真心ブラザーズ @ 中野サンプラザ

YO-KING「今年、20周年を、おかげさまで楽しく迎えることができました! こんなさあ、楽しいことだけやって20年やってこれてさ、幸せだと思わない?」
桜井「思いますよ! そしてこの満員のお客さん!」
YO-KING「マネージャーが『2日間やりゃあよかった!』と言ってました!(笑)」

というMCの通り、真心結成&デビュー20周年を、新作EP『タンデムダンディ 20』/ベスト・アルバム『GOODDEST』/そして「“タンデム”NIGHT(基本的に2人だけで演奏)」と「“THE”NIGHT(デビューから94年までの「THE真心ブラザーズ」名義の曲だけ演奏)」という異色の20周年記念ライブ『元祖 渋谷系(嘘)』、という形でファンと一緒に祝い倒してきた真心ブラザーズ。この日はそんな20周年イヤーの最後を飾るワンマンにして、『GOODDEST』を引っ提げての全国ツアー『THE GOODDEST TOUR』のファイナル公演! もちろん満員御礼!……というシチュエーションだけでも盛り上がるには十分だが、ほぼオンタイムの開演早々“新しい夜明け”“EVERYBODY SINGIN' LOVE SONG”のゴージャス・ソウル2連発とくれば、気づけば会場は手拍子とコール&レスポンスが高らかに響き渡る高揚感MAXの一大祝祭空間へと自然に変わっている。そして、その「気づけば」「自然に」を、オーディエンスの誰1人置き去りにすることもなく、観客側の気合いや根性を必要とすることなく不言実行してしまうのが、YO-KINGと桜井(と長年の盟友バンド=MB's)がここまでじっくり育て上げてきた唯一無二のポップ・ダンディズムなのかもしれない。さらに、この日のライブが最も素晴しかったのは、「20年間ファンと培ってきた楽しさが満載のステージだったから」でもあるのだが、ひいき目なしに観て「今日これで初めて真心を観た人でも絶対に楽しいに違いない!」と確信できる無限の訴求力を持ったライブだったから、だ。

桜井「今日、あなた歌すごいですね!」
YO-KING「なんかね、『あーっ!』ていう声がアンプみたいに腹ん中で共鳴してるんだよね」
桜井「それが中野サンプラザに共鳴して、中野サンプラザがYO-KINGの腹ん中みたいになってる!」

そんなふうに2人がMCで言ってしまうくらい、ただでさえソウルフルでラフでホットなYO-KINGの歌がこの日は絶好調。“サティスファクション”“傷だらけの真心”を冬の夜空へ向けて熱く放射するようなYO-KINGのボーカルは、本編最後の“拝啓、ジョン・レノン”でも、いやWアンコールの“RELAX~OPEN~ENJOY”まで行っても、衰えるどころかますますエネルギーを増して響いていた。そして、「そんなあなたに対抗して、私も歌ってよろしいでしょうか!」(桜井)、「……心臓に毛が生えてるね!」(YO-KING)、「しかし! 『GOODDEST』の33曲の中には、私の歌唱の曲は1曲も入ってない! 選曲会議でも、誰も疑問にも思わなかった!」(桜井)……と、あえてその稀代の名ボーカリストに正面から対抗して桜井が“メトロノーム”をしみじみと披露したり、YO-KINGのお株を奪って“BABY BABY BABY”を歌ってみせたりするのも、長年の相棒ならではのご愛嬌だ。活動休止&再開を経てますます磨きがかかった2人の漫才チックなコンビネーションに加え、MB's・首藤晃志(Sax・Flute・Vo)の「(客席に向かって)あなたたちは乳母です! あなたたちがあたたかく見守ってくれたから、この2人はピーチクパーチク歌ってこれたわけです! 今では2人ともこんなに大きくなりました! 中野サンプラザは乳母の集まり、ウーバーワールドです!」という忘年会挨拶的な演説があったり、アンコールではヒップホップ・スタイルのMC SAKU(桜井)とともにMC ICHIRO(ベース:上野一郎)、MC KOSHI(首藤)としてステージをかき回したり……とMB's含めメンバー総出で会場を沸かせにかかるのである。楽しくないわけがない。

そのアイデアの赴くままに全方位的に楽曲を発信しながら、“どか~ん”も“モルツのテーマ”も“ENDLESS SUMMER NUDE”も“拝啓、ジョン・レノン”も、最新EP曲“Song of You”も含め、20年かけてそのすべてを真心という途方もなくでっかい座標に収めてしまったYO-KINGと桜井。「ここではないどこか」のエンターテインメントではなく、僕らの日常そのものを震わせ輝かせていくだけのヴァイブが、この日のステージからは確かに滲み出していた。「20年前の春、冷やかし半分で始めた僕らが、今ではこんな素晴らしいお客さんの前で演奏できることを、本当に嬉しく思います! 強欲な僕たちは、もっともっと音楽をやるつもりでいます! 新曲いっぱい作って、面白いライブをやろうと思います!」という桜井の言葉に、ひときわ大きな歓声が広がっていった。

「ありがとう20年!」と、アンコールでYO-KINGも叫び上げていた。「今日だけと言わず、20年ずっと楽しかったです! どうもありがとう!」……《声に心を委ねたんだ 放ったら 届いたら どうか笑って こっち向いてくれよ》という“Song of You”のフレーズを、まさに歌の化身のように熱く強く放っていくYO-KINGの姿に、胸が熱くなった。2時間40分に及ぶライブは“RELAX~OPEN~ENJOY”のゆったり豊潤なサウンドとともに大団円!(高橋智樹)


[SET LIST]
01 新しい夜明け
02 EVERYBODY SINGIN' LOVE SONG
03 愛のオーラ
04 サティスファクション
05 傷だらけの真心
06 メトロノーム
07 うみ
08 マイ・バック・ページ
09 素晴らしきこの世界
10 スピード
11 モルツのテーマ
12 (男・桜井が歌う)BABY BABY BABY
13 どか~ん
14 JUMP
15 Dear, Summer Friend
16 ENDLESS SUMMER NUDE
17 愛
18 空にまいあがれ
19 拝啓、ジョン・レノン

EC1-1 I'm in love
EC1-2 All I want to say to you
EC1-3 Song of You

EC2 RELAX~OPEN~ENJOY
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