Nothing's Carved In Stone@リキッドルーム恵比寿

Nothing's Carved In Stone@リキッドルーム恵比寿
Nothing's Carved In Stone@リキッドルーム恵比寿 - pic by RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)pic by RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)
すごいロック体験だった。カラフルなアレンジでカラフルなサウンドを作るアーティストはたくさんいるが、ダイナミックで強靭な4人のサウンドを極限まで鍛えながら高純度なロックのプリズムを築き上げ、聴く者1人1人の感情を目映いくらい色鮮やかに映し出してみせる……という離れ業ができるバンドはそういない。そして、9月25日に赤坂BLITZでファイナル公演を迎えた全国ツアー『Sands of Time Tour』――――の追加公演として行われたリキッドルーム公演でのNothing's Carved In Stoneの音は、まさにそういうものだった。少しでも己のロックに迷いや衒いがある者には決して響かせることのできないタフな音が、リキッドルームのフロアを満たすオーディエンスの熱気とでっかい渦を巻きながら、怒濤の高揚感を生み出している。最高だ。

赤黒く噴き上がる“Chaotic Imagination”のサウンドと呼応する、フロアの「オイ! オイ!」大合唱! 緻密な5拍子のビートとアルペジオのフレーズが壮大なアンサンブルへ編み上げられていく“Words That Bind Us”の爽快感! 鋭利なギターとエモーショナルなメロディが熱く響き合う“Sands of Time”や、ハード・エッジなポスト・ロック・ディスコとでも呼ぶべき“November 15th”の音とビートで、フロアまるごと大ジャンプへと導いてみせる圧倒的な4人のエネルギー! 斬新なリフとビートでまったく新たなNCISヴァージョンに生まれ変わったTHE YELLOW MONKEY“バラ色の日々”! 幾何学的なリフやフレーズに爆発力を与えていく生形真一のギターのエッジ感。熱くなればなるほど凛とした強さがあふれ出す村松拓の歌声。しなやかな猛獣のような豪快なアクションから剛軟自在のラインを生み出す日向秀和のベース。そして、5拍子もドラムンベース的リズム・パターンも生き生きと躍動させていく大喜多崇規のドラム……その音と歌に籠められた魂が、どこまでもクリアでタイトなロックとして放射されていく。ポスト・ロックもエモも踏み越えながらアルバム『Sands of Time』で提示した世界は、対バン/ワンマン含め21本のツアーを経て、いよいよ強烈な輝度と衝撃度を獲得しつつある。

とはいえ。エネルギー満ちあふれっ放しのステージ上の4人には、オーディエンスに緊張を強いるようなストイシズムや切迫感は皆無。メンバー同士が普通にオフマイクで会話し、フロアからの「拓!」とか「ひなっち!」とかいう歓声に至って普通に応え、「うぃー!」「うぃー!」というメンバー間の掛け声がそのままオーディエンスとのコール&レスポンスへと発展し……と、むしろ終始リラックス・ムードだったと言ってもいいくらいだ。それが逆に、このロックの結晶のような壮絶なサウンドすら「自然体」として血肉化してしまっている4人の「今」を感じさせて、思わず胸が熱くなった。

「今日もたくさん来てくれてありがとうございます! 追加やろうか迷ったんだけど……やってよかった!」と、フロアを見回してストレートに感謝を表明していたのはウブ。一方、オニィ(大喜多)は「ほんとにありがとうございます! 今日初めて観てくれたっていう人もね、今日っていう時間を共有してくれるっていうのがね、すごい嬉しいです」と和み系MC……かと思いきや、「そうやって、すぐほっこりするのがいけないんだよ! 最前の人もさ、その後ろもさ、残りの力を振り絞ってほしい!」と激烈アジテーションで、会場を一気にクライマックスへと煽り立てる! そして、“Moving In Slow-Motion”“Around The Clock”“Isolation”の激烈ナンバー3連打でリキッドルーム中の衝動大爆発! “Palm”の雄大なスケール感を残して、4人はステージを後にした。

「終わっちゃうね! 楽しかったね!」と、アンコールで再びオン・ステージしたウブ。すかさず「(ツアー)もう1周!」とフロアから声がかかる。「もう1周はできねえよ!」と、ツアーの充実感を噛み締めながら笑う4人。最後は“The Swim”“Same Circle”の祝砲のような開放感でもって大団円!……客電がつき、会場スタッフから終演の声がかかってもなお、さらなるアンコールを求める声が高らかに鳴り響いていた。(高橋智樹)
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