ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN FES.2009(2日目) @ 横浜アリーナ

ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN FES.2009(2日目) @ 横浜アリーナ - pic by TEPPEIpic by TEPPEI
というわけで、昨日に続き、2日目のレポートです。本日も9組が出演。

1.Jez&Michelle(FARRAH)
昨日と同じく、潔&山田の前説に続いて登場したのは、2005年のこのフェスに出演したFARRAH、今回はボーカル&アコギ&ピアノのJezとベースのMichelleによるアコースティック・ライブ。当初は、オープニング・アクトとして開場中に行われる予定だったが、マニックスのキャンセルがあって急遽開演時刻の12時からになった。
で、とにかくもう、大熱演。全6曲で約25分、Jez、ギターを弾いたりピアノの前に座ったりしながら、アコースティックにもかかわらず、とにかくアゲよう、客にもうけさせて自分たちももうけて帰ろう、みたいな、志の高い大道芸人みたいなステージ。しつこくフロアをあおったのが功を奏したのと、元々歌いやすいシンプルでしっかりしたメロディの楽曲ばかり持っているのが効いて、6曲目には見事にシンガロングが巻き起こる。「スゴーイ! カンペキ!」とさらにあおるJez。最後には「カンペキ! スバラシイ! バンザイ!」と叫んで、ステージを下りました。しっかりもうけて帰った、と思いました。

2.サカナクション
3年くらい前、「いいバンドがいるんですよ」と音をもらって聴いてびっくりして、次の上京を待って(当時はまだ北海道在住だったのだ)下北沢のERAで観た時から、もう「ライブができあがっている」バンドだった。「うま!」と、『リンカーン』の『ラーメン王決定戦』でキャイーン天野の作ったラーメンを一口食べた時の松本人志のようなリアクションをしてしまったほどだった。それくらい、ライブにおいて「あのCDをほんとにそのままやれる」すごい完成度を最初から持っていたバンド、それがサカナクションなわけだが、それはカウントダウン・ジャパンとかで観ても同じだったが、ここ横浜アリーナで観ても、まったくもってそうだ、とまでは思っていませんでした。びびりました。完璧。頭っから、 “Ame(B)”“ライトダンス”“ネイティブダンサー”“セントレイ”と、最新アルバム『シンシロ』の曲を連打。なんかもう、圧巻でした。揺るぎなきプレイと歌、プラス、生ならではのグルーヴ。あと、山口一郎、こんな大舞台にもかかわらず全然落ち着き払っているように見えた。が、最初のMCでカミまくっていて、「あ、緊張してるんだ」ってことがわかりました。

3.NADA SURF
ゴッチ&喜多のMCをはさんで、昨日も、場を大いにもっていったUSの3ピース、NADA SURF、本日も大活躍。誰も疎外しない、誰も置いていかない、シンプルで、ポップで、そして言わば「ハードだけどうるさすぎない」絶妙さを持つ楽曲を40分間に全10曲詰め込んで連打。フレンドリーで親切なマシュー(vo&g)のアオリもあって、1曲ごとにどんどんフロアの温度があがっていく。4曲目、“Inside of Love”をやる前に、マシュー、左右にステップを踏んでみせてから曲をスタート、するとフロアもきれいに左右にゆれるゆれる。ラスト、「ミンナ、サイコー!」というマシューの言葉から突入した“blankest year”では、フロア、“Fuck it!”の大合唱。この頃に会場に着いた人は「うわあ、こんなに人気あるバンドなんだ!?」とびっくりしたと思う。曲を終え、マシュー、「ニッポン、サイコー! ミナ、チーズ!」と、フロアの写真を撮って帰りました。

4.THE YOUNG PUNX!
2006年、2008年に続いて、このフェス三度目の出演なんだけど、アウェイ/ホームでいうと、もう大ホーム状態。2006年の初出場の時は、結構苦戦していた記憶があるが、もはや同じ人たちとは思えない。パンパンのフロア、もうハネるハネる。レーザー光線あり、VJあり、例のアジカン“Understand”のカバーである“Rock Star”あり、ゲスト・ラッパーCount Bass Dあり(PRODIGYのマキシムがにこやかに温和になったような感じの方でした)、特効(煙&爆発)あり、飛行船あり。という演出も、つかみだけでできているかのような曲も、とにかくベタ、とにかく下世話、とにかくポップ、そしてとにかく楽しい! 全7曲があっという間だった。

