フェニックス @ SHIBUYA-AX

フェニックス @ SHIBUYA-AX
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フェニックス @ SHIBUYA-AX
フェニックス @ SHIBUYA-AX - pic by Kazumichi Kokeipic by Kazumichi Kokei
要望があるとすれば「もうちょっと長くやって欲しかったなあ」というくらいで(アンコール含め1時間20分くらい)、それ以外のすべては、もう文句なしにパーフェクト!
と言ってなんら差し支えないと思う。ライティング含め、実に瀟酒に、スマートにショー・アップされた本編、そして壮絶なクライマックスを立ち上げてみせたアンコールと、弛緩も隙もないパフォーマンスでPhoenixの魅了を存分に見せつけたステージだった。

ライブは定刻どおりの19時にスタート。見事グラミーのベスト・オルタナティヴ・アルバムを獲得した3年ぶり4枚目のアルバム『Wolfgang Amadeus Phoenix』同様に“Lisztomania”で幕を開けると、弾けるような高揚感と共に腕を突き上げて一気にヒートアップするフロア。シルエットしか見えない薄明のライティングがさらに待望感を煽る。ステージ後方の壇上にサポートのキーボディストとドラマー、前列にクリスチャン(G)、トーマス(Vo)、ディック(B)、ローラン(G)の4人が横一列に居並ぶ様が、それだけで絵になるというか、もう抜群にカッコいいのだ。ソフトで伸びやかな歌声を響かせるトーマスにスポットが当たると、「キャ――!」という女性ファンからの嬌声混じりの喝采が沸き上がり、「We are Phoenix from France! 今夜は特別な夜だから、みんな踊りたかったら好き勝手に踊ってよ!」と呼びかけて、“LONG DISTANCE CALL”、“LASSO”と続けざまにプレイしていく。その“LOSSO”では、トーマスがおもむろにステージ下にジャンプ!
騒然となるフロア前の熱狂がみるみるAX中に伝播し、続く“RUN RUN
RUN”の間奏では真っ赤なライトを浴びてバンドは激しく頭をバンギング。野性味あふれるアグレッシブなパフォーマンスで観衆を魅了した。シンプルで軽やかなアンサンブルだが、スティックを振り下ろすような力強いドラミングが時に肉感的なダイナミズムを生み出し、柔らかく繊細なタッチの上モノとのコントラストがPhoenixならではの心地良いグルーヴとなってオーディエンスを揺さぶり続けるのだった。そのサウンド・プロダクションには一種麻薬的なアフェクションがあった。

中盤の組曲的な“LOVE LIKE A SUNSET”では、ピアノ・フレーズがリフレインされるなか、投影されたライトがスピーカーやバスドラの輪郭を形どり、8ビートのフェード・インと共にそれらがバラバラに解体されていくという示唆的な展開も。その後半では、オレンジ色のストライプがステージ全面に投影され、じわじわと熱を帯びていくバンド・サウンドとあいまって、まるでフロイドの幻影を見るような荘厳なランドスケープが現出。Phoenixのロック・バンドとしての懐の深さが露わになった瞬間だった。「ソー・ハッピーだよ。いつも歓迎してくれて本当にありがとう!」とありたっけの感謝を届けて、終盤の“ROME”では「こんな風に手拍子してよ」とAX中にハンド・クラップを響かせ、強烈なフラッシュ・ライトが明滅するなか「トーキョー、カモン!!」とアジテート。さながらレイヴ・パーティのような熱狂を立ち上げて本編を締めくくった。

アンコールでは、トーマスとローランのふたりが登壇し、しっとりと“Everything Is Everything”をプレイ。よほど気持ちよかったのか、ステージに出てこようとするメンバーを制してさらに数曲を披露。場内を親密なムードで包み、最後は再びメンバー全員が登壇し「ハウス・ライトを全部つけてくれ!」と客電を全開にしてヒートアップ。「これで本当に最後だよ。カモン!!」と“1901”がプレイされれば、AXは一気に最高潮へ!
間奏で一旦客電が落ちてトーン・ダウンするも、いつの間にかトーマスがフロア右サイドの柵の上に現れるというサプライズ的展開に。再び壇上に戻ったトーマス、今度は「カモン・ナップ!」とお客さんを次々に引っ張りあげて、遂にはこれ以上のぼり切れないくらい巨大なクラウドがステージ上に出現――と、もうメンバーがどこにいるのかさえわからないフィナーレだったけれど、それはこの上なく狂想的で、目映いくらいのハピネスに満たされたクライマックスだったのだ。(奥村明裕)
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