東京スカパラダイスオーケストラ @ 両国国技館

東京スカパラダイスオーケストラ @ 両国国技館 - pic by 仁礼 博pic by 仁礼 博
東京スカパラダイスオーケストラ、メジャー・デビュー20周年度(というそうです。谷中のMCより)をしめくくるスペシャル・ライブ、『東京スカパラダイス国技館』@ 両国国技館。
勝ちだ、これ。と、音が出る前の段階で、既に思ってしまった。そんな、確かにスペシャルなライブだった。特殊なライブだったとも言える。

説明します。まず、国技館の土俵の位置に、でっかい円形ステージ。それを取り囲む360度の客席(超満員)。日本武道館でいうと1階スタンド部分にあたる升席部分は、1升につき2人で、みんな靴を脱いでそこに立っている。なお、升席は特製スカパラ座布団付き(それ込みのチケット代の設定)。ライブ、もしくはコンサート仕様の「ステージを照らすもの」としての照明ではなく、「会場全体を照らすもの」「場の空気感を作るもの」としての、いわばクラブ仕様の照明(スカパラはいつもそうです)。
で、客電が落ちてSEが流れ、照明が輝きはじめ、ステージ四方にしつらえられた階段を上がってメンバーが登場し、それぞれが持ち場について準備完了し、照明がばーん! とステージの9人を浮かび上がらせた瞬間、まだ音も出ていないのに、「あ、もうこれ勝ちだ。勝ったわスカパラ」と、思ったのでした。
異空間というか、非日常感というか、非現実感というか、そういう、日常からばきっと切り離されたみたいな、外の世界とはまったく違うみたいな感じがすごかったのだ、その瞬間の。メンバー9人の黄色いスーツまで、なんか現実っぽくない感じでピカーッ!と輝いて見えた。
って、冷静に考えれば「それ照明が上手いんじゃん」って話なんだけど、あの「うわ、ここどこだっけ?」「ああっ、なんかえらいことが始まりそう」みたいな感覚、ちょっとびっくりだった。

で、その非日常感に包まれたまんま、2時間半走りきった、そんなライブになった。つまり、掛け値なしに最高だった。
全部24曲、今年出たニュー・アルバム『WORLD SKA SYMPHONY』から8曲、歴代の代表曲やライブでおなじみの曲や意外な曲などが16曲、計24曲。ステージは7曲目まで正面(国技館なので客席が正面・東・西・向正面という名称なのです)を向いていたが、8曲目のメドレーが始まったところから回転を始め、曲によって向きを変えたり、時には回り続けたりしながら、ライブが進んでいった。
3曲目“DOWN BEAT STOMP”のあとのMCでの、谷中のおなじみのキメゼリフ「戦うように楽しんでくれ!」。大森はじめがマイクを持ちアオリ役を務めた、8曲目のメドレー中の“(You don’t know)what ska is.”。沖祐市のアコーディオン&口笛のみで奏でられた9曲目“君と僕”(最新作で、斉藤和義ヴォーカル・バージョンに生まれ変わっていたあの曲です)。欣ちゃんがドラムをGAMOに任せて、マイクを持って走り回った11曲目“SKAHOLIC GENERATION”。NARGOがピアニカを聴かせる12曲目“Jugging City”。谷中と大森はじめがマイクを持って歌う、ライブではおなじみの13曲目“SKA ME CRAZY”。ホーンなしの5人編成で、沖のキーボードがボーカルの旋律を担当した15曲目“美しく燃える森”。「ニュー・ホーン・アレンジメントです」とこの曲のヴォーカリスト=欣ちゃんが紹介してから歌った16曲目“KinouKyouAshita”。最新アルバム収録曲であるシャンソンのスタンダードのカヴァー、途中でパーン! と銀テープが飛んだ、本編最後の19曲目、“愛の讃歌”──。

