは衰えず、“F”では、《F××K law、F××K words、F××K pay》と中指を立てながら絶唱するTAKAに煽動されてフロア中の中指が突き立てられる。立て続けに前作『#1』からのキラーチューン“I HATE HUMAN”を発射してダイバー達を面白いぐらい量産し、最後は見事に管理世界を“FREEZE”させて、堂々の勝利宣言。異常なまでに完成度の高いAA=のコンセプチュアルな世界観を鮮烈に描ききり、約一時間でひとまず本編は終了。

アンコールを待つオーディエンスの心からのハンドクラップに迎えられ、再びステージに上がったメンバーは、「俺たちはAA=!」と、TAKESHIによるAA=というプロジェクトの出発点とも言うべき“ALL ANIMALS EQUAL”をプレイ。ラストの“PEACE!!!”では、フロアが汗まみれのピースサインで埋め尽くされ、『#2』リリース直後から待ち望んでいた「TOUR#2」は、いよいよここで大団円。メンバーが挨拶を終え、続々とステージを引き上げていく中、一人になってもTAKESHIは最後まで感謝の意を込めてフロアのあちこちを指差し続けていた。

今でこそ、バンドサウンドと電子音との共存は当たり前だが、それが当たり前でなかった時代から今日までひたすらその融合が生み出すマジックを追求し続けてきた男、それがTAKESHIだ。そんなだから彼だから鳴らすことのできる轟音は、年月を重ねるごとにその精度と破壊力を増していき、凡百のエレクトロニック・パンクを一笑に付す、迫力と確信に満ちているのだ。(前島耕)


[セットリスト]
1. prologue {2+2=4}
2. 2010 DIGItoTALism
3. INDUSTRIAL
4. BASS JUNKEES
5. FREEDOM
6. GREED...
7. meVIR
8. ROOTS
9. 4 leaf clover
10. BPMaster
11. TEKNOT
12. F
13. I HATE HUMAN
14. FREEZE

アンコール
1. ALL ANIMALS ARE EQUAL
2. LOSER
3. PEACE!!!
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