ニッケルバック @ 新木場STUDIO COAST

ニッケルバック @ 新木場STUDIO COAST
ニッケルバック @ 新木場STUDIO COAST
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ニッケルバック @ 新木場STUDIO COAST
ニッケルバック @ 新木場STUDIO COAST - pic by Yoshika Horitapic by Yoshika Horita
これまで全世界で3,000万枚に上るアルバム売上げを記録し、アメリカでは2000年以降海外アーティストとしてはザ・ビートルズに次いで2番目に売れているというカナダ発の超大型バンド、ニッケルバック。今夜のライブは2002年の初来日以来、実に7年ぶりの日本公演となる。2日後の11月27日にも同じ新木場STUDIO COASTで公演が予定されているが、当然のことながらチケットは両日ともソールド・アウトした。

開演時刻を過ぎ、ぱんぱんに膨れ上がった会場に流れていたBGMの音量が徐々に上がってほとんど轟音の域に達すると、一度ステージが暗転してからメンバーたちが登場。フロアのボルテージは文字通り最初から振り切れて、うなるような大歓声が上がった。そしてすぐに2008年の最新アルバム『ダーク・ホース』のオープニング曲“サムシング・イン・ユア・マウス”のヘヴィーなイントロが始まる。

その猛烈な演奏に1曲目から圧倒されていると、「アリガトー、トーキョー! イラッシャイマセ! 日本に戻って来られて嬉しいよ!」とボーカルのチャド・クルーガーがすかさずMCで盛り上げる。来日前のインタビューで「僕のジョークはとっても面白いから、見逃さないでよ」と語っていたチャドらしく、今夜も演奏の合い間合い間にタイミングよくMCを挟み込んでいた。ステージ両脇には50cmほどの高さの「お立ち台」も設置されていて、演奏中、ドラム以外の3人のメンバーはそこを昇ったり降りたりしながら後方までぎっしり埋まったオーディエンスの注意を引きつける。

「もし歌詞を知ってたらシンガロングしてくれよ!」とチャドが言って始まった“フォトグラフ”や『ダーク・ホース』からの1stシングル“ガッタ・ビー・サムバディ”では、曲全体を通して歌われるライアン・ピーク(G)のコーラスがばっちり決まっている。“アニマルズ”のびしっとエッジの立ったギター・リフからも、「レディーたちのためにも1曲やるべきかな?」と導入された“ファー・アウェイ”の印象的なアルペジオからも、彼ら全員がそれぞれの曲で表現したいものをよく弁えていて、そのために必要な演奏をきちんとこなしていこうという意志が伝わってくる。

セットの後半に設けられたダニエル・アデアによるドラム・ソロでは、彼らのそんな知性と実力を目の当たりにすることができた。ジャズのドラム・ソロのようにどんどんリズム・パターンを変えながら次第に白熱していくのだが、その展開のはっとさせるような意外性と、もう曲芸みたいになっていた最後の方(5分くらい続いた)のドラミングにはただただ驚かされた。こんなふうに個別のパートを取り出して見ることができると、ニッケルバックの音楽が各メンバーの強靭なテクニックと豊富なアイディアによってどれだけ支えられているかということを肌で感じることができる。

5曲目の“セイヴィン・ミー”からは「こいつ、ティミーっていうんだ」とチャドに紹介されたサポート・ギタリスト(“イフ・エヴリワン・ケアード”ではキーボードも弾いていた)が曲によって出入りするのだが、どうやらチャドはドラムやベースの後ろで大人しく演奏しているティミーをいじるとウケるということに途中で気づいたらしく、彼がステージに出てくる度に「ティミィィィィィ!!!」とやたらめったら大声で紹介して客席の笑いを誘ったり、「ティミー、お前、マリオ・ブラザーズの地下ステージの曲できるんだろ? 弾いてみそ」みたいな感じで無理矢理演奏させたりしていて面白かった。

それから「みんな水飲んだほうがいいんじゃない? ちゃんと分けてね」とチャドが言ってメンバーたちが前列のオーディエンスにミネラルウォーターのボトルを渡すサービスもあった(よく見ていたら、その後演奏が始まってからもステージ前のセキュリティ・スタッフたちがボトルからコップに水を注いで観客に渡していた)。他にもチャドがオジー・オズボーンの物真似をしたり、これは27日の公演でも同じことをやると思うので詳述しないけれど、「これから何するか分かる? カナダからあるものを持ってきたんだ」と言って楽しいコーナーが始まったりと、気配りに満ちたステージだった。

この夜1つのクライマックスを作ったのは、ニッケルバックとしては初の試みとなるオーディエンスからの「合いの手」の掛け声が入った最新作からの“バーン・イット・トゥ・ザ・グラウンド”。フロア全体が拳を突き上げながら叫ぶ声が響き渡った今夜の新木場STUDIO COASTでは、あるインタビューで「(オーディエンスに)自分たちの歌を倍にして歌い返して欲しい」と語っていたチャドの願いが確かに現実のものになっていた。(高久聡明)
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