などなど、もうどこをとっても観どころだらけ、聴きどころだらけの2時間半だった。基本的にあがりっぱなしで、「ポリシックスのファンと並んで日本でもっともフェスの時とワンマンの時の温度差のないファン」である客席、360度とも2階のてっぺんまで、常時狂ったように踊り続けているんだけど、そうじゃない時間、つまりちょっとスローな曲の時間やしっとりした曲の時間も、片時たりとも飽きさせないステージング。
いつも思うんだけど、スカパラのライブって、基本的には「もうアタマ真っ白にして楽しめー!」みたいな、体力勝負でテンション勝負なものではあるんだけど、同時に「いかに楽しませるか」「いかにお客の気をステージから逸らさせないか」「いかに物語を作るか」ということにも心血が注がれた構成になっている。たぶん、「メジャーフィールドでインストをやる」ということの先駆者だったがために、「普段インストを聴いてない人にもいかにしてインストを聴かせるか」ということに向き合わざるを得ない状況で、20年続けてきたからだと思うが、そのせいで、「ものすごく高尚なサービス業」みたいな、今日のようなライブをやることができるのだろう。そこが、ほんとにすばらしいと思う。

あと、今のスカパラって、自分が中心になって客をアオったり仕切ったりする、いわゆるアジテーターの役割をできないメンバーが、ひとりもいないんですね。9人全員それぞれが、ライブの中でその役割を担う瞬間があった。昔はクリーンヘッド・ギムラというアジテーター専任のメンバーがいたし、それ以降は冷牟田竜之がその役目を多く担っていた時期もあったけど、一昨年に彼が脱退して以降は、全員がアジテーターみたいなことになっているんだなあ、つくづくタフなバンドだなあ、と思ったりもしました。

アンコールでは、2曲目の“流星とバラード”で、シークレット・ゲスト、奥田民生が登場。彼がゲスト参加した2曲のうちの1曲“美しく燃える森”はさっきインスト・バージョンで披露されたし、今日はゲストとかないんだな、と思っていた客席、もう360度大狂喜。黄色スーツ&黒ハット&サングラス姿の民生、ガニ股で両手で客席を指差す、という変なポーズを四方向に披露しながら、朗々と歌う。
歌い終わって谷中にコールされ、何を言うのかと思ったら「ゲッツ!!」。あ、そのポーズだったんですね、さっきの。「いや、この格好だから。だって、そのための黄色でしょ?」だそうです。あと、「なんで僕、アンコールなんですか? アンコールって、みなさんの『もう一度やってくれ!』っていう熱い思いに応えてやるもんでしょ? アンコールかからなかったら、僕、どうなってたんですか!?」とお約束を打ち破るようなクレームをつけ、ステージの上も下も大笑い。
そのまま、オリジナルは田島貴男の“めくれたオレンジ”も歌うというサプライズを聴かせてくれたあと、民生はステージを降りた。
バンドは、“Paradise Blue”でアンコールを終え、ステージを去ったが、客電がつき、BGMが流れ、「以上をもちまして、本日の公演はすべて終了しました」というアナウンスが何度も流れても、手拍子はやまず、また登場。メジャー・デビューの前にファイル・レコードからリリースされたアナログ盤『東京スカパラダイスオーケストラ』収録の“スキャラバン”で、華々しく、かつ感動的に、20周年度の最後をしめくくってくれた。

なお、21周年のキックオフライブは1ヵ月後の4月24日(土)、『東京スカパラダイスオーケストラ』@東京体育館。「館」のつく場所で、20周年と21周年をまたぎたかったと思われます。既に、民生、斉藤和義、クリスタル・ケイのゲスト出演が発表されています。こちらも楽しみ。(兵庫慎司)


1.ペドラーズ
2.Like Jazz On Fire
3.DOWN BEAT STOMP
4.WORLD SKA CRUISE
5.Heaven’s Door
6.STORM RIDER
7.花ふぶき
8.トーキョースカメドレー20周年アニバーサリーver
ハプニング/仔象の行進/STROKE OF FATE/
(You don’t know)/what ska is./MONSTER ROCK
9.君と僕
10.The Look Of Love
11.SKAHOLIC GENERATION
12.Jugging City
13.SKA ME CRAZY
14.TIN TIN DEO
15.美しく燃える森 -instrumental-
16.KinouKyouAshita
17.White Light
18.Just say yeah!
19.愛の讃歌

アンコール1
20.Boppin’ Bunny
21.流星とバラード(w/奥田民生)
22.めくれたオレンジ(w/奥田民生)
23.Paradise Blue

アンコール2
24.スキャラバン

※8曲目のメドレーをプレイする前、川上つよしは「トーキョースカメドレー20周年アニバーサリー・エディション!」と紹介していましたが、レコード会社からもらった取材用セットリストでは「アニバーサリーver」となっているので、そちらで表記しました。
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