10-FEET @ ZEPP TOKYO

10-FEET @ ZEPP TOKYO
10-FEET @ ZEPP TOKYO
10-FEET @ ZEPP TOKYO
※このツアー、あと1本(4月3日沖縄桜坂セントラル)公演が残っていますが、レコード会社スタッフと協議の結果、セットリストを載せることにしました。これから沖縄公演を観るのでネタバレを避けたいという方は、ここで読むのをやめてください。

昨年9月20日釧路にて始まり、全国津々浦々はもちろん韓国や台湾まで足をのばし、ツアー本編(ゲストあり)/ファイナル・シリーズ(ワンマン)/ファイナル・シリーズ追加公演(これもワンマン)の3シリーズにわたり、そして年をまたいで半年間にわたり、続いた『“Life is sweet”TOUR 2009-2010』、全68本中67本目のZEPP TOKYOワンマン。このツアーにおいて、ここZEPP TOKYOでワンマンをやるのは、3回目。
残りは沖縄1本ということで、実質的にファイナル! という、お祭りムードとか、祝祭空間、みたいなライブには、ならなかった。いや、演奏中はなったとも言えるけど、それだけではすまない、片付けられないことの多い、そんなワンマンだった。

開演時間の18:00、メンバー3人が楽器を持たずにステージに現れ、以下のような報告をした。
18日のここZEPP TOKYOでのライブで、お客さんのひとりが倒れて病院に運ばれ、今も入院中であること。その原因が、まだわからないこと。この事態を受けて、このライブをやるかやめるか、今後のライブ活動をどうするか、ということをメンバー同士で話し合った結果、やることにしたこと。くれぐれも自分と人の安全に気をつけてライブを楽しんでほしいし、最高のライブにしてほしいということ。普通はステージの柵前だけにいるセキュリティ、フロアの左右にも定間隔で立ってもらったので、気分が悪くなったりしたら助けを求めてほしいということ。

ここまで説明して、メンバーはいったんステージを去った。
18:19、SEがかかり、メンバー登場。NAOKIのベースイントロで“super stomper”からライブがスタート。真っ暗、もしくは逆光のフラッシュで、ステージ上のメンバーの姿はシルエットでしか見えない状態で1曲走りきって、“VIBES VIBES VIBES”“チャイニーズ・ヒーロー”“STONE COLD BREAK”とたたみかける。
やっぱり、すんごい音、すんごいグルーヴ、すんごいテンションになっている。何が「やっぱり」なのかというと、僕はこのツアーの11月12日のZEPP TOKYOを観て、あのすさまじいアルバム『Life is sweet』を、ライブで、最高の状態でやれるようにはまだなっていない、ツアー終盤にはなっていると思う、みたいなことを書いたのだ(ここです → http://ro69.jp/live/detail/27551)。で、ツアーをほぼ回りきった今、観たら、期待以上にそうなっていたのだ。

こなれていた、とか、上手くなっていた、というわけではない。いや、そうでもあるけど、それだけだとちょっとニュアンスが違う。はっきり言って、10-FEETは3人とも、「あっちゃあ」ってほどまずいプレイヤーではないけど、「うわ、すげえ!」みたいな優れたプレイヤーでもない。つまり、たとえばBRAHMANみたいに、プレイヤーとしてすごい4人が集まってすごい音を出す、というバンドではない。プレイヤーとしては「そこそこ」だから、そのままやると「そこそこのライブ」になってしまう、それはまずい、じゃあどうすればそうじゃなくなるか、もっといいものをやれるか、という課題と、とっくみ合い続けているバンドだと僕は思っている。

って、わかりにくいか。えーと、たとえばですね、バイクレースのチームだとしましょう。このバイクの性能だと、せいぜいマックス時速180km/hしか出ない。もっと速いエンジンを買う金もない。でもそこで、腐ったりあきらめたりせず、「少しでもそのマックスに近づけるように」と、ライダーもメカニックもマネージャーも全員で力を合わせてレースを続ければ、180km/hしか出ないはずのバイクが、32周目あたりで気がついたら「あれ? 今、220km/h出てる」ということが、起きる場合があるのです。
で、それを出すためには、全身全霊で努力を続けながら、何十周も走らないとダメなのです。つまり、10-FEETはそういうタイプのバンドであり、この日のライブは正にその32週目の状態だった、ということです。どうでしょう。このたとえで、よけいわかりにくくしてしまったような気がしないでもありませんが、でも、本当にそういうライブだった。
下記のような、『Life is sweet』の曲たちも過去の代表曲たちも網羅したセットリストの、どこにも本当に穴がなかった。いや、唯一、13曲目・14曲目あたりで一瞬、音がバラッとしかけたが(リズムが難しい曲なのです)、次のMCで持ち直して、そこからは最後まで一気だった。
あんなに超高速なビートの上に、あれだけあらゆる音楽スタイルがどんどん放り込まれていて、それがキャッチーでシンガロングできて超楽しくてアガり放題アガれるものになっている。そんなバンド、ほんとに10-FEETしかいない、と改めて思った。
開演前は寒いくらい効いていた2Fの冷房、3曲目くらいでもう役立たずになった。6曲目が始まったあたりで、すごい勢いで空調から冷気が出てきました。風力を最大にしたのだと思います。

