GOING UNDER GROUND @ SHIBUYA-AX

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ヒダカトオル・プロデュースによるニュー・シングル『LISTEN TO THE STEREO!!』のリリース・ツアー。松本素生のソロ・プロジェクトSxOxU(これもヒダカプロデュース)のリリース&ツアーがあったり、松本素生名義(SxOxUとは別。ややこしいが)でミニ・アルバム『素生』を出したり、ドラムの河野丈洋もソロ・ミニ・アルバム『CRAWL』をリリースしてHARCOとツアーを回ったり、レコード会社を移籍したり――と、いろいろあったこのバンド、思えば2009年4月に伊藤洋一が脱退して1年以上経過(その最後のライブのレポートはここ → http://ro69.jp/live/detail/19831)、4人になって初のツアーがこれ。
サポート・キーボードの大久保敬に加えて、ツアー10本中6本に、ビークルのケイタイモがゲストとして参加。ビークルの時と同じく、「基本的に踊ったりタンバリン持ってウロウロしたりお客をあおったりしている」「で、たまーに弾く」というスタンスで、バンドに貢献しておられました。違ったのは、最後までお面をかぶりっぱなしだった、ということでした。

という、ケイタイモの参加だけでなく、全体に、「ああ、ゴーイングは変わったんだなあ」ということが、とてもよくわかるライブだった。ガラッと全部変わったわけじゃない。半分くらいは、我々が知っているゴーイングだったけど、あとの半分くらいが違った。少なくとも、僕はそう受け取った。
まず、個々のキャラが、はっきりした。って、前からはっきりしてたけど、それがさらに。ソロ活動を経て「ハモリ」の役割が深まったのと、ドラムのローがぐっと太くなった、という変化を見せている河野丈洋。「寡黙」に「長髪」と「前に出て黙々と弾く」が加わった、あと、少し前からバンドのマネージャー兼任にもなったベース石原聡。「しゃべると確実にスベって超満員のAXを微妙な空気にする」「でもギターはギャンギャン弾きまくりキメまくる」というキャラに、いつの間にかなっていたナカザ。途中でケイタイモがMCをするシーンがあったんだけど、そこで「姿形とか声とかうざさとかが、ビークルカトウタロウと似てる」と指摘されていました。と、突然タロウが出てきて、ステージの上も下もびっくり。ほんとに予定外で、観にきたついでに出たそうで、ギターは持っておらず、結局しゃべっただけで帰っていきました。ただし、衣裳はしっかり着ていました。アンガス・ヤング・バージョンでした。

話がそれた。ゴーイングの変化についてでした。あと、バンド全体の音。響き方が、音を「出す」とか「鳴らす」みたいな感じじゃなく、「放つ」というか「放射する」みたいな感じになった。難しいなこれ、文字で形容するの。音がまっすぐ飛んでいくんじゃなくて、バーッと四方八方に広がる、みたいなイメージになったということです。よけいわからないか。多面的になったというか、抽象度合いが上がって受け取り方がより自由になったというか、そういうイメージなんですが。

あと、松本素生の歌。前から完成されていた分、一見、4人の中で最も変わっていないような印象を最初は受けた。むしろ、前よりも淡々としているかもしれない。が、アッパーな曲のサビなどの、ここぞという時のエネルギーの爆発が、ものすごいことになっていた。声、でかいし、テンションも尋常じゃない。明らかに、前はここまでじゃなかったと思う。

