アナログフィッシュ @ 渋谷クラブクアトロ

アナログフィッシュ @ 渋谷クラブクアトロ
アナログフィッシュ @ 渋谷クラブクアトロ
アナログフィッシュ @ 渋谷クラブクアトロ
アナログフィッシュ @ 渋谷クラブクアトロ
ニューアルバム『Life Goes On』のリリースツアーの最終日。アンサンブル、合奏、呼吸、グルーヴ、どんな言い方でもいいが、バンドとして複数人数で一緒に音を出して歌うというそもそもの行為において、異様に優れているのがこのバンドなわけで、ここ数年というもの、いつ観ようがどこで観ようが「今日ダメだなあ」と思ったことがないのだが、ドラマー斉藤州一郎が再加入してから初の本格的なツアーとなる、3人に木村ひさし(key&Cho)が加わった今のこのアナログフィッシュのライブは、とにかく、もう、完璧だった。鉄壁という言い方のほうが近いかもしれない。そう呼ぶには隙間だらけの音なんだけど。元々そういうアレンジなので。
そう、まず、「元々そういうスカスカなアレンジである」という自体が、本当に優れているバンドしかできないことだ。なんでかというと、隙間があると不安だからです。アラや綻びが目立つからです。だから、音をぶ厚くしたくなるし、音符の隙間を埋めたくなるのです。ただ、ずーっとぶ厚くて隙間がないと、当然メリハリがつかないわけで、基本的にスカスカで隙間だらけであるがゆえに、たまにサビとかキメとかで音がぶ厚くなった時のインパクトがすごくなるのです。アナログフィッシュの、そんな本領が発揮されまくった全19曲だった。
別に、今日が特別よかったわけじゃないと思う。きっとこのツアー、毎日のアベレージがこれくらいだったんだと思う。つくづく、いいバンドだなあ、と思います。

という、バンドの絶好調ぶりがそのまんまフロアに伝染していて、クアトロ全体がとてもいい空気になっていた。熱いし、アガるんだけど、一面的にだーっと熱気に埋め尽くされる感じじゃなくて、もっとこうそれぞれが自由に楽しんでいて、統一感がない感じ。でも、つまんなさそうなんじゃなくて、みんな笑顔なんだけど、その笑顔の浮かべ方がそれぞれ違う感じ。
って、別に一面的にだーっと盛り上がるライブが悪いという話ではありません。ただ、アナログフィッシュはそういうバンドじゃない、という話です。特に、下岡晃の発している空気は、そういう、自由で、バラバラで、勝手で、孤独だけどそれがイヤじゃない、みたいな、そういうムードだ。クサく言ってしまうと、聴く人がそれぞれの「生きていっていい理由」や「すべてをあきらめなくていい理由」を見つけるきっかけになる、そんな音楽を作りたい。でもその音楽は、同時に、聴く人それぞれによって好きなように受け取れるような、自由なものじゃないといけない。でも、抽象性が高くて、何言ってんだかわからないようなものじゃしょうがない。ちゃんとダイレクトに伝わらないと意味がない。そんな困難な、というか矛盾するトライアルをクリアしていう形になっていると思う、この人の曲はどれも。
とか思いながら聴いていたら、アンコールのMCで、下岡、「今日みたいに、こんなふうに、踊ったり、後ろでじっと観ていたりして、いろんなふうに楽しんでくれる人がいることがとてもうれしい。いろんなものが混ざる、というのがうれしい」みたいなことを言っていた。そういえば、昔、ジャパンでインタビューした時も、「混ざるっていうのが大事」みたいなことを言っていました。

なお、もうひとりのコンポーザー&ボーカリスト、佐々木健太郎は、“アンセム”でフロアを2分割してそれぞれ歌わせてハモらせる、というおなじみのパフォーマンスの時、お客さんみんなの声がどんどん大きくなるのに感動して、「もうこのまま死んでもいいぜー!」と絶叫しておられました。それから、何度も何度もお客さんに感謝の意を述べておられました。
そういえば。この人、普段、吃音まではいかないけど、あんまりスラスラしゃべることができないのですね。何か言おうとする時に、その最初の音の種類によってうまく発語できなくて、だから言葉がスッと出てこなくて、間が空いてしまったりする人なのです。なんでそんなに言い切れるのかというと、僕も同じで、今はだいぶ治ったけど、若い頃に往生こいたからです。
なんだけど、MCででっかい声で叫ぶ時や、歌う時は大丈夫なのね、健太郎。なんでだろう、あれ。普段の健太郎だったら、“スピード”のサビ前の「夜にひとりぼっちのオレのさけびにのせて」って早口台詞の部分なんて、絶対に言えないと思う。ライブだとなんで言えるんだろう。いつも不思議に思います。


あと、お客さんのことでふたつ書きたいことあり。

ひとつめ。開演5分前、フロアに行ってみたら、「ありゃあ、結構空いてるなあ……」という状態。動員落ちてるのかなあ。うーん……と思いながら柵前へ移動し、ライブが始まって写真を撮り、30分くらい経って、後ろの方からも撮ろうと思ってまたフロアへ出てみたら、歩くのも大変なほどギュウギュウになっていた。アナログのファンってゆっくり来るのね。仕事帰りの人が多いんだろうか。でも、当日券は出ていたので、もしかしたら当日券で来る人が多いのかもしれない。次回の東京でのワンマンは毎夏恒例「ナツフィッシュ」、7月24日(土)ここ渋谷クラブクアトロです。ぜひ。

ふたつめ。本編ラストの“Life goes on”、柵前で撮りながら観ていたんだけど、最前列にいる20代後半くらいの男、ふと見るとでっかく口を空けている。なんだこいつ、前にいるのにアクビかよ、と思ってよおく見たら、でっかい声で、一緒に歌い続けているのだった。歌いながら、顔をクシャクシャにしていた。涙をボロボロ流していた。僕も大好きな歌だけど、この時は、バンド以上にその男の方に、ぐっときてしまいました。(兵庫慎司)

1.NOW
2.Hello
3.Clap your hands!
4.曖昧なハートビート
5.ハッピーエンド
6.Ready Steady Go
7.Low
8.平行
9.ナイトライダー2
10.kiss
11.僕ったら
12.Light Bright
13.夕暮れ
14.アンセム
15.ダンスホール
16.スピード
17.Life goes on

アンコール1
18.Sayonara 90’s
19.ハローグッバイ

アンコール2
20.最後のfuture
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