会場の代官山UNITは地下2Fにあって、エントランスを入ってすぐのところがバー・スペース、そしてその先にライブ・フロアがあるのだけれど、ごった返すバー・スペースを抜けてフロアに降りようと試みるも、もう人っ子ひとり入れないくらいクラウドでパンパン！　さすがは今、世界で最もヒップなロック・バンド：ヴァンパイア・ウィークエンド、オーディエンスの待望感は半端じゃない。結論から言ってしまえば、わずか１時間ちょいのコンパクトなセットながら、どんな期待値をも上回るめちゃめちゃゴキゲンなステージを見せてくれた（素で楽しかったっす！）。今夜のセット・リストは、こんな感じ－－。

1. White Sky
2. Holiday
3. Cape Cod Kwassa Kwassa
4. I Stand Corrected
5. M79
6. Cousins
7. California English
8. One (Blake's Got a New Face)
9. A-Punk
10. Run
11. Campus / Oxford Comma

アンコール
12. Mansard Roof
13. Horchata
14. Walcott

1stアルバム『VAMPIRE WEEKEND』からほぼ全曲。そこに来年1月リリースのニュー・アルバム『CONTRA』収録曲を織り交ぜた構成で、いきなり新曲を立て続けた冒頭からUNITは盛大なアプラウズに沸き立ったのだった。まず“White Sky”。ヨーデルさながら爽快に歌い上げるエズラのボーカルと、人を食ったような「アイ！ アイ！」というコーラスがたちどころに異形なるヴァンパイア・ワールドを立ち上げ、続く“Holiday”の、軽快でキャッチーなスカ・ビートに誰しもがヒップをシェイク！　そのバンド・アンサンブルはとても滑らかで、程よくタイトで、小気味よくアクセントの効いたクリストファーのドラミングには身体を揺らさずにはいられない。「アリガトウ！　みんなに会えてとてもうれしいよ」とエズラ。赤いギンガムチェック・シャツが良く似合っている。その左隣ではロスタムが2台のキーボードを操り、時にギターを抱えて装飾的に楽曲を彩る。「僕らはニューヨーク・シティから来たんだけど、ニューヨーク・シティの79ストリートを走るバスがあって、次の曲はそのバスについての曲なんだ。すごく簡単だからみんな一緒に叫んで！」（エズラ）と“M79”では「オ－－ォ！」と会場中がコーラスに沸き、続けて「2ndアルバム『CONTRA』が来年1月に出るんだけど、今夜はいくつか新曲もやるよ」（エズラ）と披露された“Cousins”は、バンド史上最速といえるハイテンション・ビートがとにかく痛快！　新曲群の出色の出来映えに、俄然『CONTRA』への期待が高まる。

冒頭で“今、世界で最もヒップなロック・バンド”なんて文句を掲げてしまったが、壇上の4人はあくまで飄々としていて、街のスタジオで練習しているフツーの音楽好きの兄ちゃんといった風情。はっきり言ってカリスマ性／スター性みたいなものからは縁遠い4人だったけれど、その居ずまいには輝くような優等生オーラ、また、余裕でデリバティヴとか運用しそうなスマートさが否応なく感じられるのだった。その品行方正っぷりが鼻につかないのは、4人の所作にスノッブさや悪ぶった素ぶりが皆無だからだろう。どうにも憎めない、チャーミングなボーイズなのだ。

本編後半は「もっとみんなで歌おうよ！」とエズラの先導のもと、みんなで「Blake's Got a New Face！」とシャウト。そして、「次の曲はすごくダンサブルなナンバーだから、みんな好き勝手に踊ってよ」（エズラ）とキラー・チューン“A-Punk”投下！　軽妙なアフロ・ビートがUNITの熱を一気に高め、この夜いちばんと言えるクライマックスを演出した。

アンコールでは「次のアルバムの１曲目になる曲」（ロスタム）とのイントロダクションから“Horchata”（オフィシャル・サイトで無料配信中！）を披露。そして「2010年の早いうちに、また日本に戻ってくるよ！」（エズラ）と再訪を誓って、ラストはアグレッシブな“Walcott”で盛大にフィニッシュ。どこか歪で懐かしくもあるけれど、圧倒的にポップでフレッシュなヴァンパイア・ソングスに魅せられっぱなしの一時だった。早期の再来日、乞う！（奥村明裕）