POLYSICS @ 横浜BLITZ

POLYSICS @ 横浜BLITZ
POLYSICS @ 横浜BLITZ
POLYSICS @ 横浜BLITZ - pic by Kazumichi Kokeipic by Kazumichi Kokei
ニュー・アルバム『Absolute POLYSICS』を引っ提げ、約1か月間19公演を駆け抜けた『POLYSICS WORLD TOUR OR DIE 2009!!!!~秋はウハウハ!ツアーでOH! OH!~』、そのファイナル公演は横浜BLITZ。なのだが、一週間と間を置かずに10/30からは全8公演予定の『POLYSICS WORLD TOUR OR DIE 2009!!!!~AbsoluteでGO!!!!~』を控えており、傍目から見ていてもまったく一段落な気がしない。2か月で日本列島を2周するという、一回のライブ単位ではなくツアー単位でハミ出してしまっているPOLYSICSなのである。毎度のことではあるのだけど、あんな過剰な音楽性で、あんな過剰なステージングで、良く息切れもせず走るものだとつくづく思う。いや、違うな。彼らの場合は、夜な夜な息切れという状況を超越するためにライブを、ツアーを、行っているような気がする。オープニングSEとともに会場のあちこちで点滅し始めた赤いランプ。エマージェンシーなムードで、今夜も当然のように「向こう側」への跳躍が約束されたポリのステージが始まる。定番のツナギ姿のオーディエンスも多いが、オレンジやスカイブルーのツアーTシャツが目に鮮やかな横浜BLITZのフロアである。

最新作のオープニング・ナンバーであり、ライブにおいてはすっかりお馴染みの“P!”。けたたましいホイッスルを吹き、ギターを掻き鳴らしていたハヤシがいつもどおり「トイス!」の挨拶を決める。そして“Young OH! OH!”だ。ポリの「最新の定番」を打ち出すナンバーが立て続けに放たれる。更には“Tei! Tei! Tei!”の、インダストリアルな角張ったサウンドがボーカルのフックで無理矢理転がっていく独特のポリ節ロックが開陳。不器用なコミュニケーションもとことん勢いがつくとエンターテインメントになるという、そんな仮定と証明を3分間でやってのけるようなパフォーマンスである。“シーラカンス イズ アンドロイド”のラストで「ハミ出ろ、ハミ出ろ、ハミ出ろヨコハマー!」とシャウトして歓声を浴びるハヤシであった。

「ヒサース!ヒサース!ヒサース!……このヒサスってのは、久しぶりトイス、の略ね!POLYSICS WORLD TOUR 2009!!!!ファイナル、横浜BLITZ、オア・ダーイ!!」最新ALの楽曲が効果的に散りばめられる。ハードコアな“催眠術でGO”を経て、フミのボーカルが映えるドタバタ喜劇のような“E.L.T.C.C.T.”へ。《Every little thing can cause trouble.》。いいフレーズだなあこれ。負けじとカヨも歌声を響かせ、“I My Me Mine”では美メロ・リコーダーも聴かせる。ハヤシはその間、膝歩きプレイも披露していた。最近のポリのライブは性急であるにも関わらず、一種の貫禄めいたどっしりしたキャリアの重みを感じさせることがあるのだけれど、今回のステージはそういう印象は希薄になっていて、無謀と紙一重の、頭から飛び込んで一撃を浴びせんとするボクシングの挑戦者を見るような、そういうフレッシュでスリリングな雰囲気を感じさせている。すぐに新ツアーを控えた、まったく落ち着けない感じがそうさせるのだろうか。

「『Absolute POLYSICS』からのウハウハなやつをどうぞー!」とハヤシが告げる。最新アルバムの楽曲は、今回のライブ全編に渡ってまんべんなく配置されていたのだが、ここから固め撃ちされた曲群はとりわけインパクトが大きかった。激しいシンセ・サウンドと祭囃子ビートが渾然一体となった“Time Out”、めまぐるしくリズム・パターンを変えながら進む“Bero Bero”、ドラマティックな美曲“Cleaning”、そして忙しないボーカルの合間にもハヤシがゴム風船を膨らまして飛ばしていた“Fire Bison”(更に左右の二階席から無数の風船が飛ばされる演出もあった)。個人的には“First Aid”がすごく好きなのでできれば聴きたかったんだけど、それはともかくバラエティに富んだ新しい楽曲が「ポリ道」をきっちりと形作っている。グルーヴィなエレクトロ・パンク・サウンドの中、どうしてもステージ上で“ブルー・ライト・ヨコハマ”を歌いたいらしいハヤシは、ついでに横浜繋がりでクレイジーケンバンドよろしく「イーネ!」もかます。“COLON(ブルー・ライト・ヨコハマmix feat.横山剣)”なのだそうだ。

終盤戦はダイナミックでソリッドなロック・サウンドが火を吹く。カヨがボンボンを振る“ピーチパイ・オン・ザ・ビーチ”では、バイザーを投げ捨てたハヤシが熱唱していた。エレクトロでパンキッシュなバンドは世界中に数多く存在するが、そしてハヤシの書くメロディはアッパーでロックしているが、これは日本人じゃないと生み出せないメロディだなあ、と実感させてくれる。爆裂エレクトロ・ハードコアのラスト“Shout Aloud!”では、大きなシンガロングがフロアを満たしていった。「P.O.L.Y.S.I.C.S!」コールも自然発生して2度のアンコールに応えたポリ。捩れながら疾走するカヨ・ボーカルの“Wasabi”を経て、“カジャカジャグー”ではまさに鉄板の盛り上がり。“Rocket”でのヒラヒラスウェイも壮観であった。来年でメジャー・デビュー10周年という確かなキャリアを築きながら、あくまでも前のめりに突っ走るポリの姿を改めて確認させられてしまうようなステージ。キャリアの中である種「王道」感を纏っていた気がしていただけに、ポリがあくまでもポリとしてオルタナティヴなバンドであり、劇物であることを証明してくれたことが頼もしく、そして嬉しく感じられた夜であった。(小池宏和)

1.P!
2.Young OH! OH!
3.Tei! Tei! Tei!
4.Digital Coffee
5.シーラカンス イズ アンドロイド
6.催眠術でGO
7.E.L.T.C.C.T.
8.Kagayake
9.I My Me Mine
10.Baby BIAS
11.Time Out
12.Bero Bero
13.人生の灰
14.each life each end
15.Cleaning
16.Fire Bison
17.COLON
18.Beat Flash
19.NEW WAVE JACKET
20.ピーチパイ・オン・ザ・ビーチ
21.Poly-Farm
22.Speed Up
23.Shout Aloud!

Encore1
24.Wasabi
25.カジャカジャグー

Encore2
26.Rocket
27.Electric Surfin' Go Go
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