クラムボン@よみうりランド オープンシアターEAST

クラムボン@よみうりランド オープンシアターEAST - pic by yoshiharu ota(A/M)pic by yoshiharu ota(A/M)
「調子はどう、よみうりー! みんなの顔が眩しすぎるぜ!」(ミト) 「でかい!」(郁子) 「広い!」(ミト)と開幕早々「!」だらけなテンションのクラムボンの3人に、椅子席&芝生席合わせて約8000人に及ぶオーディエンスも割れんばかりの大歓声で応える! 毎年恒例で日比谷野音ライブを開催している彼らだが、最新アルバム『2010』を引っ提げて全国37公演(追加公演含め)に及ぶツアーを成功させたばかりの3人がこの日登場したのは、その日比谷野音をひと回り大きくしたぐらいのすり鉢状の椅子席ステージの外側にさらに芝生の自由席が広がる広大な会場……よみうりランド内の野外イベント・ステージ=オープンシアターEASTの舞台だ。会場を一歩出れば、もちろんそこは遊園地。ステージと客席を取り囲むようにジェットコースターと展望ゴンドラと観覧車がそびえ立ち、開演時刻頃にはちょうど観覧車の真ん中から夕陽が差し込むという、実にファンタジックなシチュエーションなのである。しかし―――何よりマジカルでファンタジックだったのは、原田郁子/ミト/伊藤大助の3人が鳴らす楽曲とサウンドそのものだった。

たった3人の恐ろしくハイ・クオリティな歌とプレイでもって、ポップの極みのような快楽から尖鋭的な煌めきまで構築してみせる稀代のピアノ・トリオ、クラムボン。だが、“シカゴ”“はなれ ばなれ”でキック・オフした序盤から、3人のモードはどこまでもラフで躍動的で、「とにかく1音1音を隅から隅まで楽しみきる」という音楽家としての野生と衝動に満ちたものだった。そして、だからこそ、「くっそー、始めっから楽しいぞ!」というミトの言葉に象徴されるこの日の彼らのヴァイブは、かつてないほどに開放的で、眩しくて、あったかかった。

“Merry go round!”では遊園地という舞台装置や会場を覆い尽くすシャボン玉と乱反射するようなポップなサウンドを放射し、“波よせて”では8000人を大合唱へと導く。お酒が似合うジャジーな新曲“黄昏”ではたまらずオーディエンスをビール・コーナーへと向かわせ、演奏中にもかかわらず屋台に大行列を作ってしまい、「続々と買いに行ってんね」(ミト) 「買いに行きすぎだろー!」(郁子)と思わずメンバーも苦笑するハメになっていたが、それだってクラムボンという磁場が持つ抗い難い力を証明するものだ。開演前の影アナウンスを担当した大助を「影アナ大センセイ!」(ミト)といじって「影アナ、噛んだ上に爆笑してたからね(笑)」と思わず大助が苦笑していたり、「よみうりランドに、響かせましょう!」(ミト)と満を持してスタートした“波よせて”のイントロでミトのベースの音が出ないトラブルを「ベースが出ない! ♪フゥワ、フゥワ」(郁子) 「……よみうりランドに、響かせましょう!」(ミト) 「それ聞いた!」(郁子) 「デジャブ?(笑)」(ミト)とネタにしていたり、“便箋歌”後半で郁子が「さて、」と静かに歌う大事なところでミトがこけそうになって「あいかわらずダメダメなひとね。」と歌詞の通りに突っ込まれたりした微笑ましい場面の1つ1つまでが、最高の舞台装置として機能してしまう……そんなヴァイブが、この日の会場には濃密に満ちあふれていた。

そんなピースフルな空気感が、鋭利なミトのギター・サウンドでギャリーンと流れ込んだ“ハレルヤ”で一転。続く“ララバイ サラバイ”とともに、夕闇に包まれた会場をハッとするような静謐と戦慄で目映く塗り替え、“バイタルサイン”で加速してカオティックな狂騒感を描き出す! そしてーーポップ・ソング・サイド・オブ・クラムボンの結晶=“サラウンド”の大合唱! “NOW!!!(2010 ver.)”で飛び出す銀テープ! 「2010年、この景色を、僕らは一生忘れません! 祝福の曲をやります!」というミトのでっかい感謝の言葉とともに突入した“KANADE Dance”のゴスペルのような凛とした音世界!……と、まさにジェットコースターさながらのスリリングな展開で本編を締め括ってみせた3人。さらにアンコールでは、80sニューウェーブから抜け出たようなカラフルなコスチュームで再登場してエレクトロ・ダンス・ナンバー=“SUPER☆STAR”を演奏する3人が、離陸寸前のUFOよろしく台ごとせり上がる! ただでさえ破格に高性能な音楽を鳴らすクラムボンが、まさに全身ワンダーランド状態で8000人すべてを魅了しにかかってくるのである。楽しくないわけがない。

「ツアーTシャツに着替えてる間に、知らない人が演奏しに来てたと思うんだけど(笑)」(ミト)ととぼけつつ、Wアンコールで再登場した3人。「いやあ、今年はいい夏です!」という3人の歓喜そのままに伸びやかに鳴り響いた“Re-残暑”。最後はミトのアコギ&伊藤のタンバリンに合わせて“Folklore”。去り行く時間を惜しむように8000人が歌い、手を振る……「音楽はどこまで自由で、開放的で、楽しくて、神秘的で、感動的になれるか?」というクラムボンの音楽探究心そのもののような約2時間半。魔法のような時間は、あっという間に終わった。手を取り合い、客席に深々と頭を下げる3人。「これ、またやろうな!」というミトの叫び声が、最高の一夜の祝砲のように高らかに響いた。(高橋智樹)

SET LIST
M1 シカゴ
M2 はなればなれ
M3 パンと蜜をめしあがれ
M4 GOOD TIME MUSIC
M5 Merry go round!
M6 アンセム
M7 Ka-Ka-KaLMa!
M8 tourist on the 未来'n
M9 波よせて
M10 便箋歌
M11 黄昏
M12 ハレルヤ
M13 ララバイサラバイ
M14 バイタルサイン
M15 サラウンド
M16 NOW!!!
M17 KANADE Dance

En1 SUPER☆STAR
DEn1 Re-残暑
DEn2 Re-Folklore
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