CoolRunnings@両国SUNRIZE

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1月20日に、JACKMAN RECORDSからミニ・アルバム『HYBRID HUMAN』をリリースしたCoolRunningsのレコ発ツアー、初日ワンマンである。改めて紹介しておくと、彼らは2008年にRO69のコンテスト、「COUNTDOWN JACK」に出場し、見事投票1位でCOUNTDOWN JAPAN 08/09の出場権を獲得した4ピース・バンド。そしてこれも繰り返し報じられていることだが念のためおさらい。バンド名は「クールランニング」と読みます。「ス」は要りません。両国のビルの地下にある、いかにも町のライブハウス、といったナイスな雰囲気の会場に着くと、受付に列を成しているオーディエンスたちが。チケットもめでたくソールド・アウトだそうだ。個人的にはCoolRunningsのステージを観るのは初めてなので、盛況ぶりにも煽られて期待が募る。

ステージを隠して映像を映し出していたスクリーンがせり上がると、いよいよCoolRunnningsの登場である。歓声の中でおもむろにポジションにつき、楽器を構える4人。フロントマンの鈴木がゆっくりとコードを鳴らして歌い始める。オープニング・ナンバーは新作のタイトル曲“Hybrid Human”だ。CDに収められたそのままの、伸びやかでよく通る歌声が届けられる。そこに他のパートが加わって一体となってゆくバンド・サウンド。情報化/データ化されてゆく現代生活への憂いが込められたこの生々しい歌を聴くと、今の時代にロック・バンドをやるということの有効性を、いきなり突きつけられる気がする。

『HYBRID HUMAN』は、彼らのディスコグラフィーの中では3枚目となるミニ・アルバムだ。今回のステージは新旧の楽曲が織り交ぜられて進んでゆく。疾走するナンバーではフロアからハンド・クラップが自然に沸き起こり、4人の演奏を支えたりもする。いいムードだ。オーディエンスの中に知人の顔を見つけたのか鈴木、「わ。普通に驚いちゃった。今日はこんなに集まってくれてありがとうございます。始まる前は心配で、何回もこっち覗いちゃいました。あと、今日はトイレが近い」と告げて笑いを誘う。

CoolRunningsを観ていて面白いのは、メンバーそれぞれに独特の二面性のようなものが現れているということだ。巧みなフィルで楽曲そのもののフックを構築するドラマーの杉本は、口数は少ないが多くの場面で楽しそうな笑顔を浮かべている。髪を振り乱してパワフルなベースを聴かせるつゆは、しかし曲間では一変してあどけなさの残る顔(最年少21歳)ではにかんでいたりする。ひときわ小柄なギタリストのウルフは、見た目はいかにも部屋で一生懸命に練習していますというギター小僧然とした風体なのだが、テクニカルなプレイにせよノイジーなのにやたらクリアで広がりのある音像にせよ、どこか熟練のエンジニアのような面も持ち合わせていて不思議な感じだ。そしてフロントマン・鈴木。彼の歌は悲しみの奥底にあるものを見据える内容がほとんどなのに、目が内を向いていない。むしろやたら人懐っこくて、外交的だ。「個」の内にあるべき感情をメロディと言葉に変換して人に伝える回路が、異常に発達している感じ。率直な想いの描写、次から次へと溢れ出す美メロに、恐ろしいほど作為的な部分が感じられないのである。それがこのバンドの「エモーショナル」の根幹となっている。

「楽しいね!心の叫びだから」とメンバー全員、すぐに笑みも零れる。歌や曲調はシリアスだが、そのシリアスさに溺れない自然なスタンス。楽しいから笑えるのだ。うわべだけのポーズを後生大事にしてがんじがらめになっている人間には、なかなかこれは出来ない。作品化されていない楽曲も絡めて、ステージではバラエティ豊かな音楽性が発揮されてゆく。「家族とか仲間とか、大切な人、いますよね。それがもう会えない人だったりして。俺は割と奇跡とか信じてるんで、死んだ人も見てると思ってて、いつか届くんじゃないかと思って歌ってます。もし良かったら、皆さんもそういう大切な人のことを想って聴いてください」と鈴木が語り、彼らのファースト・ミニ・アルバムからの楽曲、サウンドだけではない、物語としてスケールの大きな“約束”が届けられる。

本編の最後には「俺らみたいな夢見がちな人はバイトしてても不安だけど、音楽やってて本当によかった、と思いました。今日は俺らが支えてもらったんで、もっとレベルアップして、今度は皆さんを支えられるように、全員で力を合わせて頑張ります」というMC ののち、“月”で杉本がオーディエンスのスウェイを煽る。これが快感だったのか、CoolRunningsはアンコールの最後にも再び“月”をプレイしてスウェイを求めるという茶目っ気を見せて、今回のステージは幕となった。

彼らのレコ発ツアーはこの後、2/10から3/30まで、各地で計17公演が行われる予定だ。この人懐っこい感情のキャッチボールを、ぜひとも体感してみて欲しい。(小池宏和)

セットリスト
1.Hybrid Human
2.EasyAnswer
3.Music
4.Stage
5.リアル
6.Cause
7.Locus
8.equal
9.Repeat
10.約束
11.月

アンコール
12.夢物語
13.circle
14.月
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