それから。最初に書いたことがあったためか、そもそもライブの時のお客さんのマナーの問題について向き合い続けながら行ってきたツアーだったせいか、そしてそのツアーが終盤を迎えているせいか、TAKUMAのMC、いつもより多かった気がした。
「今日のこれを、もう一生忘れられないライブにしたい」と何度も言ったし、「キリのない話し合いも、決着がつかないことも、どうにもならない問題も、あきらめないで向き合っていくしかない」というようなことも言った。空のペットボトルをぶん投げずに、目の前のセキュリティにひょいと渡したお客さんにお礼を言ったりもした。
ネットや配信によって、音楽のありかたやメディアのありかたが変わる、今がそういう世の中であることに対して「時代のすごい大きな変わり目に今自分たちはいる」みたいなことも言っていた。それから、「ネットとかもあるけど、ライブの場で、今ここで直接伝えるのが一番いいと思った。だからそうすることにした」というようなことも言っていた。
で、いつものように「学校がおもろない奴! イヤな上司がおる奴! ここで全部ぶっとばして帰れー!」みたいなアオリもカマしたし、「明日からまだ闘われへん奴は、せめて今、この場所だけでも闘え!」とも叫んだ。アンコールを終え、NAOKIとKOUICHIがステージを下りたあとも、残って、マイクなしの地声で、しばらく語っていた。

TAKUMAのこういう、アツくてクサくて真摯なMC、10-FEETのライブでは必ずあるが、正直言って、僕はこれ、100パーセント肯定的ではない。ついぐっとくることもあるし、うるっとくることもあるが、「10-FEETの場合、そういうのを充分に音楽で表現できてるんだから、言葉にして言わなくてもいいよ」と思うことも、よくある。よくあるけど、この日のMCは、ひとつ、これまでと大きく違った気がした。
さっき書いた「学校がおもろない奴!」のMCに表れているように、普段の日常でクソみたいな思いばかりしているみんなに、せめてここでは幸せになってほしい、すべて発散してほしい、それが現実逃避だとしても、逃避する先もないよりはよっぽどいい――10-FEETは、自分たちのライブをそう位置づけているところがあった。それが「この場で幸せになって発散して終わるんじゃなくて、その幸せやテンションを日常生活に持っていって、有効に使えるようになる方法を考えよう」みたいなニュアンスに、1年くらい前から変わってきた気がする。で、それがこのツアーでは、いっそうはっきり表れている感じがする。
まあそれも、音楽で充分伝わってるから言わなくてもいいんじゃない? と、思わなくもなかったが、次のひとことには、思わず唸ってしまった。
「俺らがダサかったら、ダサい国や。俺らがかっこよかったら、かっこええ国や」
簡単に言うと、当事者意識を持てということです。加害者である外界と被害者である自分、というふうに世界を捉えるのはやめろ、ということです。と、僕は受け取りました。

あとひとつ、アンコールの頭でのこと。KOUICHIが前に出てきてMCでいつものように失笑の嵐を巻き起こしまくった挙句、「誰かブルーハーツの“リンダリンダ”を弾ける人!」とお客に手を挙げさせ、ショウくんという男をステージに上げてベースを持たせ、自分がボーカル、NAOKIがギター、ドラムがTAKUMAで“リンダリンダ”をやった。ギターウルフみたい。と一瞬思ったが、大きく違ったのはそのショウくんが「ちゃんと弾けていた」こと。コードを拾ってるだけではなくて、「♪リンダリンダー」んとこでベースの音が♪ダダダダダダダダ、って下がっていくでしょ。あそこもちゃんとコピーできてました。笑いました。(兵庫慎司)


1 super stomper
2 VIBES BY VIBES
3 チャイニーズ・ヒーロー
4 STONE COLD BREAK
5 What’s up?
6 U
7 JUST A FALSE! JUST A HOLE!
8 Freedom
9 SHOES
10 Mr.bullshit
11 LICENSE
12 SEASIDE CHAIR
13 recollection
14 under the umber shine
15 quiet
16 FELLOWS 1.5
17 BE NOTHING
18 1 sec
19 LOODY
20 AND HUG
21 RIVER
22 back to the sunset
23 ライオン
24 風
25 2%
26 goes on

アンコール
27 リンダリンダ
28 FUTURE
29 joker stomper
30 HEY!
31 CHERRY BLOSSOM
32 4REST
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする