吉井和哉 @ 日本武道館

吉井和哉 @ 日本武道館
「吉井武道館へようこそ! 今日は吉井和哉ソロの歴史グレイテスト・ヒッツです。世間の評価は低いですが、隠れファンもめちゃ多い(苦笑)。吉井和哉のナンバーを十二分に堪能してもらいたいと思います!」

今日は恒例の武道館公演の日。ソロ史上最高傑作とも言えるアルバム『VOLT』を世に出し、ソロ史上最高のツアー『宇宙一周旅行』を回った充実の年となった2009年を締めくくる総決算とも言えるライブだ。

ステージバックは座席が黒いシートで覆われているのがむき出しになって見えている。スクリーンもない。いたってシンプルなステージセットだ。会場暗転とともに割れんばかりの大歓声が沸き起こると、特にSEもなくジョシュ・フリーズ(Dr)、ジャスティン・メルダル・ジョンセン(B)、ジュリアン・コリエル(G)、鶴谷崇(Key)、日下部正則(G)の5人がゆっくりとステージに現れ、それに続いて紫の上下セットアップでキメた吉井和哉が手を振りながら登場。吉井がアコースティック・ギターを抱え、一発目に鳴らしたのは“JUST A LITTLE DAY”。なんともナチュラルすぎる始まり方。まったく飾らず、素の吉井和哉を直球ストレートにさらけ出している。しかも、2曲目の“ALL BY LOVE”でいきなり武道館のマックスに明るい照明(ライブの一番クライマックスの時にお客さんの顔がよく見えるくらいに会場全体が明るくなるあの照明です)で驚いた。今日はソロとしての吉井和哉をなんの飾りもなく全部を見せていくライブなんだなと思った。

今回の年末ライブでは吉井がソロになってからのアルバム制作に参加しているジョシュ・フリーズ(Dr)、ジャスティン・メルダル・ジョンセン(B)が来日し、バンド・メンバーとして参加しているのが一つの見所でもあるのだが、彼らが鳴らすサウンドが本当に素晴らしかった。もう圧巻の一言。度肝を抜く迫力満点のジョシュのリズムには何度も何度も歓声が沸き起こっていたし、アクションが激しいジャスティンのベースはとにかく重厚。普段、レコーディング・メンバーとして吉井をサウンド面から支えている心強いメンバーがライブに参加となれば、鳴らす音はやはり最強としか言いようがない。

「これは俺の曲なんじゃないかと思ったくらい吉井和哉っぽい曲です」と言って、ジョン・レノン・スーパーライブでも演奏したジョン・レノンのカバー“Yer Blues”も披露。歌詞はジョンの詞にできるだけ忠実に吉井がオリジナルの日本語詞をつけたものだ。「歌詞は非常に後ろ向きなことを唄っていますが、俺にとっては『生きていたい』という気持ちが伝わってくるナンバーです」といって、喉をつぶしてコブシを効かせたような歌声と痺れるようなブルース・ギターを聴かせてくれた。そのまま哀愁漂うブルース・ナンバー“ウォーキングマン”へと雪崩れ込んでいったのだが、この流れが本当に痺れた。自らでギターを弾くことに目覚め、自らのプレイでしか表現しえない作品を創り上げたことがいかに彼のソロ人生で大きな出来事だったかを実感させられる。それくらい伸び伸びとしたプレイが冴え渡っていた。

「今日は僕が初めて人前で歌を歌った日でもあります。同時に愛すべきバンド、THE YELLOW MONKEYの生誕20周年でもあります」と12月28日の所以に触れた後、バンドを解散してから、「もう1度歌おうかどうか、本当に歌っていこうかどうか悩んだ歌を聴いてください」と言って“CALL ME”を歌い上げた。今の姿があるからこそ、自信を持って苦悩していた過去の自分もさらけ出せるという人間としての強さを感じた。その後は、“I WANT YOU I NEED YOU”で生中継のカメラを独り占めして妖艶に歌ってみたり、“魔法使いジェニー”で左右サイドのオーディエンスの近くまで駆け寄ったり、バーニーにむちゃぶりしてみたり、と盛り上がり必至のアップ・ナンバーでやりたい放題攻め立てて、いつものように武道館中を興奮の渦に巻き込んだ。

再びアコースティック・ギターを握り、「僕のソロ・ミュージシャン生活は決して順風満帆なものではなくて、自分のやりたいことをすぐにたくさんの人たちには理解してもらえなかったですが、ここにいる人たちには理解してもらえていると思います。みなさんの大切な人に贈ります」と“BEAUTIFUL”を届ける。これまでの紆余曲折のソロ活動を変わらずずっと見守ってきたファンへの恩返しのような、ものすごく優しい愛に満ち溢れていた。拳を突き上げてこれからも突き進むことを高らかに宣言するかのような“ONE DAY”、疾風のごとく駆け抜けるように“ビルマニア”を投入して会場を上げに上げた後に、本編ラストを“ノーパン”で締めくくるところが実にSっ気たっぷりな吉井らしい。フライングVを握り締め、白い閃光が稲妻のようにバチバチと光る中、ギターをかき鳴らし悦に浸っている姿でラストを迎えるなんて、今の吉井だからこそ成立し得たことなんだと思う。

アンコールでは、久々に“BELIEVE”が演奏された。《I BELIEVE IN ME 振り向いても 後ろには通り過ぎた景色があるだけさ》と歌うように、まさにこれまでのソロ活動の道のりを振り返って、その景色をひとつひとつ私達に見せていくようなライブだったと思う。そして、クライマックスを迎えた“FINAL COUNTDOWN”で吉井は力強くこう誓ってくれた。「来年の12月28日の前には新しい曲が聴けるかもしれません! これからも知る人ぞ知るで構わない、君達の魂に届くような曲を創りたいと思います!」と。ソロ活動の中で『VOLT』という一つの答えに辿り着いたからこそ実現した今夜のグレイテスト・ヒッツ。「手探りの状態でアメリカに行って、素敵なミュージシャンと出会って、また音楽が出来ていることを嬉しく思います」と心からの感謝を届けるように“Shine and Eternity”でラストを迎えた。そこには本当に満足感と多幸感に満ち溢れた吉井のキラキラとした笑顔が輝いていた。ソロとしての全歴史を紐解いてすべてを解き放った今日のライブから、また新しく始まる道のりがどんなものなのかこれからも追っていきたいと素直に思えるいいライブだった。(阿部英理子)

YOSHII BUDOKAN 2009

1.JUST A LITTLE DAY
2.ALL BY LOVE
3.Do The Flipping
4.LIVING TIME
5.黄金バッド
6.Yer Blues
7.ウォーキングマン
8.LONELY
9.CALL ME
10.FALLIN' FALLIN'
11.I WANT YOU I NEED YOU
12.魔法使いジェニー
13.BLACK COCK'S HORSE
14.BEAUTIFUL
15.TALI
16.ONE DAY
17.ビルマニア
18.ノーパン

アンコール
1.BELIEVE
2.ルビー
3.WEEKENDER
4.FINAL COUNTDOWN
5.Shine and Eternity
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