5.ユニコーン
昨日7月19日SHIBUYA-AXで行われたMUSIC-ON! TVのイベント出演から、夏フェス&イベント出まくりシーズンに突入したユニコーン、グレー&半袖の新ツナギで登場。ファンはいいけど、今日初めてユニコーンを観るお若い人たちにとってはこのライブどうかな、大丈夫かな、観てひかないかな、とか心配していたんだけど、熱狂的に迎えられていて、安心した。音そのものの、すさまじいグルーヴのせいだと思います。面白いし、つかみ多いバンドだけど、そっちではなく、明らかに音の力でフロアを圧倒していた。
なお、セットリストは、『シャンブル』から4曲、昔の曲4曲、ボーカル民生:6曲、阿部B:1曲、EBI:1曲、という割合でした。いいラインだと思う。なお、民生、「こんにちはユニコーンです、こんな大きいとこでやるのはじめてです、がんばります!」と大嘘MCこいておられました。(ここまで兵庫慎司)

6.BEN FOLDS
BEN FOLDSの前に再び潔&山田コンビによる漫才(?)MCがありました。
潔:「NANO-MUGEN FES.と言えば?」
山田:「音良し、お客さん良し、伊地知きよし」
会場:(大笑)
山田:「NANO-MUGENに来ているにもかかわらず、ドラクエやってるやつがいるんですよ。僕もやりたいんですよ」
潔:「そんなお前は帰って良し」
会場:(大笑)
潔&山田:「お後がよろしいようで」
と、こんな感じでした。ちなみに、スピッツ前に流れた場内の映像では、DSを持って転換中にやっているお客さんが映ったり、本当にドラクエやってる潔が映し出されたり、「ドラクエ、やらないで!!」というカンペを持ったゴッチが映し出されたり、場内ドラクエ祭りでした。

で、BEN FOLDS。昨日と同様、ピアノ、ベース、ドラムという編成で“Effington”で幕を開ける。タンバリンマンも椅子持参で登場し、観客に背を向けて、まるで3人を指揮するかのようにひたすらタンバリンを叩いて盛り上げていた。そして、2日間来る人のためのことを考えてか、セットリストも変えているところが素晴らしい! 破壊力満点の“Zak and Sara”“Rockin in Suburb”へ突入し、ブンブンと唸るファズの効いたベース、ドカドカと轟くリズムに乗って、暴れ馬のごとくベンはピアノを叩き弾く! その音圧は3ピースとは到底思えない圧倒のサウンド、そして、何より3人のコーラスが美しすぎる。気付けば会場全員がそのハーモニーに聴き入り、手拍子や歓声を贈って大盛り上がり。とにかく、ベンはサービス精神が旺盛で盛り上げ上手なのだ。広島のライブで頭から落ちた時のことを日本語詞にした“Hiroshima”を歌ったり、“Not The Same”では通訳さんを連れてきて観客に各パートごとにコーラス指導をし、終いにはグランドピアノの上にのぼって指揮者となって、やりたい放題のへんてこな大合唱の渦を巻き起こしたり。そこが日本のオーディエンスに受け入れられる所以でもあるだろう。ラストは名曲“Philosophy”の鮮やかなメロディーから狂乱のピアノ連打を拝むことができた“Theme From Dr. Pyser”へ。ベンは最後ピアノのイスを担いで3mほど離れた位置から鍵盤目がけてシュート! 最高にパンキッシュなピアノマンだ。昨日も書きましたが、何度でも書きます。ベン・フォールズは、真のピアノロック・エンターテイナーです。最高。

7.スピッツ
「ライブ自体が久しぶりでドキドキしてます」とマサムネも言っていたが、スピッツがライブをやるのは今年5月に行われた亀田誠治主催のイベント『亀の恩返し』@日本武道館以来のこと。そして、今回『NANO-MUGEN FES.』には初登場で、横浜アリーナでのライブも初めてだという。つまり、2009年に入ってからスピッツはアリーナクラスでの会場でしかライブをやっていないということだ。だけど、肩肘張らないいつも通りのスピッツという感じがして非常に良いライブだった。
「海外のバンドに直接出演交渉するってすごいよね」という話から、マサムネ&テツヤは海外旅行での英語失敗話に花を咲かせ会場の笑いを誘った。そして、後半へ突入すると田村の豪快なベースプレイが炸裂! 曲にあわせてものすごいハイジャンプをしたり、くるくる回ったりしながら一切ブレないベースラインを奏で、次の曲ではマサムネがハンドマイクでタンバリン片手に、広いステージを左右に行ったりきたりしながら歌う中、田村はアンプによじ登ったりベースを投げてしまったり片時も目を離せない激しいプレイで圧倒した。ラストの曲は清涼感たっぷりに演奏。優しくて激しくて、でも最後は穏やかな空気で包み込んでくれるというスピッツらしいライブだった。

8.HARD-FI
昨日に引き続きゴッチ&喜多が登場して、今回残念ながら出演キャンセルとなってしまったマニック・ストリート・プリーチャーズのライブ映像を紹介。1999年の大晦日に行われたミレニアム・ライブの模様を3曲分流すと、会場からは拍手喝采が沸き起こった。

