POLYSICS @Zepp Tokyo

POLYSICS @Zepp Tokyo
POLYSICS @Zepp Tokyo - pic by Kazumichi Kokei pic by Kazumichi Kokei
「『POLYSICS WORLD TOUR OR DIE 2009!!!! ~AbsoluteでGO!!!!~』ファイナル・Zepp Tokyo・オア・ダーイ!」というハヤシのコールに、Zeppいっぱいに沸き上がるレスポンスと突き上がる拳、拳、拳! 9月21日から10月24日まで全国計19本の『POLYSICS WORLD TOUR OR DIE 2009!!!! ~秋はウハウハ! ツアーでOH! OH!~』を回ったばかりのPOLYSICSが、間髪入れずに10月30日からスタートさせた秋ツアー第2弾・全国8公演もいよいよツアー・ファイナル!ということで、Zeppのフロアには4人のツナギと同じ、もはや「トイス!」コール同様に商標化したいくらいに眩しい「ポリ色」ことオレンジ色のTシャツが咲き乱れている。そして18:36、場内に響き渡るSEとともにヤノ、カヨ、フミ、そしてハヤシが登場!

冒頭の“P!”“Speed Up”“Young OH! OH!”も含め、Wアンコールまで全29曲の中に最新アルバム『Absolute POLYSICS』の14曲と“ピーチパイ・オン・ザ・ビーチ”“Baby BIAS”“URGE ON!!”“シーラカンス イズ アンドロイド”など必殺曲を織り合わせてアゲまくるセットリストも絶妙だった。そして、ハヤシ「タイス! 今のは『ただいま、トイス!』の略ね! 会いたかったよー! 元気だったかー? ポリシックスも元気! ヤノも元気!」 ヤノ「アリガトイス!」の掛け合いや「りんかい線乗ってきたか?」「ゆりかもめ乗ってきたか?」「買い物してきたか?」「デートしてきたか?……少ねえなあ!」というドリフさながらのMCでのコミュニケーションも、大充実の2本のツアーを終えて東京に凱旋してきたバンドの手応えを物語っている。

が、何よりすごいのは彼らのアクトだ。それこそ彼ら自身のルーツであるニューウェーヴもテクノもなぎ倒すような勢いで、この日の4人の音は怒濤のロックンロールと化してZeppに吹き荒れていた。“Beat Flash”の性急さ、“Shizuka is a machine doctor”のタイトな8ビート、“Time Out”のヤノの泥臭いリズム回し、 “Bero Bero”のパンク寸前のパワフルなサウンド……とくると、キャッチーの極致である“Baby BIAS”だってAメロの16ビートのエッジ感のほうについつい耳が行ってしまう。それくらい、この日のポリは「ロック・バンド=POLYSICS」を問答無用に体現していた。さらに"Eye Contact”“催眠術でGO”“First Aid”のダーク・サイド・オブ・POLYSICS連発に、ここまで高まってきたフロアの熱気が赤黒くカオティックに渦巻いていく。とはいえ、その後に“人生の灰”でそのカオスを自分たちできっちり払拭してみせたり、“COLON”をハヤシいわく「『踊る大捜査線 THE MOVIE』MIX」(織田裕二の“Love Somebody”を混ぜたのだ)で披露したり、“Fire Bison”で風船大量一斉掃射してみせたり……というサービス精神は忘れないが。

『Absolute POLYSICS』は、ポリが「ニューウェーヴ飛び道具」としての自分たちの「今」を打ち破るべく「ポリのロック(曲によってはパンク)」を形にしてみせたアルバムだった。どれだけ電子音が脳裏に侵入してきても、アルバムを支配しているのはロックとしての性急さだった。「ビートのアルバムだった」と言ってもいい。ただでさえダイナミックでポップでミラクルなポリが、ロック・バンドとしての確信と問題意識に基づいて音を出した瞬間、まるで磁石につられて磁界の向きが一斉に変わるように、その色合いはがらりと変わって聴こえる。というか、電子音とツナギ越しに衝動を炸裂させてきたポリというフォーマットの真価が、メジャー・デビュー10周年を目前にしてようやくそのベールをばりばりと破って出現したような……というくらいのインパクトが、今の彼らにはある。本編ラストに演奏した“Shout Aloud!”はポリ流ハードコアとでも言うべき壮絶さだったし、ヴォコーダーを通したカヨの電子ボイスがどんなデス声よりもパワフルに響いていた。フロアを瞬間沸騰させるマッドなアッパー感を抱えたまま、彼らはこの1年でとんでもない極限進化を遂げていた……ということを、徹頭徹尾狂喜乱舞のこの日のオーディエンスが証明していた。

“Wasabi”“NEW WAVE JACKET”とカヨVo曲2連発でアンコールを飾った後、再び4人が登場。超初期からのライブ定番曲“BUGGIE TECHNICA”にさらにフロアの温度が上がり……そして誰もが驚いた。そして笑いが止まらなかった。
山盛りの食パンを、ハヤシがフロアめがけて次々とぶん投げたのだ。
いや、そのこと自体が珍しかったり面白かったりしたわけではない。昔、インディーズ時代はそれこそライブのたびにやってたし、それがただでさえ飛び道具的なポリの音楽と絶妙の相乗効果を挙げてもいた。が、それは当時はPOLY-2こと迫くんの役目だったはずだし、「今でも『ライブで食パン投げながらピコピコやってるバンドでしょ?』って言われ続けるのに辟易していた」というニュアンスの発言を、とりわけ『Absolute POLYSICS』タイミングのインタビューでもしていたはずだ。が、この日のハヤシはわざわざ用意しておいた食パンを、自ら率先して狂喜乱舞しまくりのオーディエンスへと投げ込んでいた。それは「無責任な外野の思い込みも全部引き受けながら、もっと大きな舞台で、シーンのど真ん中で闘っていく」というハヤシの決意の表れだったのかもしれないし、あるいは「どんなにでかいステージに進んでも、ポリのアンダーグラウンドな初期衝動は変わらない」という所信表明だったのかもしれない。その両方かもしれないし、どちらでもないかもしれない。いずれにしても、この日のロックンロール真っ向勝負なポリのライブが、かつてないほどにダイナミックな感激を生んでいたのは間違いない。

「また『Absolute POLYSICS』みたいな面白いアルバム作って、ツアー回りたいと思います! そして、メジャー・デビュー10周年記念として、3月14日に武道館でライブやります! 待ってまーす!」というハヤシの金切り声の絶叫が、力強い勝ちどきの声のように胸に残った。そんな夜だった。(高橋智樹)


01 P!
02 Speed Up
03 Young OH! OH!
04 ピーチパイ・オン・ザ・ビーチ
05 Digital Coffee
06 Beat Flash
07 Shizuka is a machine doctor
08 E.L.T.C.C.T.
09 Time Out
10 Bero Bero
11 I My Me Mine
12 Baby BIAS
13 Eye Contact
14 催眠術でGO
15 First Aid
16 人生の灰
17 Cleaning
18 COLON
19 Rocket
20 Pretty Good
21 Fire Bison
22 United
23 URGE ON!!
24 シーラカンス イズ アンドロイド
25 Shout Aloud!

アンコール1
26 Wasabi
27 NEW WAVE JACKET

アンコール2
28 BUGGIE TECHNICA
29 Boys & Girls
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