フラワーカンパニーズ @ SHIBUYA O-EAST

フラカンが不定期に行っているイベント『シリーズ・人間の爆発』。直前まで伏せられていたゲストは、2人ピーズ、そしてなんとスピッツ。ピーズもすばらしいが、このキャパでスピッツを観れることなんて、そうありません。僕もここで観るのは、昔々、この地に建っていたON AIRというハコで、スピッツが半年間マンスリー・ライブをやった時以来です。“ロビンソン”よりも前の話です。あ、あと、4~5年前だっけ、ぴあプレゼンツのアコースティック・イベントで、マサムネとテツヤが弾き語りをやったのも観た。確かシロップ16g(当時)の五十嵐も出ていた。まあ、それくらいだ。

そもそもは、一昨年の夏、ZEPP TOKYOで行われたスピッツの20周年イベントのゲストでフラカンが出演。その時圭介がMCで「フラカンの20周年の時は、スピッツに出てもらおう」と口走り、満員のスピッツファンにドン引きされる。続いて昨年の夏、同じくスピッツ主体のイベント「ロックロックこんにちは」の仙台編にフラカンが出演、その打ち上げで酔っぱらったマサムネが「フラカンの20周年、出るから」とメンバーにもスタッフにも相談なく勝手に宣言、グレート「今、言いましたね! ききましたよ!」と念を押しまくり、決まったそうです。

この「シリーズ・人間の爆発」、いつも転換中にフラカンが出てきてMCを行う。前説もやる。で、その前説で、そのいきさつを説明しようとした圭介だったが、記憶力もトーク力もぐだぐだで、「去年ZEPPで――」「違う、一昨年」「さいたまスーパーアリーナで」「違う違う」と何か言うたびに訂正された挙句、「もういい、俺が説明するから」とグレートにとって替わられました。そのおかげで、以上のいきさつが明らかになりました。

そもそも昔、今と違って、周囲のバンドたちや業界にあんまり評価されず、さみしーい状況だったフラカンを「あのバンドはいい!」とプッシュしてくれたほぼ唯一の存在、それがマサムネだった。そんなふうにひいきしてくれる先輩、当時はマサムネと斉藤和義だけだった、とすら言ってもいい。で、それから十数年が経っても、こうして、本来ライブをやる時期ではまったくないにもかかわらず、出てくれるわけです。ありがたい限りです。
「その『ロックロック』の打ち上げの時、草野がフラカンチームのテーブルに行っちゃって、戻ってこなくて。で、やっと戻ってきたと思ったら『フラカンとライブやることに決めてきたから』『ええっ!?』って」。以上、演奏終了後のトークコーナーでの、田村の発言。


スピッツ

というわけで、そのスピッツから。セットリストはこうでした。

1.バニーガール
2.たまご 
3.8823
4.靴下
5.愛のしるし
6.メモリーズ・カスタム
7.けもの道

という、「何これ? 夏フェス?」と言いたくなるような、ワンマンだったらいわゆる「田村が大暴れする時間」に相当するような、超サービス・セット。明らかに、フラカンのファンに喜んでもらうことを最優先した内容。当然フロア大喜び、大半の客がスピッツの出演発表前にチケットを買ったにもかかわらず、もうなんか、ただのスピッツのワンマン状態。フロアで腕、上がる上がる、揺れる揺れる。

あと、びっくりしたのは、演奏そのものがすっごくよくて、グルーヴが出まくっていたこと。何が「びっくり」かというと、前にもここで書いたことがあるが、スピッツって稀代の「ライブを続けていないとダメになってしまうバンド」なのです。長年のファンは、みんなご存知だと思うが。
ツアーの1本目はいつも「……うわあ」「……あちゃあ」というような状態。しかし、2本、3本、と回数を重ねるうちにどんどんよくなり、ツアー前半戦の最後には、もうほとんど日本有数のライブ・バンドな、ほんとにすばらしいことになる。
しかし。いったん中休みをはさんで、ツアー後半戦が始まると、きれーにリセットされて、元に戻ってしまっているのだ。で、2本、3本と回数を重ねるうちに、また……ということを、20年以上にわたってくり返しているバンド、それがスピッツなのです。
っていう点で、こういう、前にもあとにもライブがない、この1本だけの時って、まずくない? と、心配していた。なので驚いたのでした。異様によかった。長いことこのバンドのライブを観ているけど、さいたまスーパーアリーナの次にびっくりしたステージだったかもしれない。

なお、4曲目の“靴下”はフラカンのカバー。昔出したシングルです。「何でこれがシングル?」と、当時も今も誰もが首をかしげる1曲なんだけど(フラカンってそういうシングル多い。“LOVE ME DO”とか)、どうやらマサムネはお気に入りらしく、この曲をセレクト。
そして、ゲスト・ギタリストとして竹安を招き入れ、一緒にプレイ。竹安、後半、長い長いギターソロをキメる。クジヒロコ(おなじみのサポートメンバー)の鍵盤、崎ちゃん&田村のリズム隊、マサムネ&テツヤのバッキング・ギターを従えてソロを弾きまくる竹安は、本当に気持ちよさそうでした。むこう3年分くらいの幸せを、この1分半くらいで使い尽くしたなあ、こいつ。そう思いました。
あと、鈴木圭介さん。演奏終了後のMCで、「“靴下”最高でした! もうこの曲、“ロビンソン”と交換してください!」と、まったく言わなくてよいことを口走り、スピッツ、超満員のお客さん、自分以外のフラカンのメンバー、と、この場にいた全員を、もうこれ以上ないくらい引かせました。