インタビューなどで、松本素生があけすけに語ってきたように、ここ2~3年のゴーイングは「やめる? 続ける? どうする?」という議論を、バンド内でくり返してきた。で、メンバーの脱退や、松本素生と河野丈洋のソロ活動や、ヒダカというプロデューサーを招いたことや、いろいろやって、バンドを続けていく道を選んだ。ということはつまり、前のゴーイングではなくなった、ということだ。
と、なんで言いきれるのかというと、特にゴーイングのように、「中学の同級生で結成」という、友達同士で組んだ、言ってしまえば青春的な成り立ちのバンドの場合、必ず壁にぶち当たるからだ。青春的な、あるいは思春期的な結びつきでは、やっていけなくなる時期がくる、そこでどうするか、ということだ。たとえば、サニーデイ・サービスはかつて、「思春期の終わり=バンドの終わり」と当人たちが判断して、その時点で解散した。
ってこれ、青春的な成り立ちのバンドだけじゃないな。ザ・ミッシェル・ガン・エレファントは、一時期、チバがROSSOを始めたりして、どうなるんだろうと思ったら、レコード会社を移籍して再スタートを切ったけど、そのあとアルバム1枚で終わった。青春的な結びつきとは正反対のスタートを切った今のビークルだって、その「最初のコンセプトだけではやっていけなくなる時期」という壁を乗り越えるよりも、解散したほうがおもしろい、ということで、終わりを決めたんだと思う。

つまり。ゴーイングは、一度解散したわけです。で、前とは違うバンドになって、再結成したわけです。メンバーひとり減っただけだけど、昔からの曲もいっぱりやっているけど、メンバーの関係性や結びつき、音楽へ向かう立ち位置、バンドというものに対する考え方などが、前とは違うのではないかと思う。もっとシリアスで、もっと切実なものになったのではないか、と思う。

そのゴーイングの変化が、吉と出るか凶と出るかは、まだわからない。それこそ、ビークルだって1年くらい前は「一回解散して再結成したようなもんです」とヒダカは言っていた、つまりその方法で続けるつもりだった、でも続かなかった、ということだし、ゴーイングもこの先どうなるかは、まだ見えない段階だと思う。ただ、ライブ全体から受ける、やたらストイックで質実剛健な感触と、本編最後に披露されたニュー・シングル“LISTEN TO THE STEREO!!”でのアグレッシヴなプレイには、「これ、前と違うバンドとして、いけるんじゃないか?」という、いい予感があった。

と、観ながら、そんなことを延々考えてしまうライブでした。書いているうちに、後半あんまりライブレポートじゃなくなってしまったので、あといくつか足しときます。

・4曲目や5曲目を皮切りに、何度もフロアからシンガロングの起きたライブでした。特に本編後半、もうお客さん、歌いっぱなし。にしても、男の客、増えたなあ、と改めて思った。インディー時代はほとんど女の子だったよなあ、と、昔を思い出したりしました。

・9曲目は、前半はピアノと素生の歌だけ。途中からバンドの音がばーんと入る、ドラマチックな仕上がりでした。

・14曲目は、近田春夫とビブラトーンズのカバー。素生とナカザのツインボーカルでプレイ。

・17曲目、サビで大久保敬とケイタイモがタオルを回し、フロアもタオルの渦と化す。

・アンコールの1曲目は新曲。ちょっとブルージーというか、渋めのミドル・チューンでした。なお、アンコールは3曲とも、サポートなしの4人だけによるプレイでした。

・前述のとおり、ナカザ、このツアーですっかり失笑キャラが定着した(と本人も言っていた)そうですが、中でも個人的に最も大笑いしたのは、中盤、彼がフロアになんか呼びかけたところ、反応が今いちだったときのこのひとことでした。
「きみたち、俺とコミュニケーションをとりたくないのか!?」 (兵庫慎司)


セットリスト

1.TWISTER
2.同じ月を見てた
3.グラフィティー
4.ステップ
5.ダイアリー
6.ボーイズライフ
7.winding road
8.TENDER
9.荒川わたれ
10.モンスター
11.シンドローム
12.青空コウモリ
13.ビターズ
14.金曜日の天使(カバー)
15.STAND BY ME
16.My Treasure
17.Holiday
18.トワイライト
19.きらり
20.LISTEN TO THE STEREO!!

アンコール
21.ROAD MOVIE(新曲)
22.ハートビート
23.かよわきエナジー
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