ライブレポート

2010.01.26 THEE MICHELLE GUN ELEPHANT @ 恵比寿リキッドルーム

2003年10月11日幕張メッセの解散ライブの上映会で、全国13ヶ所のライブハウスをツアーする(※うち12月25日の京都磔磔は、ラストツアーの2003年9月25日磔磔のライブを上映)、『THEE SCENE –LAST HEAVEN 031011-』のファイナル、恵比寿リキッドルーム。

まず、ブログでも書いたが、音が異常によかった。PAのところにエンジニアがいて、最初から最後まで卓を調整していたので、入っている音を普通に流したのではなく、通常のライブみたいにいったんPA卓に落としてエンジニアリングしながら音を出していたのではないかと思う。
そして、映像も異様によかった。これ、37,000人が集まった超大会場ライブであり、そうするとその何万人もの人の頭の上をカメラがダーッ、とか、人の波のはるか遠くにステージがあるさまをフロアの最後方から、とか、そういう画をばんばん使いたくなるのが人情だと思うが、というか僕だったらそうしてしまうと思うが、そうではなく、とにかくメンバー4人をしっかり見せる編集だった。前述のような、大会場ならではの画もあったけど、それは必要最小限、まるでライブハウスでやっているみたいに、執拗に4人の動きや表情を追う構成。
で、それが大成功していた。ほんとにライブだった。でもそれは、映画ではなくライブだった、のではなく、映画として優れていたからほんとにライブのようだった、ということなのだと思った。
セットリストは以下。


1.ドロップ
2.ゲット・アップ・ルーシー
3.バードメン
4.デッド・スター・エンド
5.strawberry garden
6.アッシュ
7.フリー・デビル・ジャム
8.デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ
9.I was walkin’&sleepin’
10.ブラック・タンバリン
11.深く潜れ
12.カルチャー
13.ブギー
14.赤毛のケリー
15.ゴッド・ジャズ・タイム
16.エレクトリック・サーカス
17.ミッドナイト・クラクション・ベイビー
18.ベイビー・スターダスト
19.スモーキン・ビリー
20.リリィ

アンコール1
21.GT400
22.リボルバー・ジャンキーズ
23.ジェニー

アンコール2
24.世界の終わり


僕は、このライブを観ている。当時ジャパン編集部にいて、このラスト・ツアーの特集のページの編集を担当して、10月2日の新潟PHASEと、このメッセは行った。メッセは、その特集でライブレポも書いた。2003年11月号です。
なので、観ながらほんとにいろんなことを思った。というか、「あ、これ憶えてる」というのと、「うわ、こうだったっけ。全然憶えてなかったわ」というのが、入り混じっていた。
登場時、チバがサングラスとストライプのスーツ姿だったのは、全然憶えていなかった。1曲目からガーンととばさずに、ミドル・テンポの“ドロップ”で始まったのは、なんとなく憶えていた。3曲目“バードメン”の間奏で、アベが頭上にギターを掲げるあのポーズを見せたのは憶えてたけど、その前の“ゲット・アップ・ルーシー”でやったんだと間違えて記憶してしまい、そうライブレポに書き、読者から指摘されて次号でお詫びと訂正を載せたのも憶えています。バカ。失礼しました。

アンコールの1曲目が“GT400”だったことや、チバが「バイバイダニー、バイバイビリー、バイバイジェニー、バイバイケリー」と、自らの曲のタイトルになっているキャラクターたちに別れを告げたことや、“リボルバー・ジャンキーズ”の頭がレゲエ・バージョンになっていたことや(これライブでよくやってましたよね)、“ジェニー”の頭でキュウちゃんが「ジェニーは、どこだあああ!」と叫んだのは、憶えていた。二度目のアンコールの最後の曲が、メジャー・デビュー・シングルの“世界の終わり”だったことも憶えていた。でも、チバがギターを置いてハンドマイクで歌った曲が、こんなに多かったのは、憶えていなかった(6,7曲ありました)。

あと、憶えてなかったわけじゃないけど、今観ると印象が違ったこと、というのもある。
そのジャパンのライブレポを読み直すと、僕は「アベは、終始、最も動きが少なく、無表情に見えた」と書いている。その時はそう感じたんだろうけど、この映画で観ると、そんなことない。むしろ、アベが最もすごかった時期でありミッシェルが最もすごかった時期であった『ギヤ・ブルーズ』の頃(と僕は思っている)みたいな、絶好調な、鬼気迫る、神がかっているとすら言える、ギター・プレイに思えました。表情もいろいろありました。

で。その表情のことであり、『ギヤ・ブルーズ』の時期と大きく違っていたこと。それが、僕がこの日のライブで、最も強く憶えていたことだった。
16曲目、ミッシェルのラスト・シングルになった“エレクトリック・サーカス”。この曲の途中で、スクリーンにアップで映し出されたアベフトシの表情。
本当に、すさまじい表情だった。「うれしい」「楽しい」方面以外の、あらゆる感情が頭の中でスパークしたみたいな、明らかに無表情ではないんだけど、でも「こんな表情」と言葉で形容するのが不可能な表情。なんでこの表情になっているのか、すごくよくわかる気もする、でも本当の芯のところは本人にしかわからないんだろう、と思わせる顔。
10歳くらいで音楽を好きになってから現在に至るまで、あんなすさまじい表情でギターを弾く人を見たことがない。と、当時35歳だった僕は思ったが、41歳の今も同じことを思った。

ってこれ、彼が亡くなってしまったので、書いたわけではない。当時、ジャパンの原稿にもそう書いたんだけど、そのライブレポは4人のクロス・レビューであり、僕の原稿があがったのは3番目で、前のふたりが既にアベの表情について書いていたので「くどいからおまえは書かなくていい」と、その部分をばっさり切られてしまったのです、当時の編集長に。抵抗したら「うるせえ!」とか怒鳴られて、そこで話を打ち切られたのを憶えている。
それが心残りだったので、今書きました。まさか6年後に書けるとは思わなかった。ちょっとうれしい。


とにかく。歌、ギター、ベース、ドラムからなる、ロックンロールという音楽手法は、あるいは表現のフォーマットは、ここまでとんでもないことができる。ただ、才能や実力も不可欠だけど、それだけではなく、運とか偶然とかタイミングとか化学反応とか……こういうことあんま言いたくないけど、人智の及ばない、それこそ神の力みたいなことまでが、すべて合わさった瞬間。そんな瞬間にしか、その奇跡は起こりえない。
ミッシェルは、それが現実に起きた、ありえないバンドだった。ということを、観ながらずっと思い出していた。

これをアップした1月27日現在、RO69ではミッシェルのライブ映像の配信、やってます。期間限定なので、ぜひ観てください。ミッシェルよく知らない方も、観れば、僕がこうしてうだうだ書いたことが、わかってもらえると思います。(兵庫慎司)


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