スガシカオ @ NHKホール(東京)

スガシカオ @ NHKホール(東京)
スガシカオ @ NHKホール(東京) - pics by Shiho Yabepics by Shiho Yabe
ニュー・アルバム『FANKASTiC』のリリース・ツアー、東京・渋谷NHKホール2デイズの2日目。まだ全13本中の5本目なので、セットリストは明かせませんが、一部、「これは曲名出していいです」っていうのをいただいたので、最初に書いてしまいます。でも、順番とかがばれるとなんなので、アイウエオ順にしときますね。

あまい果実
コノユビトマレ
サヨナラホームラン
SPIRIT
ドキドキしちゃう
Party People
はじまりの日(feat.Mummy-D)

この中で、ニュー・アルバムの曲は“サヨナラホームラン”“Party People”“はじまりの日(feat.Mummy-D)”の3曲だけですが、もちろんそれ以外にもいっぱいやっていました。しかもその「いっぱいやりかた」に、あるアイディアというか、企画性のようなものが込みで、プレイされていました。これから観る方、ぜひお楽しみに。
あ、(feat.Mummy-D)とあるように、アルバムにゲスト参加したMummy-Dが、ゲストで登場(昨日も出たそうです)。今回のアルバムで、初めてラッパーと共演するというチャレンジをして、スタッフからは反対もあった、と本人はMCで言っていたけど、Dさん、ものすごい声援で迎えられていました。この人、いつどこの客演でもすべってるとこ観たことないが、今日も最高でした。かっこよすぎ。華があるんじゃなくて、もう華そのものみたい。

スガシカオが、ライブ時のバンドを刷新して、コンパクトでストレートな新編成にリニューアルしたのは、確か前々作のツアーくらいからだが、その時は、いきなり熱くて直球なパフォーマンスになったスガとバンドに、お客さんはとまどっていた。でも、その次のツアーでは、受け手側もそのノリを理解して、理想的な、あっついライブになった。
そして、今回は、バンドの側に、ちょっと変化が見えた気がした。バンドは超ファンクで熱いことこの上ない、でもそれを志向しているはずの本人がそうじゃない。やっぱり、どこまでいっても、どれだけスキルが上がっても、文系で、理屈っぽくて、声がひんやりしていて、そして、うじうじしていて、くよくよしていて、暗い。だから、ファンクなのに100%ファンクになりきれないというか、ギャップがあるというか、根本的に無理がある。そこが、大変に、もうどうしようもなく好き。
というようなことを、前にも何度か書いたことがあるけど、今回はバンドが「どファンク」から「ファンク」くらいになった印象があった。白人がやる、いわゆるホワイト・ファンクくらいにマイルドになった、というか。東洋人だからイエロー・ファンクか。アレンジとかをガラッと変えたわけではないので、バンドがスガシカオになじんできたというか、スガ流ファンクになってきたってことだと思います。それによって、音が、ファンクのアクを持ったままで、よりポップスに近づいていた。いいと思う。

それから。これ、昨日ブログにもちらっと書いたけど、スガシカオのレパートリーの中で、いい曲やすばらしい曲はいっぱいあるが、僕の場合、その中の最上級なものとして、「ライブでやられた瞬間に涙腺が決壊する」曲が、いくつかある。何故か、どれもシングルじゃなかったりする。どれも、そんな派手な曲じゃなかったりする。そして、どれも、聴く人を前向きに励まし、明日へと向かわせるような、いわゆる人生応援歌だったりする。この人の場合、昔のそういう曲は、「え? これ応援歌なの?」みたいなややこしい作りだったけど、最近のものは、かなりストレートでわかりやすくなっています。
で、僕は80年代中期あたりから2010年の現在に至るまで世で流行り続ける、そんな人生応援歌のほぼすべてが大嫌いだが、スガシカオのそれには、本当にやられてしまう。「これだったら聴くし、効くよなあ」とか、「ここまでやんなきゃ前向きなことなんか言っちゃいけないんだよなあ」とか、いろいろ思う。思いながら、いつも、ものすごく救われてしまう。
なんでスガシカオの人生応援歌だけが、そんな説得力を持つのか、ちゃんと解析すると膨大な文字量になるので控えますが、簡単にいうと、ネガティヴなものやダメなことに対するスタンスがちゃんとしているというか、そういうものを見つめる視点が確かだからだと思います。

なお、この日の曲でいうと、前作の“コノユビトマレ”と、ニュー・アルバムの“サヨナラホームラン”がそれにあたります。どっちもやばかった、もう。
ちなみに“サヨナラホームラン”は、ニュー・アルバムの3曲目です。あまりにもよすぎて、アルバムをそこまで聴くとついリピートしてしまい、なかなか4曲目以降にいけなくて、いつも困っています。(兵庫慎司)
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