テイラー・スウィフト @ Zepp Tokyo

テイラー・スウィフト @ Zepp Tokyo
テイラー・スウィフト @ Zepp Tokyo
テイラー・スウィフト @ Zepp Tokyo - pic by Yoshika Horitapic by Yoshika Horita
先月末の第52回グラミー賞において、アルバム・オブ・ジ・イヤーなど最多4部門を受賞したばかりのテイラー・スウィフト。現代 ポップ・ミュージック・シーン最大のシンデレラ・ストーリーを生きる 弱冠20歳の彼女が、たった一夜限りではあるけれども、この上ないタイミングで初の来日公演を行うことになった。制服姿で会場に駆けつけた学生や、小学生ぐらいの子どもを連れた家族、もちろん多くの外国人オーディエンスも来場していて、さすがに幅広い層に支持されるポップ・スターといった印象のZepp Tokyoである。

バンド・メンバーが待ち構えるステージに、黒のスパンコール・ドレスに身を包んだテイラーが登場すると、嵐のような黄色い歓声がフロアを満たす。スタンド・マイクで“ユー・ビロング・ウィズ・ミー”を歌い出すのだが、歓声が凄すぎて歌が聴こえない。曲の途中で、PAが演奏全体の音量レベルを引き上げなければならないほどだ。テイラーは豊かな、ウェイビーのブロンドを振り乱して華やかなステップを踏んだりするのだが、それにも増して鳴り止まない歓声にむしろ驚き、半笑いで唖然とするような表情も見せていた。

「日本での初めてのショウにようこそ! 最高だわ。ありがとう! ありがとう!」と、極東の国でのオーディエンスの反応が予想以上だったのか、彼女はしきりに「ありがとう」を繰り返していた。バンドは彼女を含め8人編成という大掛かりなもので、カントリー・テイストを引き立てるバイオリンやエレクトリック・バンジョーの音色が彩り鮮やかだ。しかし、それ以上にステージをショウ・アップするような、特別な仕掛けは何もない。トップ・スターである彼女なだけに、これはちょっと意外だった。驚くほど「音楽だけ」なのである。テイラー・スウィフトという表現者の姿勢が、如実に表れたステージングと言えるだろう。

“ティアドロップス・オン・マイ・ギター”のイントロでは、歌の物語へと連なるモノローグ風のボーカル・パフォーマンスが挿入される。《気になる人がいて、カレは私の隣の席に座っている人で、毎日おしゃべりしているの。カレのガールフレンドについて、なんだけど》。歌詞の内容は切ない恋物語なのだが、そんな風に笑わせてからスタートするのだ。うまい。物語に引き込まれる。演歌番組の名調子ナレーションみたいなもので、ある意味、伝統的な技法なのだけれど、こういうパフォーマンスが彼女の歌に多くの人を巻き込んでいるのかも知れない。

アルバムのタイトル・トラックである“フィアレス”で大きなシンガロングを誘った後、ささっと舞台袖に姿を消した彼女は、一瞬で赤のスパンコール・ドレスに着替えて“フォーエヴァー&オールウェイズ”へと繋ぐ。そして一人で披露した“ホワイト・ホース”。これが、レコーディング・バージョンよりもゆったりとしたテンポで語り聴かせるような素晴らしいパフォーマンスで、今回の公演のハイライトと言える場面であった。テイラーはたまたまカントリー・ミュージックに魅せられた、どこにでもいる二十歳の、普通の女の子なのだ。そんな等身大の彼女の姿が、ステージ上で明らかになった瞬間だった。

配信でリリースされたニュー・シングル“トゥデイ・ワズ・ア・フェアリーテイル”も披露され、本編ラストは若き葛藤と戦うロックなナンバー“シュドゥヴ・セッド・ノー”だ。本物のカントリー・ミュージックを求めてナッシュビルを目指す女の子がいれば、理想のスケーティングを求めてロシアへと向かう女の子もいる。自分自身でリスクを背負った女の子たちの戦いを、誰も止めることはできない。アンコールでまたもや、今度はシルバーのドレスへと着替えたテイラーは、「ニッポンサイコー! また私に会いたいと思う? みんなは私を支えてくれる、トーキョーの友達よ!」と満面の笑顔で告げていた。悲鳴のような場内の歓声は、客電が灯されるまで、絶えることがなかった。(小池宏和)

1. You Belong With Me
2. Our Song
3. Tell Me Why
4. Teardrops On My Guitar
5. Fearless
6. Forever & Always
7. White Horse
8. Fifteen
9. Today Was A Fairytail
10. Love Story
11. Should’ve Said No

EC.Picture To Burn
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