BRITISH ANTHEMS @ 新木場STUDIO COAST

UKロック・ファンお馴染みの恒例イベント、ブリティッシュ・アンセムズの第9回目。今回、アイスランド火山噴火の影響によりザ・サンシャイン・アンダーグラウンドの出演がキャンセルになってしまうという残念なお知らせもあったが、スペシャルゲストとしてマニ(ザ・ストーン・ローゼス/プライマル・スクリーム)がDJとして参加するという嬉しいサプライズもあり、コーストがロック・ファンに溢れる最高の一日だった。

今回もメインステージのほか、屋外に『TEQUILA69』が設置され日本のニュー・カマーたちが出演。今日のように晴れ渡った空の下にはぴったりなフォーキーサウンドを奏でてくれたTurntable Films、一癖も二癖もあるサイケ・ロックに瑞々しいポップ・メロディを乗せてオーディエンスを魅了した踊ってばかりの国、バキバキの4つ打ちと2台のシンセが繰り広げたダンスロックでオーディエンスを圧倒したA MAD TEA PARTY、そして、メイン・ステージのタイムテーブル繰上げにより結果的にイベントを締めくくったといってもいい、Psysalia Psysalis Psycheが破滅的で甘美なロック・サウンドを叩きつけ、屋内のみならず屋外でもUKロック臭漂ういいステージを見せてくれた。もう少し詳しくお伝えしたかったのですが、全てをしっかり観ることはできなかったので、まとめてしまってすみません。それでは、メインステージをどうぞ。

●QUATTRO
メインステージのトップバッターを飾ったのは、昨年12月の同イベントでは『TEQUILA69』に出演していたQUATTROの5人。4月21日にニュー・アルバム『Where is the coconuts?...Ha?』をリリースしたばかりで、早速そこからの新曲を披露。ハモンドオルガンを多用した土臭いガレージロック寄りだった前作に比べると、今作はスタイリッシュなグルーヴとメロディで踊らせる楽曲が多くて、オーディエンスは軽快に身体を揺らして楽しんでいた。その主要素を担うリズム隊の骨太さが際立っていて、安定感もばっちり。モータウンビートだったり、カントリーだったり、バリエーションに富んでいてオーディエンスを飽きさせない。ラストはお馴染みの“HEY”で濃厚ロックンロールを叩き付けてくれた。

●SWANTON BOMBS
続いて登場したのは、ギター&ドラムのベースレスバンド、スワントン・ボムズ。ホワイト・ストライプス・スタイルで激情溢れるフリーキー・ロックを叩きつける2人組だ。ステージ左側にギター、右側にドラムがセッティングされており、純粋にギターとドラムの音だけでパフォーマンスをやってのける。こういうバンドをライブで見ると本当に死ぬ気になって身を削って振り絞ってますというのが伝わってくるのだけど、それは勢いのみならず、奥底に眠る魂みたいなものまでもがかなり剥き出しになってくる。音数が少ないことでより顕になった感情を一気に吐き出してオーディエンスをねじ伏せる。どしゃめしゃなドラムと、時折メタルやハードロックを思わせるリフを次々と繰り出していくギターのこのアンサンブルがたまらない。

●THE CHAPMAN FAMILY
ゴツゴツとした耳触りと一瞬にして引き込まれてしまいそうなダークで不穏なロックでオーディエンスを魅了したザ・チャップマン・ファミリー。ノイジーな不協和音を撒き散らして狂わせ、苛立ちと絶望を叫ぶような真っ黒なロック。轟音フィードバックを場内に響かせ、まるで洗脳するかのように虜にしていく。ボーカルのKingsley Chapmanの歌声は鬱屈とした感情を冷徹に叫んでいるが、そんな暗闇の中で一筋の光が見えてくるような声にも聞こえるのが、きっと万人に受ける理由でもあるのだろう。スタジアム・アンセムになり得る壮大なナンバーでオーディエンスが拳を突き上げたり、手拍子で迎え撃ったのも、ザ・チャップマン・ファミリーの牽引力の強さゆえだ。

●TRICERATOPS
続いて、日本からTRICERATOPSが登場。普段洋楽を聴いているUKロック・ファンからしてみれば、意外に骨太ロックだなと思ったことに違いない。オープニング“Star Jet”から、和田はお得意の王道ギターリフを繰り出していく。「今日はBritish Anthemsということで、僕ら唯一のリヴァプール出身のバンドなんですけど…(笑)」と笑いをとってみたり、若いバンドにはない10年選手の余裕を見せる。そして現在、ニュー・アルバムの制作中ということでその中からの新曲も披露してくれた。マニのDJを観るため一時中座したが、ラストは何年経ってもアンセムであり続ける“Going To The Moon”“Raspberry”で一頻り盛り上がり、“FUTURE FOLDER”で大団円を迎えた。

●Mani(SPECIAL GUEST DJ)
TRICERATOPSを一時中座してDJブースへ移動。DJスペースには溢れんばかりの人たちが踊っていて、スペースから出てくる人たちは汗だく状態。DJをやっているマニの姿は遠くからでは確認できなかったのだが、私が行った時にはちょうどオアシスの“ロックンロール・スター”やプライマル・スクリームの“カントリー・ガール”、ザ・クリブスの“メンズ・ニーズ”など王道ナンバーで盛り上げていた。トライセラ終わりにはザ・ストーン・ローゼスの曲もかけていました。

●STEREOPHONICS
メインステージのラストはステレオフォニックス。彼らの奏でるロック、そして観せるパフォーマンスは本当にUKロックのお手本ともいえるようなオーセンティックなものだ。ライブを観るたびにそう思わせてくれるのは、やはり堂々たる重厚なサウンドとスタジアム級のアンセムの存在のおかげなのだと思う。“スーパーマン”の揺らめく妖しさも、“メイビー・トゥモロー”のアコースティカルで渋みの効いたケリーの歌声は何度聴いても、ずっと色褪せずに輝き続けている。それに加えて、今回は最新作『Keep Calm And Carry On』で見せたステレオフォニックスのポップが炸裂! “イノセント”のような軽快に弾むメロディにケリーの掠れ声が乗り、濃厚なんだけど瑞々しいという彼らにしか出せないロックが鳴っているのだ。ロックの王道を十数年走りながら、鮮度をずっと保ち続けているステレオフォニックスは本当に素晴らしい。アンコールは必殺アンセム“ダコタ”で大団円を迎え、本日のブリティッシュ・アンセムは締めくくられた。(阿部英理子)
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