ミドリ×神聖かまってちゃん @ 恵比寿リキッドルーム

ミドリ×神聖かまってちゃん @ 恵比寿リキッドルーム
ミドリ×神聖かまってちゃん @ 恵比寿リキッドルーム
ミドリ×神聖かまってちゃん @ 恵比寿リキッドルーム
ミドリ×神聖かまってちゃん @ 恵比寿リキッドルーム
ミドリ×神聖かまってちゃん @ 恵比寿リキッドルーム - All pics by 五十嵐絢也All pics by 五十嵐絢也
恵比寿リキッドルームオープン6周年記念のシリーズ・イベントの1本として行われた対バン企画。オープニング・ゲストは、かまってちゃんと同じレーベルの撃鉄と、ミドリ後藤まりこが立ち上げたレーベル「HAKAI MUSIC」からミニ・アルバム『脳みそあらおう』をリリースしたばかりの、元BLEACHのMIYAのバンド、385の2組。と、それぞれの側から1組ずつ。ハブとマングースの対決に、サソリとタランチュラまでついてきた。と、昨日書いたが、本当にそういう、すさまじいライブだった……ってだけではなくて、こうして一緒に観たことによって、いろいろわかった気がした。以下、長いですが、ぜひお付き合いください。

まず、リキッドルームのフロアの最後方、ステージに向かって左側の、踊り場みたいになっているところ。入り口から一番遠いけど、その分混んでいる日でもここは余裕あることが多いし、高くなっていて観やすいし、壁際にでかいエアコンがあって涼しいので、私はリキッドへ行くと必ずここを目指すのですが、今日はダメでした。そこがステージになっていました。で、撃鉄と385は、そこでライブやりました。
今回、ミドリとかまってちゃんが1曲ずつ交互にやる、というのは、知っていた。なので、フロアに下りて歌ったり叫んだり唸ったりしつつ、そこら中を移動しまくる撃鉄ボーカル天野ジョージの、総合格闘家のようにビルドアップされた筋肉に感心しながら(上半身裸なのです)、あるいはものすごいスラップベースと雄たけびを、まるで180℃の油が入ったスプリンクラーみたいにまきちらす385のMIYAに度肝をぬかれながら、そうか、このステージと本来のステージ、どっちかでミドリがやってどっちかでかまってちゃんがやるのか、やっぱりこのステージがかまってちゃんなんだろうな、とか思っていたのですが。

違いました。本来の方のステージ、幕が開いたら、向かって左半分にミドリが、右半分に神聖かまってちゃんがいました。で、ミドリのハジメとかまってちゃんのmono、つまりキーボード同士がじゃんけんし、先行はミドリに決まる。ってすみません、どっちが勝ったか忘れました。でも、演奏はミドリが先でした。1曲目は“うわさのあの子”。続いてかまってちゃん、演奏を終えた後藤まりこが「おまんこ」を連呼する中、“ゆーれいみマン”でライブをスタート。
その後、1曲ずつ交互に演奏をしていく。セットリストは、下記をご覧ください。その合間合間で、後藤まりこ、隙あらばかまってちゃんにからみました。せっかくなので、そのからみかたを箇条書きにしときます。語尾とか関西弁のディテールとかはうろ覚えですが、大意は合っていると思います。あと、順番もこうじゃなかったかも。ご了承を。

・ことあるごとに、の子やmonoにガンをとばす。それもレフェリーに分けられる前の格闘家同士みたいな至近距離で。時には踊り狂いながらガンをとばし、mono、「怖い……」とマジでつぶやいていました。

・「かまってちゃんよりミドリのほうが偉いねんぞ! おまえら、既婚者おらんやろ! こっちはなあ、人妻おんねん! 人妻がおまんこ言うてますー!」と絶叫。

・monoにつかみかかり、彼がつけていたネックレスをひきちぎる。そのネックレスに指輪がついていたとかで、「おまえ、彼女おるんか! 彼女できたやろ!」と問いつめ、「……こないだできました」と認めさせる。24年の人生で初の彼女だそうです。で、後藤まりこ、monoの横っつらにものすごいビンタを食らわし、メガネ、ふっとぶ。mono、呆然。

