LOUD PARK 10(1日目)@さいたまスーパーアリーナ

「ラウド・パーク! 低いな声が!」と総合MC担当のサッシャも思わず苦笑するほどの、(見るからに男多めの)メタル・ファンの野太い咆哮がこだまするさいたまスーパーアリーナ! 2006年から毎年開催されているメタル/ラウド・ロック系フェス=「LOUD PARK」も今年で5回目を数えるが、10月中旬というのに軽く汗ばむようなこんな陽気に見舞われたのは初めてだ。例年であれば気合いを入れて革ジャンで参加していたであろう、年期の入ったメタル・ファンのおじ……お兄さんたちも、今日は漆黒のバンドTで見参。一昨年ここさいたまスーパーアリーナで開催した時と同様、メイン・フロアに「BIG ROCK STAGE」(向かって右側)「ULTIMATE STAGE」(左側)の2ステージが設置され、休憩時間5分をはさんで左右のステージに交互に、新鋭から古豪まで世界中の轟音猛者が次々に登場するのである。

この日は何と言っても、トリを飾ったKORN! 白塗りの顔のマンキー&フィールディが登場した瞬間、そしてジョナサンがゆったりと登場した時の、怒号のような大歓声! この世のネガティヴィティとヘヴィネスのすべてを己の中から絞り出すように身体を震わせ大咆哮を響かせるジョナサン。鋼鉄の7弦ギター・サウンドで空気を切り裂きつつ、“カミング・アンダン”のダークに蠢くフレーズの中にクイーン“ウィー・ウィル・ロック・ユー”を忍ばせたりと変幻自在の魔術師ぶりを見せるマンキー。衝撃波のようなスラップ・ベースでサウンドの緊迫感を不穏に煽り立てていくフィールディ。新たにラインナップに加わったドラマー=レイも、スティックぶん回しツーバス連打しながら、シュアなプレイで存在感を発揮していた。新作『コーンIII:リメンバー・フー・ユー・アー』の曲は紹介程度にとどめ、“ライト・ナウ”“フリーク・オン・ア・リーシュ”“ブラインド”など必殺曲で押しまくる。度重なるメンバー・チェンジもバンド自身の迷走も置き去りにして怒濤の推進力を獲得したような、まさに完全復活のステージ。「ヘッドライナー=KORN」をどこかシニカルに見ていた真性メタル・ファンたちもがっつり巻き込んでの、堂々の大団円だった。

トリ前には、昨年JUDAS PRIESTとして登場したロブ・ハルフォードが自らのバンド=HALFORDを率いて登場! マーシャル・アンプの壁から押し寄せる重戦車サウンドに、さらにブルータルなエネルギーを加えていく、海賊の頭領のようなロブの姿は、新作タイトルじゃないがまさに『メイド・オブ・メタル』。神々しくすらある。“ボールズ・トゥ・ザ・ウォール”で高らかな大合唱を巻き起こしたのはドイツの古豪アクセプト! メンバーが掲げた『ACCEPT JAPAN TOUR 86』のフラッグに、日本とメタルの絆の深さを改めて感じたし、アクトが終わってサッシャのMCが始まっても♪オーオオーのオーディエンス大合唱が続いている図には感激で震えがきた。全員50代ながら堂々のラットンロールっぷりを示したRATTもそうだが、「曲と技を磨き続けること」「触れた者すべてを驚愕させる表現であること」を自らのDNAの中にプログラムしているメタルが、「古典芸能」の枠にとどまらず、何十年経っても「今」を揺さぶる表現であり続け、フォロワーを生み続け、こうして日本でも支持を集めているのは、必然といえばあまりに必然である……のだが。毎年ながら、このフェスを待ち続けたファンの熱気に直に触れると、やはり驚きと感激を禁じ得ない。

メタル界屈指の美形ボーカル=ジェイムスを擁するLA発の新星HOLY GRAILをはじめ、シンフォニックで荘厳なメタルの音像を描き出したENGEL、神経を串刺しにするような鋭角サウンドと異形メイクと二胡が入り交じる台湾発のCHTHONIC……と、世界中の鋼鉄轟音の粋を集めたようなステージが展開されていく。レオナルド・ダ・ヴィンチみたいな高貴な髭面を震わせながら驚愕のデス声をあふれさせるのはスウェーデン発AMON AMARTHのVo・ヨハン。この日はメロディック・スピード・メタル勢代表的な立ち位置だったドイツのEDGUY・トビアスも、パンテラ&ダメージプランの遺伝子を引き継ぐHELLYEAH・チャドも、オーディエンスの熱狂に応えて「来年も日本に来るぜ!」と意気揚々と宣誓していたのが印象的だった。そんな中、この日唯一の日本人アクトとして世界の強豪と渡り合ったのはDIR EN GREY! LOUD PARK初回(06年)参加時から圧倒的にパワーと深度を増したサウンド。スクリームにグロウルに読経のような発声まで駆使しながら、狂気と背徳の世界への扉を開いていくVo・京。“SA BIR”からラストの“羅刹国”まで、V系もハードコアも踏み越えて進化するディルの「今」を強烈に印象づける内容だった。

そして……もう1つのハイライトは、SLIPKNOTのコリィ/ジェイムズを擁するストーン・サワー。1曲ごとに沸き上がる熱い歓声に、一昨年この会場でSLIPKNOTとして登場した時のーー急逝したベーシスト=ポールと最後に日本を訪れた際のことを思い出したのか、何度も感極まったような表情を見せ「ラウド・パーク、サイコー!」と叫ぶコリィ。そんな自身の感傷をも振り切るように「コノ、キョクハ、メイド・オブ・スカー! トベー!!」と喉も裂けよと絶叫し、ソリッド&強靭な音とともに巨大な空間をヘヴィに、シリアス、そしてダイナミックに揺さぶっていく姿が、会場中の感動を集めていた。

会場の巨大ヴィジョンには、開演前や転換中、上記のSLIPKNOT・ポールをはじめ、ロニー・ジェイムス・ディオ、AVENGED SEVENFOLDのザ・レヴ、GOTTHARDのスティーヴ・リー……これまでLOUD PARKに足跡を残してきたアーティストの追悼映像が流れていた。それでもメタルは、ヘヴィ・ロックは生き続け、愛され続けていく……そのことを深く感じさせてくれた1日目だった。

2日目もここ、さいたまスーパーアリーナからレポートします。(高橋智樹)
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