フランツ・フェルディナンド @ 東京国際フォーラム ホールA

フランツ・フェルディナンド @ 東京国際フォーラム ホールA
フランツ・フェルディナンド @ 東京国際フォーラム ホールA
いやあ、フランツ・フェルディナンドに国際フォーラムは不向きでしょう。なぜか? 盛り上がりすぎるからだ。ここでロック系のライブを観た方ならご存知のことと思うが、ちょっとノリノリになっただけで1F席でも床が面白いように揺れる。途中のMCでアレックスが「バルコニーの人、元気ー?」と軽やかに2F席のオーディエンスに呼びかけていたが、2F席は(特に中盤以降は)ちょっと恐怖を覚えるくらいにばうんばうん揺れて「元気?」どころではなかったことだろう。それだけ、この日のフランツの放つエネルギーは凄まじかったし、国際フォーラム ホールAという会場を歓喜炸裂・阿鼻叫喚のダンス・フロアに変えてしまうだけのヴァイブに満ちていた、ということだ。

東名阪ツアー初日となるこの日のアクト。まだ11日:名古屋、12日:大阪の両公演が控えているのでセットリストのネタバレは避けるが、最新作『トゥナイト』と過去2作の必殺曲をアンコールまで含めて正味1時間半の中に絶妙に織り交ぜた内容。何より、1曲目からこの巨大な会場を一気に支配しにかかった4人の、獰猛と言ってもいいくらいのアグレッシブな熱気! クールなディスコ・ビートも鋭角なロックンロールもすべてが自然発火必至の熱量を帯びて赤黒く渦を巻くような、ハッピーとかアッパーとかいうよりは「壮絶」とかいう類いの感動を覚えるものだった。会場全体の盛り上がりとしてはややスロースターター気味だったのも、「キャパ5000人・全席指定」というシチュエーションによるものというよりは、そのあまりのロック炎上ぶりに会場のほうがギアを合わせるのに時間がかかった、というのが正しい。

そんな燃え盛るようなテンションの中でも、アレックスのボーカルは相変わらず不敵で謎めいていて、喉も裂けよと絶唱し、ステージ狭しと弾き回りシンセをいじりアンプによじのぼり飛び降り……という特盛りなパフォーマンスの中でも、常にロックとダンスの「その先」を見つめているような冒険心が垣間見えた。だからこそ、フランツのライブで生まれる狂騒のダンス空間は、踊ることを自己目的化したヌルさや、観終わって「ああよかった」で瞬時にその快楽を忘れてしまうようなライトさは微塵もない。逆に、踊り狂っている中にも「お前はそこからどこへ行くんだ?」という決意を促すようなタフな迫力がある。『トゥナイト』はまさにそういうアルバムだったし、そのシリアスなモードがついには椅子席の5000人を揺らしまくった……という、充実のライブだった。

そして、ただでさえ会場がオーバーヒート気味だった本編後半、アレックスが客席に向けて「BE CLOSER!」とか言ったもんだから、前方の観客がステージ前に詰めかけ、あっという間にライブハウス状態になってしまった。ここぞと盛り上がるオーディエンス! さらに熱くスパークしまくる4人! そして困惑顔の警備スタッフの方々!……という、とんでもないカオスが生まれてしまった。冒頭に「阿鼻叫喚」と書いたのは、間違いでも誇張でも何でもない。BOOWYに倣って言えば、まさに「ライブハウス・国際フォーラム」だったのだ。

さらに。この日のオープニング・アクトを務めたのは、ベルリン発ロック&エレクトロ・ユニット=キソグラム! ヨナス(Vo・G・Key・Prog)、セバスチャン(Key・Prog)、そしてサポート・ドラマー、という変則3ピース編成ながら、ヨナスのパンク/グランジなギター・サウンドとセバスチャンのシーケンス&シンセ・ベース&鍵盤演奏を巧みに重ね合わせて、泥臭くも軽やかなロックンロールから、ディスコ・ビートが複雑骨折したような快楽サウンドまで次々に生み出し、フランツ・ファンから惜しみなく手拍子や歓声を巻き起こしていた。ヨーロッパではすでにジャスティス/デジタリズムとともにキているこの2人。観ている限り、機材や手法はそれこそ今や中2レベルでも入手・実現可能なものばかりだが、それを世界を揺さぶるキッチュでダンサブルなロックにしてしまうあたりが、フランツがこぞって大絶賛の太鼓判を押す所以でもあるのだろう。そういえば途中のMCで、ヨナスは「今日は特別な日だ。壁が崩壊してから20年になるんだ」と言っていた。彼らの淀みなくポップな音が、ここ東京と彼らの地元・ベルリンの「今」を祝福するように響いていたのが印象的だった。

フランツ、明後日(11日)はZepp Nagoyaに登場!(高橋智樹)
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