・かまってちゃんが“ロックンロールは鳴り止まないっ”を演奏し終えたら、ミドリのハジメが同曲のイントロを弾きはじめる。で、後藤まりこ、いいかげんな歌詞で熱唱。

・ラストの“夕方のピアノ”を2バンドのセッションでプレイ、の子とふたりで「死ねー! 死ねー!」と絶叫したあと、曲が終わるやいなや、後藤まりこ、の子をフロアへ放り込む。で、客の頭の上をしばし泳いだの子が、ステージに戻ってくると、つかまえて、ぶっちゅー!! と、野獣のようなキスを食らわし、去る。残されたの子、ニヤニヤしながらも呆然。


その他、ポイントポイントで、狂ったように、それこそフジロックでのトム・ヨークも裸足で逃げ出すくらいの勢いで踊りまくったり、マイクに頭をぶつけたり、フロアにダイヴしたり、もうやりたい放題の後藤さんでした。
で、それに対して、かまってちゃんはどうだったかも、箇条書きにしておきます。

・相手のバンドの演奏が終わると、ミドリはすぐバーンと曲に入るのに対し、かまってちゃんは、の子がひとしきりだらだらとしゃべってから曲に入る。なので、いちいちたるむ。

・で、曲が終わると、すぐ相手のバンドの演奏が始まるのに、の子、まただらだらとしゃべろうとする。monoに止められてました。

・前半で、の子、フロアへダイヴ。が、何度見ても、この人が客の頭の上を転がっているさま、介護されているようにしか見えない。お客さん、いつも、彼を落とさないように、そっと転がしている感じです。

・確か“あるてぃめっとレイザー!”の時だったと思うけど、曲に入ろうとしたら、monoが「おい、ドラムがいねえぞ!」とあわてだす。確かに、みさこ、いつの間にかいなくなってる。しょうがないのでmonoがドラムを叩いて曲を始めた、と思ったら戻ってきて、「どこ行ってたんだおまえ!」「そこで立って見てろバカ!」とかののしられながら、monoのキーボードの位置について、パーカッションみたいなのを叩いてました。なので、そういう演出だったのかな、と思ったんだけど、後半、その時のことをきかれたみさこの答え。「おしっこに行ってた」。

・後半、勢いかなんかで、monoとの子、キスしてた。でも、その直後の後藤まりこのキスのインパクトには、遠く及ばず。

・そのあと、の子、ギターを叩き壊す。いや、叩き壊そうとして床に打ちつけるも、なかなか折れなくて、メンバーも客も飽きるまで、何度もガンガンやっていた。



なお、演奏に関しては、言うまでもない。すごいテンション、高い演奏力、そして「テンションの高さをそのまま演奏に置き換える表現力」に満ち満ちたミドリ、とにかくもうすごい。片やかまってちゃん、いつもどおりヘロヘロ。最後のセッション“夕方のピアノ”、ミドリと一緒にやったら、音がすんごい太くなってびっくりしました。ちばぎんのベースいいし、みさこもmonoも、単体だとそんなにひどいわけじゃないんだけど、全員だとヘロヘロになるんだよなあ。の子のせいかなあ、じゃあやっぱり。