その後、昨日同様メインステージの向かって左側にある少し小さめのステージに登場したHARD-FI。「危険!注意!」とでも言わんばかりのイエローのライティングで照らされる中、幻想的なSEに乗って現れたメンバー。昨日と同じセットリストだったが、トリ前ということもあってオーディエンスの盛り上がり度も昨日より大きかったような気がする。重厚なダンス・ビートにレゲエのリズムなどを取り入れたHARD-FI独特のグルーヴに自然とフロアも踊らされている。リチャードが奏でるピアニカが哀愁を醸す“CASH MACHINE”も、拳を突き上げながら「オーオーオー!」と意気揚々と歌い上げる“SUBERBAN KNIGHTS”も、決してキャッチーとは言えない不穏な空気感を含んだナンバーだが、その不穏なエネルギーがもたらす昂揚感がオーディエンスにとっての唯一の共有ポイントなのだ。本日披露された新曲“SWEAT”はそういったHARD-FIのアンダーグラウンド感が光る重厚なナンバー。また、“LITTLE ANGEL”では間奏のベースラインでホワイト・ストライプスの“SEVEN NATION ARMY”をカバーするなどサービス精神にも抜かりない。後半は「OK!」「ALL RIGHT!」とコール&レスポンスでさらに場内を熱く盛り上げた“HARD TO BEAT”、ドラムのタムが奏でる壮大なサウンドに乗る高音ボーカルが麗しい“STARS OF CCTV”と続き、ラストは“LIVING FOR THE WEEKEND”でリチャードの「フォー!」という掛け声に、オーディエンスはいつもより3割増しの「フォー!」をステージに返して、終了。いいライブだった。

9.ASIAN KUNG-FU GENERATION
そして、当フェスの主催者であるASIAN KUNG-FU GENERATIONがいよいよ登場! 最初に言ってしまうと、本当に素晴らしいライブだった。この2日間に登場したアーティスト、もちろん、出演キャンセルとなってしまったマニック・ストリート・プリーチャーズも含めて、すべてのバンドのこのフェスにかけた思いを全部アジカンが背負って出し尽くしたかのような重みがずっしりと感じられた。最初にかき鳴らした広大な大地から空高く飛翔するようなオープニングのインストナンバーを聴いた瞬間にそう思った。
 最新曲“夜のコール”で幕を開け、アジカンの今の想いを乗せた高らかな宣誓の歌をオーディエンス一人一人に投げかけるように歌う。虹色に輝くライティングの下、“稲村ヶ崎ジェーン”の疾走感溢れる勢いに満ちたナンバーで畳み掛けると、その勢いは留まることなくさらに“リライト”“羅針盤”といった鉄板曲へと雪崩れ込み、会場が凄まじい一体感に包まれた。ゴッチがMCで「昨日と今日とでは1日違うだけでまったく空気が違うんですね」と言っていたけど、本当にそうだと思う。出演者が違えば客層が違うから当然かもしれないが、客層の違いのみならずやっぱりフェス全体が醸しだす雰囲気もそうだし、2日間出演したバンドのライブも1日目と2日目とでは違うのだ。「ライブは生き物」とはよく言うけど、「フェスも生き物」なんだなと実感した。
 “夏の日、残像”“藤沢ルーザー”“遥か彼方”とアッパーなナンバーが立て続けに披露される。アジカンのバンド・アンサンブルの一体感もいつもに増して素晴らしい。しかし、今日のライブにもの凄く感極まってしまうのは、それだけでは説明のつかない、途轍もないフェスの力というものが働いているように思うのだ。
 「もっとこういう空気が横浜アリーナから漏れ出して、普段の生活も空気がよくなるといいね。音楽はよく分からん空気を分かち合うためにあると思うんですよ。願わくば、ジャンルとか垣根をぶっ壊して音楽は音楽として楽しむような時代が来ればいいなと思って、このフェスをこれからも続けていきます」と、ゴッチが高らかに宣言。「志は高く」と続けて“惑星”へ。アジカンが理想としてしていたジャンルの垣根を越えたフェスで今、オーディエンスが渾然一体となって楽しんでいる。後半は“アンダースタンド”“君という花”でテンションを振り切って最高潮に達し、“転がる岩、君に朝が降る”で本編終了。アンコールで、散々話題に上がったドラクエに対抗心を燃え上がらせたゴッチは「次回はドラクエに負けないように…」という目標を誓い、“ループ&ループ”へ! フロアは最後の力を振り絞ってジャンプ、ジャンプでアガっていき、最後は“ワールドワールドワールド”→“新しい世界”へと流れると、ラストに色とりどりの紙ふぶきが会場いっぱいに舞うという感動的でピースフルなフィナーレを迎えた。

アジカンが理想とする「音楽を音楽として純粋に楽しむこと」ができるフェスが今年もこうして大成功を収めた。これがもっともっと色んなところへ広がることを祈って、来年の開催も心待ちにしたい。(阿部英理子)
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