pics by 橋本塁19時を少し回ったころ、場内暗転とともに割れんばかりの大歓声に迎えられながら一人ずつゆっくりとメンバーが登場。シンペイの図太いリズムに促されるように、大山のギターが乗り、ひなっちのベースがうなり出す。一つひとつの音がすごくクリアで力みなく自然に鳴っていて、今いかに４人が何にも縛られることなく、自由に音を鳴らしているかがよく分かる。前半から驚くほどにアッパーなナンバーを畳みかけて、フロアはもう錯乱状態だ。
ストレイテナーがアルバムを出すたびに思うのは、これまでをきちんと踏襲しながらも、全く次元の違う作品を作っているということ。同じバンドが作ってるとは思えないほどの進化っぷりに毎回驚かされるのだけど、今回の『CREATURES』はその極みだった。だからこそ、旧曲との流れをどういうふうに見せてくれるのだろうと思ったのだけど、びっくりすることに旧曲のライブでの進化が半端なかったのだ。ライブの定番曲“TRAVELING GARGOYLE”は、駆け抜けるような爽快感に加えてどこまでも広がっていくような壮大さを兼ね備えていて、きちんと今の４人だから鳴らせるサウンドになっていたし、他にも『CREATURES』が生み出したバリエーションの広さが、旧曲のアレンジにしっかり生きていてアルバムの楽曲と同じ高さのレベルで響いていたのだ。
そして、言うまでもなく『CREATURES』の楽曲は、今の４人が肩肘はらずに自由に鳴らしているものだからなのか、オーディエンスも要所要所で声を上げてみたり、身体を揺らしながら自由に楽しんでいるようだった。「好きに楽しんでください」というホリエの一言から、アルバムのオープニングを飾る“OWL”で始まった後半ブロックのゆったりとした心地よさは、たぶん今までのストレイテナーにはなかった要素かもしれない。ホリエの歌には色がついたような鮮やかさがあったし、軽快に小躍りするような大山のギターフレーズも、ひなっちの本領を発揮したベースラインも、それらを纏め上げるシンペイのタイトなリズムも、全部が全部これまでのテナーでは見たことのない新しい手法。自由に出せばそれだけで最高なものが成立するという今のテナーだからこそ生み出せた昂揚感だ。
まだツアー初日なので、セットリストなど詳細を伝えることができないのだけど、アンコールで披露していた『CREATURES』収録の曲の時に会場中に鳴り響いた手拍子の一体感が、ツアー初日の成功を祝うような祝祭ムードに満ちていた。こういうハッピー感も実は今までのテナーにはなかったかもしれない。アルバム『CREATURES』によって、タイトルのごとく血の通った生き物のようにいろんな表情を手にいれたストレイテナー。ツアーファイナルを迎える６月には一体どんな表情を見せてくれるのか本当に楽しみで仕方がない。（阿部英理子）