というわけで、パフォーマンス面においても、演奏面においても、これがケンカなら、終始ミドリの圧勝。特に、後藤まりこに何か仕掛けられるたびに、それをパフォーマンスで返すのではなく、つい素に戻ってしまうの子とmonoのふたりは、もうほんと完敗だった。
ただし。これは、あくまでも、ケンカではなくライブなわけで、格闘技ではなく音楽なわけで、その2組の対比というか、過激でむちゃで型破りで事件性だらけのバンド、という共通項はあるが、その実こんなにも違う、ということがよくわかって、僕はすごく面白かった。
ここまで書いたことからも明らかなように、後藤まりこの、ミドリの過激さは、表現であり、パフォーマンスであり、人に見せるものとしての過激さだ。いや、作ってるとか演じてるとかいうことじゃないよ? ここ、ちょっと書きようが難しいんだけど、なんていうかな、つまり、自分はなんのためにこれをやっているのか、という理由が、ちゃんとあるということです。要は、人に何かを伝えるためにやっているわけでしょ。っていう意識があるのかないのかは知らないが、何年もバンドを続け、ライブを続けていると、「あ、今日のライブは届いた」って日もあれば、「今日は届かなかった」って日もある。それをくり返してきた末に身につけた、「これなら届く」「これなら自分の伝えたいことを伝えられる」という、強靭なプロフェッショナル性のようなものが、ミドリのあのおっかないパフォーマンスにはある、ということです。どのむちゃくちゃさも、どの過激さも、ちゃんと(っていう言い方もヘンだけど)ロックの歴史の中で生きている、ロックの人によるものだ。たとえば、スターリンやINUや、非常階段がそうであったように。だから、観ていてひやひやはするけど、気持ちがひかないし、だれない。ワクワクするし、やればやるほどうれしい、こっちは。

ということを、僕も前から思っていたわけじゃない。今日、かまってちゃんと一緒に観て、初めてそれに気づいた。なんでか。かまってちゃんがその正反対だったからだ。自分が何のために人前に立って音楽をやっているのかとか、受け手に届くか届かないかとか、どういうライブをやれば伝わるのかとか、そういう意識がミドリに比べると、もう赤ん坊なのだ。というか、ないのだ。だから、しゃべらないほうがいいとこでだらだらしゃべるし、暴れ方が「人に見せるものとしてのそれ」までは完成されていないし、後藤まりこに何か仕掛けられても、パフォーマンスで返せずに、素に戻っちゃう。の子がたたきつけたギター、なかなか壊れなかったけど、後藤まりこなら一発できれいに叩き割っただろう。もしくは、一発で叩き割れないんだったら、最初からやらないだろう。そういうことです。

ただし。だから、ミドリはすごくてかまってちゃんはダメだ、という話ではない。その、ぐだぐだなアマチュアリズムこそがかまってちゃんだ、「人前で何かやること」のセオリーをことごとく無視する、というか無視するという意識すらないその天然性こそがかまってちゃんだ、だから面白いんだ、というところも、確かにあるからだ。「確かに」じゃないな。間違いなく、あるからだ。と言い直します。そういうところまで含めて、あらゆる意味で、規格外のバンド。それが神聖かまってちゃんである、ということがわかったイベントだった。ミドリに負けてたけどね。いや、負けてたからわかったんだけど。

というわけで、すんげえ面白かったです。でも、どっちのバンドも、俺だったら絶対、スタッフやんない。どっちも、スタッフ、ほんとに大変だろうなあと思う。どっちも知ってる人なので、よけいにつくづくそう思います。(兵庫慎司)


セットリスト

1.うわさのあの子(ミドリ)
2.ゆーれいみマン(神聖かまってちゃん)
3.あたしのお歌(ミドリ)
4.学校に行きたくない(神聖かまってちゃん)
5.ゆきこさん(ミドリ)
6.ロックンロールは鳴り止まないっ(神聖かまってちゃん)
7.スピードビート(ミドリ)
8.通学LOW(神聖かまってちゃん)
9.リズム(ミドリ)
10.ベイビーレイニーデイリー(神聖かまってちゃん)
11. 春メロ(ミドリ)
12.あるてぃめっとレイザー!(神聖かまってちゃん)
13.メカ(ミドリ)
14.獄衣deサンバ(ミドリ)
15.いかれたNeet(神聖かまってちゃん)
16.鉄塔の上の2人(ミドリ)
17.どんぞこ(ミドリ)
18.いくつになっても(神聖かまってちゃん)
19.ちりとり(神聖かまってちゃん)
20.夕方のピアノ(神聖かまってちゃん / ミドリ)
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