2人ピーズ

ちょっと前に北海道に一緒にツアーに行ったりするなど、ここ数年フラカンと共演する機会の多いピーズ。なお、その北海道のアンコールで一緒にステージに立つ模様、今ピーズがワンマンライブ会場限定で販売しているライブDVD『Theピーズ OFFICIAL BOOTLEG DVD』に、ちらっと入っています。
今日は、佐藤しんいちろうがthe PILLOWSのツアー中につき、アビさん=エレキギター、はる=アコースティック・ギターと歌、という編成で、サブステージに登場。
セットリストはこれ。

1.いきのばし
2.いちゃつくふたり
3.実験4号
4.カラーゲ
5.発熱の男
6.サイナラ

全部で6曲なのに、“実験4号”と“サイナラ”を入れているあたり、これもかなりのサービスセットと言えましょう。
で、もっとサービスだったのが、いでたち。2人とも、裸にオーバーオール。アビさん、白。はる、紺。出てきた瞬間、フロア中大笑い。アビさんは「グレートアビコ」と名乗って、前述のカップリング・ツアーでもこの格好になったりしていたけど(DVDにも入っています)、はるまで着るとは。
ちなみにアビさん=ムキムキ、はる=ガリガリ、でもあります。はる「ブルワーカーの広告の、使用前と使用後みたい」。しかし、「ブルワーカー」がわからなかったらしく、笑ってたの私だけでした。と、周囲を見回して気づきました。フラカンのファンも若返ってるんだなあ。とか思いました。ご存じない方は各自調査、するほどのことではないと思います。

なお、4曲終わったところで、はる「いやあ、緊張してるよ。かませ犬ではないと思いたいけどね」とMC。そして、「こんな高い声出ないけど、オリジナルどおりのキーでいくぜ!」と、フラカン“発熱の男”のカバーを披露。
これもまた渋い選曲だなあ。しかし、ピーズがこれを選ぶというのは、すっごくよくわかる。あの歌詞をはるの声で聴くのは至福の体験でしたが、あとでブログを見たら、「本番は歌詞トびまくりチャレンジ失敗、ガッカリ残念、すんません」という記述あり。よかったんだけどなあ。

あと、この日のピーズには、別の意味で感慨深いものもあった。この、はるがベースをアコギに持ち替えた2人ピーズ、昔……いつだっけあれ、今調べたら1993年でしたが、ツアー直前に2代目ドラマーのウガンダが脱退、そのまま2人でツアーに行った時の形なのです。
その時、2人に取材をオファーして、短い脱退インタビューをしたのを思い出しました。で、あれから16年経って、その16年前に観ていた3バンドを、今もこうして観れていることなどを思って、ついしみじみしたりもしました。


フラワーカンパニーズ

で、フラカン。もうここまでで大満足だし、フラカンのライブレポ10月17日に書いたばかりだし、いいよね別に書かなくても。おしまい。と言いたいが、そういうわけにもいかないので、一応なんか書きます。

1.恋をしましょう
2.空想無宿
3.ロックンロールスターダスト
4.あの日見た青い空
5.はぐれ者讃歌
6.深夜高速
7.大人の子守唄
8.虹の雨あがり
9.YES,FUTURE
10.アイム・オールライト
11.ホップ ステップ ヤング

アンコール
12.真冬の盆踊り

アンコール2
13.さよならベイビー

という、新旧取り混ぜたセットリスト。1曲目がいきなり“恋をしましょう”というあたりに、気合いのほどがうかがえます。その気合いのまんま最後までつっ走った、完璧なライブだった。まあ、最近のフラカンは、ライブですべることは皆無なんだけど。
5曲目“はぐれ者讃歌”で、アビさんがゲストで登場。フロアもステージも大笑い。全身真っ白で全身ギンギンな、エルヴィス・プレスリーのコスプレ。頭はリーゼント。もみあげは、黒マジックでペイント。で、ギターを弾きまくって、颯爽と去っていった。はるのブログに、その写真がアップされています。

アンコールでは、フラカン×スピッツ×ピーズ、全員総登場。ツインドラム、ツインベース、トリプルギター(テツヤ、マサムネ、竹安)、キーボード、あと圭介。クリスマス前ということで、マサムネは「せっかく渋谷に来たから、東急ハンズで買った」というトナカイのかぶり物を頭部に装着。
で、このメンバーで“真冬の盆踊り”。超満員のフロア、当然アガりまくりでした。なお、ひき続きオーバーオール姿のはると、エルヴィスアビコは、手ぶら。圭介に「アビさん、ギター弾かないの?」と言われても意に介さず、曲に合わせてフリンジ(あの両腕からびっしり伸びてる糸みたいなの)をぶんぶん振り回したり、はると二人でジャンプしまくったりして、場を盛り上げておられました。

ダブルアンコールは「このまま終わると、アビさんの印象だけ残っちゃうから」(グレート)と、4人で“さよならベイビー”をやってシメ。
あと、次の東京のワンマン、今、日本各地で展開している「2デイズでアンコール以外は1曲もかぶりなし」シリーズの東京編、4月24日・25日恵比寿リキッドルームが、発表されました。

その前に。12月31日幕張メッセ、COUNTDOWN JAPAN09/10のMOON STAGEで、カウントダウンを務めます!
というのを、言うかなあと思ったら、言わなかった。なんでよ。終わったあと、楽屋に行ってきいたら、グレート「あ、そうだ! 忘れてた」圭介「そうだあ、言えばよかったね」だそうです。えー、Superfly、the telephones、鶴、と、裏がいずれも大変に強力なので、はっきり申し上げて、私、心配しております。ご参加のみなさん、ぜひ。(兵庫慎司)
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